Moments musicaux

ピアニスト・指揮者、内藤 晃の最新情報です。日々、楽興の時(Moments musicaux)を生きてます。

ピアノの状態と椅子の高さ

2013年01月17日 | オピニオン


最近、複数の出演者によるジョイントコンサートに出演する機会が続けてありました。このようなコンサートでは、一人のリサイタルとは異なり、調律師さんへの調整のリクエストができませんし、本番のピアノでの当日リハーサルが数分しかできないこともあります。今日は、そんな時に私が数分間で何をしているかをブログでご紹介してみたいと思います。

単刀直入に申し上げると、「椅子の高さを決める」…これに尽きます。ピアノの状態によって、自分の弾き方にフィットする椅子の高さは変動するものなのです。先日のモンポウのコンサートで、あるお客さまから、「椅子だいぶ低くされましたね」と声を掛けていただいたのですが、実は、会場のピアノへの対策だったのでした。

鍵盤を押し下げていくと、指にかっくんと抵抗を感じさせるポイントがあります(アフタータッチ)。そこですでにハンマーは弦に到達しており、アフタータッチは言わば鍵盤の「アソビ」の部分になります。鍵盤の底を狙った深い打鍵をすると、下部雑音を伴って輪郭のくっきりした音色になり、アフタータッチのポイントを狙ってやや浅い打鍵をすると、下部雑音を伴わない淡い音色になります。

まず、このアフタータッチの量が大きな問題で、例えば、アフタータッチの少ない調整のピアノで普段と同じように弾こうとすると、淡い(浅い)タッチのところで音がかすれたり抜けたりしてしまうということが起こり得ます。この現象への対策として、例えば、アフタータッチの少ないピアノでは、椅子を少し低くして、もっと鍵盤の底ギリギリの辺りでコントロールを試みるというのも工夫のひとつです。

また、鍵盤のタッチ感の「重さ」(実際に重さが変わっているのではなく、ハンマーと弦の距離[打弦距離]や、そのほか様々なアクション調整上の要素によって、重く感じられたり軽く感じられたりします)も、椅子の高さを決めるうえで大事なポイントです。椅子を高くするほど、重力に助けられ、鍵盤自体のタッチ感は軽く感じられると思います。例えば、指に感じるタッチ感が軽すぎる状態で弾くと、人によっては暴走や転倒(笑)のもとになりかねません。ピアノの状態を的確に診断したうえで、そのピアノと自分の弾き方に丁度良くフィットする椅子の高さを見つけることが肝要なのです。

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