Moments musicaux

ピアニスト・指揮者、内藤 晃の最新情報です。日々、楽興の時(Moments musicaux)を生きてます。

愛聴盤ひとことレビュー(18)

2008年11月08日 | レビュー
■シューマン:詩人の恋(1965ザルツブルク音楽祭ライヴ)/ヴンダーリヒ■

知り合いのテノール歌手が、「ヴンダーリヒは反則」と言っていた。声が美しすぎるのである。その甘く輝かしい、艶やかな歌声を聴くだけで陶然としてしまう。「詩人の恋」は彼の十八番で、何種類も録音が出ているが、自分はこのザルツブルク音楽祭のライヴが好きである。

Schubert, Schumann and Beethoven
Schubert, Schumann and BeethovenLudwig van Beethoven Franz Schubert Robert Schumann

おすすめ平均
stars若き詩人の世界へ深く入っていく名唱

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■シューベルト:美しき水車小屋の娘/ヴンダーリヒ■

これは、不慮の自己で夭折したヴンダーリヒの早すぎる“最後のスタジオ録音”となったもの。甘酸っぱい青春を歌わせるのに、ヴンダーリヒほど適した歌手はいない、と思う。

シューベルト:歌曲集「美しき水車小屋の娘」シューベルト:歌曲集「美しき水車小屋の娘」
シューベルト ギーゼン(フーベルト)

ユニバーサル ミュージック クラシック 2007-02-28

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愛聴盤ひとことレビュー(17)

2008年11月08日 | レビュー
■ラフマニノフ:ピアノ協奏曲集■
アール・ワイルド(ピアノ)、ホーレンシュタイン指揮ロイヤルフィル


ラフマニノフ自演以外でまっさきにお薦めしたいのがアール・ワイルド盤。生前のラフマニノフと親交があったワイルドのピアノは、節度のあるロマンティシズムとタッチの微細な揺らめき、そして抜群のドライヴ感など、ラフマニノフ本人の演奏に通ずる特徴を持っている。録音が良い分、自演の録音よりもストレートに伝わってくる。テクニックの安定感もピカイチで、ピアニスティックな効果ではなく「音楽」自体がここまで前面に出た演奏も珍しい。ホーレンシュタイン指揮ロイヤルフィルの雄大なひびきもすばらしい。
なお、付言すると、曲がロマンティックだからといって、ベタベタと歌う演奏はいただけない。節度をもった演奏こそ、楽曲のロマンティシズムを美しい形で伝えてくれる。

Rachmaninov: Piano Concertos Nos. 1-4; Rhapsody on a Theme of PaganiniRachmaninov: Piano Concertos Nos. 1-4; Rhapsody on a Theme of Paganini
Sergey Rachmaninov Jascha Horenstein Royal Philharmonic Orchestra

Chandos 2003-06-24

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おすすめ書籍(1)

2008年11月08日 | レビュー
■作曲家からのメッセージ~音楽理論から演奏表現へ/大ヶ瀬邦生■

どう楽譜を読むべきか、という手引きとして、生徒さんにお薦めしている本です。さまざまな譜例を挙げ、フレーズや和声などの分析を踏まえ、「楽譜がこうなっているから、ここではこういうふうに演奏すべき…」という提言が書かれています。
一例を挙げると、「ここで転調するので、その2小節前のこの和音からそれを予感させるように」など、至極当たり前のことですが、このように、分析を踏まえてそれを演奏に“活かす”という部分に踏み込んでいる本は非常に少なく貴重です。

作曲家からのメッセージ―音楽理論から演奏表現へ作曲家からのメッセージ―音楽理論から演奏表現へ
大ケ瀬 邦生

全音楽譜出版社 1998-12-10

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岡田暁生氏の著作

2008年11月08日 | レビュー
音楽学の岡田暁生氏のピアノに関する著作が面白い。
難しいパッセージは難しそうに弾くほど聴き手の興奮を呼び起こすのだ、など、過激・痛快な論説が炸裂する。
ピアノ弾きはぜひ一度目を通してみてほしい。

■ピアノを弾く身体/岡田暁生編■

ピアノ弾き必読!ピアニストの身体感覚にスポットを当てた画期的な読み物。なんとなく感じていることが見事に文章化されていて痛快なことこの上ない。

ピアノを弾く身体ピアノを弾く身体
岡田 暁生; 近藤 秀樹; 小岩 信治; 筒井 はる香; 伊東 信宏; 大久保 賢; 大地 宏子

春秋社 2003-04-01

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■ピアニストになりたい ~19世紀 もうひとつの音楽史~/岡田暁生■

その時代、どのような演奏が理想とされたか、という演奏美学は、演奏家が留意しなければならないことであり、クヴァンツやツェルニーらの演奏美学に基づいて、この看過されがちな視点に光を当てている点は画期的。

ピアニストになりたい! 19世紀 もうひとつの音楽史ピアニストになりたい! 19世紀 もうひとつの音楽史
岡田 暁生

春秋社 2008-10-24

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また、『西洋音楽史』は、コンパクトな通史としてはこれ以上面白く分かりやすいものは皆無で、必読である。世界史のどんな時期に、どんな人々に向けて音楽が書かれたのかが手にとるように分かる。切り口鮮やかで、サクサク読めます。

■西洋音楽史―「クラシック」の黄昏/岡田暁生■

西洋音楽史―「クラシック」の黄昏 (中公新書)
西洋音楽史―「クラシック」の黄昏 (中公新書)岡田 暁生

おすすめ平均
starsずぶの素人にもおすすめ
starsいい買い物をしました。
stars初心者にきちっと解説しきった名著。
starsこんなおもしろい音楽史ははじめて
starsクラシックに目覚めてしまった人には必携!!

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愛聴盤ひとことレビュー(16)

2008年11月04日 | レビュー
■シューベルト:冬の旅■
ペーター・シュライヤー/スヴャトスラフ・リヒテル


生で聴いたシュライヤーの「冬の旅」が忘れられない。シュライヤーのどこか寂しげな歌声が実に「冬の旅」の世界にぴったりなのである。彼の実演は本当にすばらしく、言葉の力にただただ圧倒され、心洗われる。
録音は何種類かあるが、リヒテルのピアノによるライヴ録音が、実演の感動を蘇らせてくれる。リヒテルの深遠なピアノも相俟って、紛れもないシューベルトの宇宙が立ちのぼるような名演となっている。

Schubert: WinterreiseSchubert: Winterreise
Franz Schubert Sviatoslav Richter Peter Schreier

Gramophone 2004-02-09

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