金融マーケットと馬に関する説法話

普段は資産運用ビジネスに身を置きながら、週末は競馬に明け暮れる老紳士の説法話であります。

【年度代表馬問題】 競馬記者の皆さんにご意見!

2021-01-03 07:36:52 | 競馬

 2020年の年度代表馬については、もうすぐ競馬サークル関係者、特に競馬記者の投票により決定されます。年度代表馬とは、プロ野球でいうところのMVP(最優秀選手)ですから、その年に獲得したGⅠタイトルの数やレース内容が、その判断材料になるようです。

 2020年は、無敗の三冠馬コントレイル、無敗の三冠牝馬デアリングタクト、史上初のGⅠ9勝馬アーモンドアイ、短距離GⅠ3勝グランアレグリア、夏冬の両グランプリ制覇クロノジェネシスなど、普段の年ならば、普通に年度代表馬に選ばれていた馬が、少なくとも5頭は居る年でした。

 ただ、昨年のジャパンカップで三冠馬3頭による激突が実現、この闘いを完勝したアーモンドアイに票が集まることが予想されており、前評判では、年度代表馬はアーモンドアイで決まりと言われています。

 しかし、敢えて私は異論を唱えたいと思います。まず、第1に「3歳クラシックの意義」についてです。競馬はブラッドスポーツと呼ばれていますが、時代から時代へ、競馬をサステナブルに繋いでいくために存在するのが、同世代による選別戦である3歳クラシックです。特に、スピード戦、スピードの持続力戦、消耗戦など、異なる条件で、しかも1回限りの機会を、すべてクリアするスーパーホースを『三冠馬』として讃えてきたのは、これが競馬界の未来に、重要な血脈として残る可能性が大きいことから。同じGⅠ3勝でも、何度も挑戦できる古馬GⅠと、クラシック三冠は同列に論じるべきではありません

 第2に、直接対決の結果を評価する場合は、その条件をよく吟味する必要がある点です。今回は、三冠馬3頭が対決したジャパンカップの結果が重視されていますが、ここで負けたコントレイルとデアリングタクトは、初の古馬との闘いでした。これは、あのディープインパクトやシンボリルドルフでさえも、初の古馬戦は敗れた事実があるように、3歳馬にとっては大きなハードルと言えます。急に対戦相手のレベルが上がった場合に、淀みないペースや激しい競り合いに対応できずに、戸惑う面が出るのが初の古馬戦だからです。しかし、直後の2戦目では、ディープインパクトも、シンボリルドルフも、またディープスカイも、初戦で負けた同じ相手に雪辱を果たしています。コントレイルとデアリングタクトには、その雪辱のチャンスすら与えられていません。ここは、慎重に吟味すべき要素だと考えます。

 ここで、過去のアメリカの事例を紹介いたします。アメリカでは1977年にシアトルスルーという三冠馬が、1978年にはアファームドという三冠馬が誕生しました。1978年には、この三冠馬同士の直接対決が2度行われましたが、2度ともに1年先輩の三冠馬であるシアトルスルーが完勝しました。しかし、1978年の年度代表馬には、1978年の3歳クラシック三冠馬であるアファームドが選出されました。これは、アメリカの競馬記者たちが、3歳クラシック体系の意義を正しく理解していたからだと言われています。

 

 私は、2020年の年度代表馬には、無敗の三冠馬コントレイルこそが相応しいと確信しています。私の主張が少数派であることは理解していますが、ただ単純に「1回限りのドリームレースの勝者」を年度代表馬に選ぶのであれば、見識者による投票などでなく、ファン投票で決める方が遥かに判りやすいと思います。

 それでも、直接対決の意義が一番大きいと主張される記者の方々には、「それならば、安田記念でアーモンドアイに完勝した、グランアレグリアこそが年度代表馬に相応しいのでは?」と問いたいと思います。グランアレグリアもマイル・短距離GⅠ3勝馬ですし、あのアーモンドアイを力でねじ伏せた実績を、一番上に評価すべきと思います。

 2020年の年度代表馬選定投票は、日本の競馬記者の見識が問われるイベントであると、私は考えています。


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