金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【雑感】 勝負の世界で生きるということ

2019-11-26 07:33:51 | 将棋

 どのような世界でも、「プロフェッショナルである以上、仕事の結果で、上に行ったり、下に陥落したりは当然である」とは、頭では理解していますが、日々の勝負で勝ったり、負けたりを繰り返していく、プロゴルファーや将棋のプロの凄まじさは、表現しようがないくらい厳しい世界だと思います。

 特に、将棋のプロは何とも言いようがありません。日本人全体で同級生が200万人程度いるとして、そのうちの半分が男性だとすると、100万人ぐらいの人たちが、遊び半分も含めて、将棋をやったことがあると思います。そのうち将棋のプロになれるのは恐らく3名か4名くらい。現在の現役のプロは160名強だと思いますが、各世代の天才を集めたのがプロであり、しかも8大タイトルを取れるプロは、その中でほんの一握りの人間でしかありません。

 将棋のプロになるには、少年・少女の頃から「奨励会」というところに入会して、徐々に勝ち上がり、満26歳までに三段リーグを勝ち抜けることで、晴れてプロに、プロ四段になれるのです。しかし、年齢制限までに四段になれなければ、プロの道を諦めなければなりません。もちろん、この規定を設けている趣旨は、唯でさえ厳しいプロの世界なので、本人の人生を壊さないためには、ある程度のところで別の道に進む方ことを促すべし、という考えがあってのこと。

 それでも、何としてでもプロになりたいという人間には、例外規定が設けられており、アマチュア棋戦などで高いハードルを超える戦績を残せば、特別に「棋士編入試験五番勝負」を受けられることになっています。相手はすべてプロ棋士である四段棋士。五番のうち三勝できれば、晴れてプロ棋士となれる特別試験です。

 その棋士編入試験五番勝負が、昨日から始まりました。挑戦するのは折田翔吾アマ30歳。元奨励会の三段リーグ経験者です。孤独で厳しいプロの世界を、それでも目指すその姿勢に、熱い想いを覚えずにはいられません。昨日の第1局目は快勝で、幸先の良い1勝を挙げました。第2局は12月23日。この闘いにも注目しています。


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【GⅠ回顧】 騎手の判断が結果を左右したジャパンカップ

2019-11-25 07:38:01 | 競馬

 昨日のジャパンカップ、スワーヴリチャードの復活のV、素晴らしかったです。最近の走りに気持ちが入っていないのが気になっていましたが、若き天才マーフィー騎手がスワーヴのやる気を引き出したのでしょう。

 ところで、レースを振り返ってみると、騎手の判断によって、勝敗を決したポイントが2点ありました。

 まずは、果敢に先頭に立ち、馬群を引っ張ったダイワギャグニーの石橋修騎手と、番手からダイワギャグニーに並びかけたカレンブーケドールの津村騎手。せっかくリスクを取って先頭に立ったのですから、内からスワーヴに突かれる隙間を作ってはいけません。津村・石橋両騎手がそれを意識していれば、マーフィー騎手はカレンの外を通っていかなければならなかったはずで、少なくとも、1着と2着は入れ替わっているか、微妙な勝負になっていたと思います。欧州の他頭数のレースで、あんな風に内を空ける乗り方はありません。昨日の馬場を考えても、コーナーまでは内が悪かったですが、直線は内が最も伸びていました。ここを空けてはいけません。

 次のポイントは、ワグネリアンの川田騎手です。馬の位置取りでは、カレンブーケドールの位置がベストで、ワグネリアンの位置が2番目に良いポジションでした。しかし、4コーナー手前で、スワーヴのマーフィー騎手にカレンのすぐ後ろの位置を先に取られてしまいました。スワーヴの位置は、前を塞がれるリスクのある位置ではありますが、マーフィー騎手はそのリスクを取って先に仕掛け、川田騎手は安全策を取って、カレンの外を通るコースを選択しました。結果論ではありますが、もし、川田騎手が先にカレンのすぐ後ろの位置を押さえにいっていれば、おそらく勝ったのはワグネリアンで、2着カレン、3着スワーヴとなっていたと思います。

 以上のように、GⅠレースだからこそ、厳しいコース取りをきちんと守れるか、そしてリスクを覚悟のうえで勝負所で前に出られるか、によって結果が左右されるということなのでしょう。

 最後に、マカヒキの武豊騎手について。1頭だけ、まるで違うレースをしているようでしたが、マカヒキに走る気持ちを復活させるような素晴らしい騎乗でした。欧州遠征以来、マカヒキからは鋭い切れ味が消えて、長く良い脚を使う「欧州仕様」になっていましたので、馬場の悪化も味方したと思いますが、ひさしぶりにマカヒキらしいひた向きな走りを復活させたのは、武豊騎手ならではの手腕だったと思います。


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【競馬】 不良馬場のジャパンカップ!

2019-11-24 08:49:06 | 競馬

 ハイレベルだった天皇賞秋の1~3着が不在のジャパンカップですので、普通ならば4着のユーキャンスマイルが◎、5着のワグネリアンが〇、府中2400mでの好走歴が光るカレンブーケドール▲で決めていたのですが、何と金曜日から3日連続の雨で、馬場は最悪の状況となる見込み。

 重馬場のジャパンカップと言えば、シンボリルドルフが勝った時も、タップダンスシチーが逃げ切った時も、酷い重馬場でした。自力の差が出るからか、2着とは、けっこうな差がつくケースが多かったと思います。あの頃とは、芝の質も、馬場の整備も格段にレベルアップしている府中競馬場ですので、どこまで影響が出るかは分かりませんが、明らかなのは「飛びの大きな馬」は不利、「ピッチ走法が出来る馬」は有利だと思います。

 まずはピッチ走法といえばエタリオウ。この馬は2着に敗れることが多く、その理由は諸説あるのですが、ひとつはピッチ走法ゆえにラストにバテてしまうという説。でも、今回は雨が味方しそうです。次に、雨になるとピッチ走法へ変更出来るのが、ワグネリアンジナンボー。ワグネリアンは2歳時の野路菊Sでは、重馬場で3ハロン33秒0の上がりで勝利しています。ジナンボーは2走前のジェーンSで、不良馬場の逃げ切り勝ちがあります。また忘れてはいけないのが、古馬になってからのマカヒキ。ダービーまでは抜群の切れ味が強みでしたが、凱旋門賞遠征後は、むしろ切れ味がなくなった替わりに、長く良い脚を使うのが特徴になってきました。したがって、馬場が悪い時の方が上位に食い込む傾向があります。

 一方で、良馬場であれば、飛びが大きいので府中適性が高いと思われていたのが、ユーキャンスマイルカレンブーケドール。今回は少し割引が必要だと思います。ということで、◎〇▲の順番を入れ替えるとともに、雨で浮かんでくる馬たちを△に加えることにしました。

 馬券は、②ワグネリアンを◎にして軸馬に指名、以下⑬エタリオウ、⑭マカヒキ、⑮ジナンボー、⑥ユーキャンスマイル、①カレンブーケドールへ、馬連5点と三連複10点で

 結果的には、ディープ産駒と金子オーナー、および友道厩舎への応援馬券みたいになってしまいました。まぁ、「ディープインパクトメモリアル」だから、これで良いですかね。


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【金融】 GSOMIA維持へ

2019-11-23 06:11:15 | 金融マーケット

 昨夜、GSOMIAが維持されました。

 ここまでの間、隣国には合理的な判断力がないとか、面子に拘っているとか、世論が許してくれないとか、新聞や週刊誌等では、さまざまなことが書かれていますが、一度、先方が置かれた状況を、もう少し冷静に考えてみる必要があると思います。

 昨日、このブログで書いたのが「香港と深圳」。趣旨は、デモクラシー世界と、国家資本主義世界の覇権争いで、今の香港と深圳の状況を比較するに、どうも国家資本主義の方が分が良い、という内容でした。

 隣国は、中国の影響下で2000年近く生きてきた国です。常に、周囲の政情を正しく理解して、自らの姿勢を鮮明にしておかないと、周囲の強国から侵略を受ける立場でしたから、時代の微妙な変化にも大変敏感な国と言えます。中国の国力が猛烈なスピードで上昇してきた2000年以降や、北朝鮮の核保有が明らかになってきたここ5年、隣国は特にアメリカとの関係、距離感をすこしずつ調整してきたのだと思います。

 正直、日本との関係はたいした問題だとは認識していないと思います、日本は絶対に攻めてこない国ですから。あくまで、今回のGSOMIAも、隣国とアメリカの適正な距離感の問題だと考えているのでしょう。

 中国の国家資本主義の台頭が明らかであり、しかも10年後には米中の地位が逆転すると考えていれば、その両大国との付き合い方を、時間をかけながら調整しなければならないことは明らか。それで、日本の貿易管理上のアクションを、これ幸いとトリガーにしただけ‥ということだったのではないでしょうか。

 今回は、米軍の撤退リスクが急に高まったため、アメリカとの距離を保つことを目的にGSOMIA維持となりましたが、隣国による深慮遠謀の、非常にしたたかな判断の向こう側には、中国の国家資本主義の台頭があることを常に忘れてはなりません。


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【金融】 香港と深圳

2019-11-22 07:26:40 | 金融マーケット

 米国と中国の主導権争いは、ここからの10年を巡るメインテーマになりますが、この意味するところは、「デモクラシーによる資本主義」と「国家資本主義」のどちらの方が、世界の国々に、成長力と安定をもたらす体制なのかを、はっきりさせる闘いに他なりません。

 デモクラシーの世界は、とても不安定であり、国民の意識・気持ちが少しでも荒んだ方向へ流れれば、ポピュリズムと呼ばれるカオスの世界へ引き込まれてしまいます。そうならないためには、特に意識の高い人々の中から、ちゃんとしたリーダーを選ぶ仕組みを堅持することと、理不尽な目に遭って、不当な状況に追い込まれている国民を生み出さないようにすることが、この体制を続ける絶対条件になります。

 一方で、国家資本主義の世界は、多くの国民の成長と幸せのためには、多少の犠牲はやむをえないと考えて、前に進む世界です。恐らく、さまざまな社会的コストがかかるデモクラシーの世界よりも、高い成長を実現するという意味では、遥かにコストパフォーマンスが良い仕組みだと言えます。しかし、「理不尽な目に遭う人々」の不満が限界を超えると、暴動やら、革命やらで、国家が転覆してしまうようなリスクは常に孕んでいる世界です。したがって、この体制を維持するためには、そうした不満を抑え込み、暴動・革命を発生させない仕組みが必要になります。

 この2つの世界を象徴しているのが、香港と深圳です。海と運河で隔てた対岸にある、この2つの世界都市は、デモクラシーの最前線=香港、国家資本主義の優等生=深圳、と言えるでしょう。

 今、香港はカオスに引き込まられそうな状況であり、まるで、デモクラシーの断末魔のようにも見えます。一方の深圳は、完璧な監視社会・管理社会の下で、高い成長と世界一の治安を誇っています。現在の香港と深圳を見る限りでは、国家資本主義に分があるように見えますが、デモクラシー側に巻き返す力が残っているのでしょうか?

 少なくとも、デモクラシー側の主たる戦術がトランプの関税政策では、国家資本主義に対して全く太刀打ちできないと思います。


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