しつこいようですが、先週お話した内容を繰り返します。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ダービーが終わるとすぐに、JRA顕彰馬の投票が行われます。
もともと、JRA顕彰馬の選定にあたっては、有識者による「顕彰馬選考委員会」の審議によって決定されていました。さすがに、この頃の有識者は、知識も見識も高い方ばかりで構成されていたので、最初の10頭、次の5頭と、誰が見ても「なるほど‥」と思える選定結果になっておりました。
それが、トウショウボーイが選定されて、テンポイントが選定されなかったタイミングの時、関西の競馬ファンの世論やマスコミが「異論」を唱えるようになり、もっと一般の競馬ファンの声が反映される形の選定方法へと、舵を切られることとなりました。結果として、2001年からは現在とほぼ同じ、マスコミによる投票方式となり、幾つかの細かな変遷を経て、現行の選定ルールは2015年に確定しました。
投票権を持つのは『10年以上競馬報道に携わっているマスコミ・新聞記者』。1名4頭までの連記式投票を行い、総投票者の3/4以上の得票が得られれば、顕彰馬へ選出されることになります。これはこれで、アメリカも同様の仕組みになっており、問題なさそうに思えますが、『10年以上競馬報道に携わっているマスコミ・新聞記者』というのが怪しい仕組みの元になっています。
この中には、須田鷹雄氏や平松さとし氏のような見識者もいれば、競輪・競艇・オートレース等を兼務している地方チャンネルのADみたいな人や、YouTuberレベルの人も混ざっています。広く生産界から地方競馬の運営面まで心血を注ぐ見識者もいれば、単に一般ファンからのフォロワー数のみが関心事の人もいるということ。後者のタイプが増加傾向にあることに、強い不信感を抱くのは私だけではないと思います。
結果として、今の投票方式では、現役時代をなるべく長く活躍して、獲得したGⅠ数が多い馬ほど、早く選定されやすい状況になってしまっています。怪我や生産界の事情で早く引退して、種牡馬として、あるいは繁殖牝馬として大活躍した馬には、陽が当たりづらい仕組みになっているということ。
その代表例が、キングカメハメハ。GⅠ獲得は、日本ダービーとNHKマイルCの2つだけではありますが、種牡馬としての成績は、2022年5月15日現在、産駒のJRA通算勝利数は2124勝、JRA通算重賞勝利数は128勝で、第1位サンデーサイレンス、第2位ディープインパクトに次ぐ、堂々の第3位。日本の競馬界へ残した功績は、過去の表彰馬たちと較べても、遜色ないどころか、頭一つも二つも抜けた存在となっています。しかし、このキングカメハメハが、まだ顕彰馬に選定されていません。
登録抹消から20年以上経過すると、選定されるリストから外れてしまうので、あと3年しかチャンスがありません。現役時代の実績偏重の一般ファンの世論に動かされやすい記者たちは、まずはキタサンブラック、テイエムオペラオーなどの選定に執着してきたため、キングカメハメハにはチャンスが訪れませんでした。
今年は、登録抹消から1年以上が経過したアーモンドアイが、まず満票で選定されることになるでしょう。しかし、それ以外の票は、モーリスやブエナビスタ、ダイワスカーレットなどに割れてしまい、キングカメハメハに、どこまで票が集まるか定かではありません。
こんなことを繰り返しながら、日本を代表する牝系を創り出しているベガやエアグルーヴといった名牝は、既に顕彰馬選定の資格を失ってしまいました。また、産駒が3頭も人気種牡馬となっているシーザリオもあと3年で資格を失いますが、今の仕組みでは顕彰馬に選定される可能性は極めて低いと言わざるを得ません。
もし、今回もキングカメハメハが顕彰馬に選定されないこととなったらば、私は今の選定方法を止めて、元の有識者による「顕彰馬選定委員会」の復活を提唱したいと思います。
競馬関係の新聞記者の皆さん、今年は皆さんの見識が問われる顕彰馬投票であることを、肝に銘じて、シッカリお願いしますよ!!