金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【ダービー特集②】 1976年 天馬トウショウボーイ『出抜け』に敗れる!

2021-05-26 07:20:33 | 競馬

 本日は、1976年の日本ダービー

 

 この年の3歳牡馬クラシック戦線は、関西に「流星の貴公子テンポイント」が現れて、皐月賞でも1番人気に押されていましたが、結果は、年明けにデビューした新星のトウショウボーイが5馬身差で圧勝したため、この年のダービーは、「天馬トウショウボーイ」の1強ムードとなっておりました。

 この大本命馬にとって心配な点は一つだけ。鞍上が当時まだ若手の池上昌弘騎手だったこと。それでも、皐月賞は池上騎手の完璧な騎乗によって5馬身差の圧勝だったことから、これを降ろす理由はなく、「とにかく馬にしっかり掴まってコースを周ってこい」などと、口の悪いファンはヤジを飛ばしていたものです。

 

 レースは想定とは異なり、このトウショウボーイが果敢に逃げる展開となりました。当初逃げるだろうと想定されていた馬が出遅れて、卓越したスピードを持つトウショウボーイにとっては、無理に位置を下げるよりも、自らペースを作って、そのまま直線での差し脚勝負に持ち込む方が安全確実という、騎手の冷静な判断があった上での逃げでした。この馬は、けして引っかかるようなクセはありませんでしたので、池上騎手の判断は正しかった。

 想定どおり、淡々とした流れのまま、そのままトウショウボーイは直線の坂を落ち着いて登り、これから仕掛けようとした瞬間でした。外から、加賀武見騎手のクライムカイザーが、トウショウボーイの進路を遮るように前に出て『出抜け』を食らわせたのです。ビックリしたトウショウボーイのスピードはいったん減速、その後、気を取り直して前を差し返そうとしましたが、1馬身1/2まで詰めたところがゴールでした。

 ちなみに、今のルールであれば、明らかに進路妨害で「降着」となる走り。しかし、当時の慣習として、クラシックレースで失格とか、降着判定は出し得なかったのです。本来ならば、天馬トウショウボーイはダービー馬になるはずだったのに、老獪な騎手会長 加賀武見騎手の乱暴とも言える騎乗のために、この生涯の名誉を失うこととなります。ちなみに、トウショウボーイに騎乗した池上昌弘騎手も、この敗戦をきっかけにトウショウボーイから降ろされることに。このあとは、西の天才騎手 福永洋一騎手が主戦に指名されることになります。

 まだ高校生だった私は、酷い進路妨害を受けて、負けてしまったトウショウボーイと、主戦を降ろされた池上昌弘騎手を想って、こんな理不尽がまかり通るのか! と憤然としたのを覚えております。

 以上のように、大人の世界、理不尽な世界を、ジックリと教えてくれたのが、この年の日本ダービーでありました。


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