―四方のたより― 善意のパフオーマンス化
<日暦詩句>-3
冬といふ壁にしづもる棕櫚の影
冬といふ日向に鶏の坐りけり
落葉やんで鶏の眼に海うつるらし
―三好達治「落葉やんで」より-昭和5年―
タイガーマスクの伊達直人を名告り、群馬県の児童相談所前にランドセル10個が置かれていた-昨年暮れの25日-、という報道がなされるや、波状的に全国に伝播して、いまやひきもきらせぬこの善意運動、あしたのジヨーや桃太郎、せんとくんまで名告る匿名氏も現れた、という。
一過性のものとはいえ、いいことにはちがいない。
いいことにはちがいないが、なんだかこの現象、「善意のパフオーマンス化」と言えない向きもない。
便乗型の心性に些か底が浅かろうなどと揶揄する気持は毛頭ないが、触発され動いたその一回性の行為が、それぞれの個の中で、一定の持続性をもちうる志にまで深まることになれば、と思う。
実際のところ、この騒ぎのように世間に知られることのない匿名の善意というものは、全国津々浦々至る所にある筈だし、地道にコツコツと積み上げてきた尊い善意のタネは、このパフオーマンス化とは遠いところで、人知れずさまざまな花を咲かせている筈だ。
この騒ぎのなか、毎日新聞の夕刊記事「ランドセル贈り続けて半世紀」の見出しにはさすがに眼が釘付けになった。
三重県四日市の鞄店主二代にわたっての話だが、掲載された写真の姿、その表情がさすがにいい。
―山頭火の一句― 行乞記再び -136
5月22日、あぶないお天気だけれど休めない、行乞しつつ4里は辛かつた、心身の衰弱を感じる、特牛-コットイ-港、三国屋
此宿はおもしろい、遊郭-といつても四五軒に過ぎないが-の中にある、しかも巡査駐在所の前に。
山、山、山、青葉、青葉、青葉。
今日の行乞相はまづ及第、所得はあまりよくない。
棕櫚竹の拄杖はうれしい、白船老はなつかしい。
附野-津津野-のお薬師さまにまゐる、景勝の地、参拝者もかなりあるらしい。
※表題句のみ記載、改作と註あり
Photo/海岸線を眼下に望む丘の上に建つ附野薬師
Photo/附野薬師東山寺近く観涛園にある奇巌「俵石」
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