明野西JFC監督日記

少年サッカーチーム「明野西JFC」の監督所感、活動予定/結果
(明野西JFCを愛し、応援する人々へ)

書評「争うは本意ならねど」

2012年04月24日 22時31分22秒 | Weblog
 書名: 争うは本意ならねど -ドーピング冤罪を晴らした我那覇和樹と彼を支えた人々の美らゴール-
 著者: 木村元彦
 発行所: 集英社インターナショナル
 定価: 1,500円+税


 先日、列車の中で読み終えました。
 この本は、ドーピング違反の冤罪を被ってしまった、プロサッカー選手、我那覇和樹の戦いとJリーグの全チームドクターや沖縄の人々らの支援活動を通じて、JFAやJリーグ(サッカー界)の大きな問題を提示したサッカー史です。
 事件当時2007年4月、川崎フロンターレの我那覇選手は、チーム内のレギューラー争いの中、体調不良(感冒、下痢)で無理をして練習した結果、水も飲めない状態となり、チームドクター(後藤医師)に相談、ビタミンB1入りの生理食塩水200mlを静脈注射してもらったことが、ドーピング違反とされ、6試合出場停止、川崎フロンターレに1000万円の罰金が科されたものでした。
 この前年、横浜FCがJ1昇格争いの中、チームドクター以外(チームドクターは断る)の外部の医者に、GKを除く先発選手にビタミン液20mlを注射してもらった(俗に言うニンニク注射)という事件があり、正当な医療行為以外で静脈注射をしたと問題になりました。
 このこともあり、Jリーグは我那覇選手に対するこの治療を正当な医療行為と当たらないと判断し、違反扱いとして処理したものでした。この判断をしたのが、Jリーグドーピングコントロール委員会の青木委員長でした。
 しかし、当時のWADA(世界アンチ・ドーピング機構)の2007年版では、「静脈内注入は、正当な医学的治療を除いて禁止」、「正当な医学的治療は使用許可申請(TUE)の提出は不要」というもので、我那覇選手の件は、世界標準からしても違反無しとされるべきものでした。
 この青木委員の暴走を止められないどころか支持した(ある種の無知)、JFA川淵キャプテン(会長)やJリーグ鬼武チェアマンが、我那覇選手の前に立ちはだかったわけです。「川淵問題」、「鬼武問題」ということかもしれません。
 これに異を唱えたJリーグ全チームドクターが、立ち上がり支援し、最終的には、スポーツ仲裁裁判所(本部スイス)まで提訴し、我那覇選手は全面勝訴したわけです。
 この裁判で我那覇選手側は、個人で3千数百万円以上の費用を負担することのなりました。これを支援した中には、宇栄原FC(4種)の先輩であり、ブルーティーダー沖縄の代表、新城氏による「ちんすこう募金」があり、現在もこの活動を続けられているということです。
 しかし、JFAやJリーグは、我那覇選手や川崎フロンターレ、後藤医師には、直接謝罪もしなければ、裁判費用の弁償もしていないのです。官僚的な巨大組織の立ち向かった勇気は並大抵ではなかったと考えます。
 この謝罪を行うことこそが、JFAやJリーグ史の新たなページを記すことになると思うのですが。

 なお、この本の収益の一部は、我那覇選手のスポーツ仲裁裁判所(CAS)費用に充てられるとのことです。

 重たい本ですが、サッカー史に興味がある方は、一読を!


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