書きだしたら止まらなくなってきました。
研究を続けるというのはある意味結果がすぐに出ないからしんどいですよね。将来、必ず患者さんたちの役に立って見せようとは思いますが、今は限られた時間しか診療もしていませんし、患者さんたちの役に立っているという実感が少ないのですよ。
僕は研究は自己満足で終わるのではなくて、必ず患者さんに還元できなくては意味がないと思っています。それができるかどうかで、今後の人生も決まるだろうな~。
さて、それでは少し書き加えていきます。近藤誠氏の話から書き始めた「ちょっとした抗癌剤の話」シリーズですが、僕は血液内科医ですから白血病や悪性リンパ腫など「抗癌剤だけで治りうる」疾患を対象にしています。そう、僕はもともと「がんを薬で治したい」「がんを撲滅するために、免疫を学びたい」「手術はしたくない(ネガティブw)」で血液内科医になりました。
ちなみに一般的に言われている話ですが、癌というのはがん細胞が1~2㎝、重さでは約1g(10^9なので、10億個)を超えると臨床的ながんということになります。白血病の倍化時間は非常に早いですが、一般的な腫瘍(転移性肺がんに関するネット上の記載は3ヶ月でした)の速度を考えると1→2→4・・・・・とすると30回くらい経たないとこの大きさになりません。90か月以上の経過ということになります。転移した癌は基本的に増殖速度は速いですので、実際は10年以上前にできた腫瘍が悪さをしてきているという話だと思います。ただ、ここから10回の分裂(増殖)する時間を経過するとあっという間に1kgまで大きくなるといわれています。
何が言いたいかというと、今いる癌はずいぶん昔にできたやつなんだという話です。
で、その癌に対して抗癌剤を一般的に使用するか・・・という話ですが、YesでもありNoでもあると思います。
まず、白血病などは抗癌剤がよく効きますし、手術で取りきるなんてできません。ワシントンではないですけど…全身の血を抜くつもりか(笑)
それでTotal cell killという話が出てきます。これは
1個の白血病幹細胞を移植すれば全身に広がり致死的になる
癌細胞の増殖は指数関数的で一定(対数グラフで直線)
抗癌剤の効果はがん細胞の数が多かろうと少なかろうと一定
という話から、すべてのがん細胞をつぶさないとダメ(1個残ればまた増えてくる)という話になりました。癌細胞の増殖速度よりも早く、多くのがん細胞をつぶしていこう…となったわけです。
癌細胞というやつらは・・本当は正常な細胞が「修正しなさい」という命令をしたら、自分を治して元通りになるのですけど・・その命令を聞くことができずに悪くなってしまったので。癌細胞は修復能力は普通の細胞よりも弱いわけです。それ故同じダメージを受けた後の回復は正常な細胞の方が早いと考えられています。白血病やリンパ腫の治療が抗癌剤を一定レベルで繰り返すのはそういう理由があるからです。癌細胞に大ダメージを与えれば、正常細胞の方が先に回復してくる(はず)。たとえ、増殖速度が「やつら」の方が早くても、回復速度はこっちの方が早いのだ・・・。
白血病では「増殖速度が常に早い」ということで・・・(専門的には違うことが書けますが・・・・難しいので、白血病などは増殖が速いので上の理屈が成り立つということにしてください)
一般のがん腫はどうか…という話になります。
固形がんの場合・・・専門家ではないので完璧な説明にはなっていないかもしれませんが、抗癌剤をよく使うグループで癌の研究をしている人間からのコメントだと思ってください。
固形がんの場合、上の「一定速度で増え続ける」という過程が間違いであるといわれています。一般的に小さい時にはよく癌は増えるが、大きくなると増えにくくなる(増殖が遅くなる)といわれています(Simonの仮説、Compertzian増殖モデル)
増殖速度が落ちる…という個とは理屈上「抗癌剤は効きにくくなる」ということになります。
よく、術後化学療法の話がありますが、僕は理屈的にはよくわかる話だと思います。一つ目の理屈はある程度の大きさの腫瘍を手術すると、血液中に癌細胞が流れているのが確認できるという話からです。別にどこかに定着できるかどうかは(要するに転移するという話)、その環境によるとされていますが0ではないと思います。
2つ目に統計学的に再発のリスクがある群、ない群で抗癌剤投与の有無で生存を比較をして差が出ていること。
3つ目は上の仮説を考えると癌細胞が少ない時の方が抗癌剤は効きやすいことになります。
以上から、術後抗癌剤治療というのは理にかなっているのだと思います。
もちろん、将来的にはさらに研究が進んでこういう人にはやったほうが良い、この人はやらなくてよいというのがわかってくるのだと思いますが、今はある程度「こういった患者さんたちにはやったほうが良い」としか言えないのでしょう。
治療をいつまで継続するか・・・に関しては、治療効果があって副作用が許容範囲であることが絶対条件だと思います。先日読んだ「悪医」という小説にも書かれていましたが、引きどころは難しい。
どのタイミングでも引く可能性は考える必要があると思いますが、個人個人によると思います。医師は常に患者さんのメリットとデメリットを考えながら治療の計画を立てています。患者さんによっては自由に動く時間が必要な方もいるでしょうし、患者さん個々に合わせるしかないのですよね。
そうすると将来の医師数が本当に心配だ・・・・。
いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。
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それでは、また。
こんばんは、コメントありがとうございます
先生のおっしゃる通りで、今までの研究結果があって、今につながっているのだと思います。僕が思いついたもののうち、2つは過去の研究結果を複数集めたらこうなるのではという考えでおりますし、自分自身が行った研究がすぐに人の役に立たなくても、そのあと誰かが役立ててくれればよいと思います。
ただ、本当に大変だなぁと思います。
医師数は本当に必要だと思います。
また、コメントいただければと存じます
一つ一つ敷石をおいていって、あとから走ってくるもの達が通りやすくする。そんな敷石。
あとから走って来たものはまた、敷石となり、さらに後から来るものが走りやすくする。その繰り返し。
なんだかなあ。。
大変なんだよね、でも面白い。
面白いけど、辛い。
そんな研究が継続して行われるように、数の力は欲しいよね、医師数。
おはようございます。はじめまして。コメントありがとうございます。
リンパ腫の診断がつきにくい、もしくは低悪性度と思われていたが、別のところを再検したらびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)になったということはあり得ます。
低悪性度のリンパ腫(種類はいろいろですが、濾胞性リンパ腫やMALTリンパ腫など)は形質転換して悪性度の高いリンパ腫になることはあります。
ですから、濾胞性リンパ腫と診断された方が再発時にDLBCLになっていたり、DLBCLの診断で治療をした患者さんが再発時は濾胞性ということもあります。
低悪性度だけ、また腫瘍量が多くないのであれば経過観察でもよいと思われますが、悪性度の高い細胞が一部あるのであれば治療を受けられた方が良いように僕も考えます。
生検結果で悪性リンパ腫以外・・・であれば、逆にその旨はすぐに書けると思いますよ。リンパ球以外の存在してはいけない細胞が混じっているので。
以前、紹介された患者さんは病理結果が出るまで最終的に3週間かかりました。疑い・・・の時点で紹介されて、疑いが確定になるまで3週間。時間がかかるから検体を貸してくれといったものの、全検体が検査会社にあって「お手上げ」ということがありました。そういう意味では時間がかかっているのはおかしくはないのかもしれません。
また、コメントいただければと存じます。
PET後から、治療は覚悟していたのですが…。
生検結果がなかなか出ず、2回の生検でトータル3ヶ月半待ちでした。つい先日、びまん性の疑いと出ましたが、まだ確定待ちです。次回、確定されるかも怪しい。
当初は低悪性度非ホジキンと言われていたのですが、中悪性度?と少し戸惑っています。こんなものなのでしょうか?
低悪性度の場合、再発を考えると治療の有無を迷っていましたが、そんな事を言ってられない感じに。
抗がん剤は副作用ももちろんですが、母の体力を考えると感染症のリスクが怖いです。
ちなみにこれだけ生検結果が遅いという事は、もしやのリンパ腫以外ということもあったりするのでしょうか?