金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【金融】 香港と深圳

2019-11-22 07:26:40 | 金融マーケット

 米国と中国の主導権争いは、ここからの10年を巡るメインテーマになりますが、この意味するところは、「デモクラシーによる資本主義」と「国家資本主義」のどちらの方が、世界の国々に、成長力と安定をもたらす体制なのかを、はっきりさせる闘いに他なりません。

 デモクラシーの世界は、とても不安定であり、国民の意識・気持ちが少しでも荒んだ方向へ流れれば、ポピュリズムと呼ばれるカオスの世界へ引き込まれてしまいます。そうならないためには、特に意識の高い人々の中から、ちゃんとしたリーダーを選ぶ仕組みを堅持することと、理不尽な目に遭って、不当な状況に追い込まれている国民を生み出さないようにすることが、この体制を続ける絶対条件になります。

 一方で、国家資本主義の世界は、多くの国民の成長と幸せのためには、多少の犠牲はやむをえないと考えて、前に進む世界です。恐らく、さまざまな社会的コストがかかるデモクラシーの世界よりも、高い成長を実現するという意味では、遥かにコストパフォーマンスが良い仕組みだと言えます。しかし、「理不尽な目に遭う人々」の不満が限界を超えると、暴動やら、革命やらで、国家が転覆してしまうようなリスクは常に孕んでいる世界です。したがって、この体制を維持するためには、そうした不満を抑え込み、暴動・革命を発生させない仕組みが必要になります。

 この2つの世界を象徴しているのが、香港と深圳です。海と運河で隔てた対岸にある、この2つの世界都市は、デモクラシーの最前線=香港、国家資本主義の優等生=深圳、と言えるでしょう。

 今、香港はカオスに引き込まられそうな状況であり、まるで、デモクラシーの断末魔のようにも見えます。一方の深圳は、完璧な監視社会・管理社会の下で、高い成長と世界一の治安を誇っています。現在の香港と深圳を見る限りでは、国家資本主義に分があるように見えますが、デモクラシー側に巻き返す力が残っているのでしょうか?

 少なくとも、デモクラシー側の主たる戦術がトランプの関税政策では、国家資本主義に対して全く太刀打ちできないと思います。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする