昨日、渋谷のアミューズCQNで、ワインをテーマにしたドキュメンタリー
映画、『モンドヴィーノ』を見てきました。この映画は、ワイン造りに
携わるさまざまな人たちを、できるだけ広範囲に取材することで、現代の
ワイン造りの実情、裏事情、問題、葛藤、などなどをつまびらかにした
意欲作です。監督は、自身ソムリエの資格を持つジョナサン・ノシターと
いうかたで、それだけに実にポイントを突いた取材をしています。
今日のワイン造りで一番問題になっていること。この映画によると、それは
「ブランド化」です。消費者は誰でも、できるだけおいしいワインが欲しい。
しかし、ワインに通じている人や、頻繁にワインの試飲の機会に立ち会える
人でもなければ、市場にあまた流通しているワインのうち、どれが本当に
おいしいワインであるのかは、飲んでみるまでわからない。だから、ワイン
選びのときに指標となるものが欲しい。「これにしたがって買えば、少なく
ともはずれのワインには当たらない」という、権威と実績のある評価基準が
欲しい。
今その指標としてもてはやされているのが、ロバート・パーカーという
アメリカのワイン評論家の評価と、フランスのミシェル・ロランという
ワイン・コンサルタントの評価です。この二人の評価の影響力は絶大で、
市場のワインの値段がこの二人の評価次第で上下してしまうほどです。
そのため、この二人にいい評価をしてもらうために、二人の好みに合うように
ワインの味や色を変えるワイナリーまで現れるという事態にまで発展して
いるのです。中には、二人に評価してもらうときには、普段市販していない
ような特別のワインを出すワイナリーまであるそうです。結果として、
おいしいワインを選ぶための指標、という本来の目的とは異なり、あまたある
ワイナリーのどのワインも、すべて似たような味のワインになってしまう、
という憂慮すべき結果を招いています。
彼らが「良い」と評価するワインは、味も色も濃厚で、早く飲めるワインで
ある、という傾向があります。当然、そういうワインが高得点となるので、
ワイナリーの中には色を濃くするために、圧縮果汁をワインに混ぜるところ
まで出てきたそうです。これは、フランスのワイン醸造法に違反する行為で、
当局はロバート・パーカーの評価による「パーカリズム」に頭を痛めています。
実際、ミシェル・ロラン氏は自分がアドバイスをしているいくつかのワイナリー
で、ワインを早く飲み頃にするために、ちょっとこれは・・・、と思われる
ような最新のテクノロジー処理をさせています。ちなみになぜ濃厚な味の
ワインを評価しているかという点ですが、これはおそらくミシェル・ロラン
氏がヘビースモーカーであることと無関係ではないと思います。映画の中で、
ロラン氏はひっきりなしにタバコを吸っていました。
さらに、一部の大手ワインメーカーが、他のワイナリーやワインメーカーを
買収し、自社で展開している味の均一化・改造の手法を買収先のワイナリー
でも実行しています。これにより、どこでも安くておいしく、一定の品質を
キープしたワインを大量生産することが可能になるのですが、しかしそれは
ワインの個性を奪う行為に他なりません。ワインの味とは、その土地の特性
である「テロワール」を生かしたものであることが、それこそワインの
レゾンデートルであると言ってもいいはずなのに、このブランド化というか
マクドナルド化というか、最新のテクノロジーによる品質管理のために、
ワインの味は確実に個性を失いつつあることが、この映画でわかりました。
続きはまた。
映画、『モンドヴィーノ』を見てきました。この映画は、ワイン造りに
携わるさまざまな人たちを、できるだけ広範囲に取材することで、現代の
ワイン造りの実情、裏事情、問題、葛藤、などなどをつまびらかにした
意欲作です。監督は、自身ソムリエの資格を持つジョナサン・ノシターと
いうかたで、それだけに実にポイントを突いた取材をしています。
今日のワイン造りで一番問題になっていること。この映画によると、それは
「ブランド化」です。消費者は誰でも、できるだけおいしいワインが欲しい。
しかし、ワインに通じている人や、頻繁にワインの試飲の機会に立ち会える
人でもなければ、市場にあまた流通しているワインのうち、どれが本当に
おいしいワインであるのかは、飲んでみるまでわからない。だから、ワイン
選びのときに指標となるものが欲しい。「これにしたがって買えば、少なく
ともはずれのワインには当たらない」という、権威と実績のある評価基準が
欲しい。
今その指標としてもてはやされているのが、ロバート・パーカーという
アメリカのワイン評論家の評価と、フランスのミシェル・ロランという
ワイン・コンサルタントの評価です。この二人の評価の影響力は絶大で、
市場のワインの値段がこの二人の評価次第で上下してしまうほどです。
そのため、この二人にいい評価をしてもらうために、二人の好みに合うように
ワインの味や色を変えるワイナリーまで現れるという事態にまで発展して
いるのです。中には、二人に評価してもらうときには、普段市販していない
ような特別のワインを出すワイナリーまであるそうです。結果として、
おいしいワインを選ぶための指標、という本来の目的とは異なり、あまたある
ワイナリーのどのワインも、すべて似たような味のワインになってしまう、
という憂慮すべき結果を招いています。
彼らが「良い」と評価するワインは、味も色も濃厚で、早く飲めるワインで
ある、という傾向があります。当然、そういうワインが高得点となるので、
ワイナリーの中には色を濃くするために、圧縮果汁をワインに混ぜるところ
まで出てきたそうです。これは、フランスのワイン醸造法に違反する行為で、
当局はロバート・パーカーの評価による「パーカリズム」に頭を痛めています。
実際、ミシェル・ロラン氏は自分がアドバイスをしているいくつかのワイナリー
で、ワインを早く飲み頃にするために、ちょっとこれは・・・、と思われる
ような最新のテクノロジー処理をさせています。ちなみになぜ濃厚な味の
ワインを評価しているかという点ですが、これはおそらくミシェル・ロラン
氏がヘビースモーカーであることと無関係ではないと思います。映画の中で、
ロラン氏はひっきりなしにタバコを吸っていました。
さらに、一部の大手ワインメーカーが、他のワイナリーやワインメーカーを
買収し、自社で展開している味の均一化・改造の手法を買収先のワイナリー
でも実行しています。これにより、どこでも安くておいしく、一定の品質を
キープしたワインを大量生産することが可能になるのですが、しかしそれは
ワインの個性を奪う行為に他なりません。ワインの味とは、その土地の特性
である「テロワール」を生かしたものであることが、それこそワインの
レゾンデートルであると言ってもいいはずなのに、このブランド化というか
マクドナルド化というか、最新のテクノロジーによる品質管理のために、
ワインの味は確実に個性を失いつつあることが、この映画でわかりました。
続きはまた。