金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【金融】 米国株式が史上最高値を更新中だが・・

2019-11-06 07:13:58 | 金融マーケット

 昨日、金融マーケットが年内は活気づくのでは? という話をしたところですが、一方で逆の意見を言っているストラテジスト達がいるので、その論拠もご紹介しておきます。

 世界中のストラテジストにとっては伝統的な手法ですが、株価がオーバーバリューなのか、アンダーバリューなのかを測る物差しとして、各国の名目GDP水準があります。SP500でもNYーDOWでも、その株式時価総額と米国の名目GDPをヒストリカルに較べてみるとその動きはほぼ一致しており、しかも株価が名目GDP比で行き過ぎた水準にいると、必ずどこかで水準訂正が起こる、というのが彼らの論拠です。

 現在のSP500は、名目GDP比で約3割程度は割高になっているため、この伝統的手法を信奉するストラテジストは、米国株式や、それに連関して動く日本株に対して、かなりネガティブな意見を言い続けているということ。

 自分は、こうした見解には一定のリスペクトを持っているので、常に念頭に入れてマーケットを見ていますが、こうした観点とは別に、リーマンショック以降の各国の金融当局・中央銀行のスタンス、およびバーゼルⅢなどの規制強化による「リスクプレミアムの変化」が無視できないことを、彼らには言い続けています。すなわち、かつて金融マーケットで暴れまくっていたHFや投資銀行は、リーマンショック以降の各種規制強化の結果、悲壮感漂うほど存在感がありません。さらに、各国の中央銀行はマーケットの安定化のための多岐にわたるオペレーションを駆使して、市場のボラティリティを抑え込む役割をきっちり果たしています。したがって、昔、イングランド銀行に真っ向勝負を挑んだソロスのような存在はほぼ消滅しています。

 この結果、ヒストリカルな市場分析を行う際には、ここ最近のマーケットには上記の「市場安定化によるリスクプレミアム」が乗っていると考えた方が良いということ。ここを見誤って、ショートポジションばかり積み上げていると、中央銀行や公的マネーからの「締め上げ」「踏み上げ」に会って、ひどい目にあうこともあります。マーケットは本当に難しい。


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