昔話で一番好きかも知れない話。
どの場面が好きかって、最後にドサッとお宝が運ばれてくるところ
・・・じゃなくて、おじいさんが自分がほっかむりしていた手ぬぐいを、6番目のお地蔵さんの頭にかぶせてあげるところ。
子どもの頃、自分が読んだ絵本では、そこのところでおじいさんがこういうセリフを言っていた。
「古いけど、きちんと洗濯してあります」
ここを読んだ時、当時自宅で使っていた洗濯用洗剤のいい香りが思い浮かび、それでこのお話が好きになった。
息子が2歳になった頃、「そうそう、息子にも『かさじぞう』を読んであげよう」と買ったのがこの本。
とにかく絵本は絵が大事!と探して見つけたのが、これ!
黒井健さんの淡い静かな色調がなんとも言えないいい雰囲気を醸し出している。
『ごんぎつね』や『てぶくろをかいに』もそうだったけど、1冊がひとつの美術館のような贅沢さ。
と、絵に惹かれて買ったのだが、松谷さんの文章がそれを越えて良かった。
おじいさんがなぜ地蔵さんに笠をかぶせたのか、その理由が最初のページにちゃんと書かれている。
もちろん、笠が売れ残ったからなのだが、それだけではなかった。
そして、正月の用意を何も買えず、しかも売り物の笠を全部地蔵さんにあげて来たのにちっとも怒らなかったおばあさんは、ただ優しかったからおじいさんの行動に理解を示したわけではないということも。
おじいさんが帰って来た時、おばあさんは怪訝に思ったとみられる言葉をかけるのだ。
「おや、手ぶらかい」
しかし、理由を聞いて納得し、一緒にお湯を飲んで、漬け物をかじって年越しする。
二人は6人生んだ子を、6人とも亡くしていた。
ー「かさじぞう」は
子育ての難しかった時代の、
辛い思いを抱えて生きているじいとばあのお話だと思いますー
本のカバーの裏の折り返し部分に書かれていた松谷さんのあとがきに、泣いてしまった。