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会津の旅人宿 地域との交流・旅人との交流が盛んな【会津野】宿主ブログ

地域の話題、旅人のホットな話題、季節のおいしい食べ物の話題など、会津へ旅する人々への話題中心の宿主ブログです。

【会津野】書籍「ニッポンの海外旅行」

2017年01月31日 | 宿主からのブログ

おはようございます。旅人宿 会津野 宿主の長谷川洋一です。

ドミトリーを持つ宿屋を運営している私にとり、最大級に刺激的な本を読みました。

「ニッポンの海外旅行」(山口誠著)です。

1957年から2010年までの50数年間における、日本人の海外旅行の推移を追っている内容で、特にバックパッカーの旅行スタイルと「地球の歩き方」などのガイドブックの影響を、時代背景とともに論じているものです。

少々長くなりますが、気になった文章を引用します。

★ ★ ★

「買い・食い」行動を前に押し出してきた「歩かない」個人旅行が、長い独走の果てにたどりついたのは、旅先の日常生活が伝えてきた歴史や文化から切り離され、お金を介した消費行動だけで辛うじて接点を持つ「個人旅行」が「孤人旅行」と化した、脱文脈化する海外旅行の現状である。

「歩く」旅の系譜は、このまま途絶えてしまうのだろうか。いま、フロンマー(*)の節約旅行の復活を唱えれば、若者たちは海外旅行の魅力を再認識して、再び旅立つのだろうか。おそらく1970年代まで盛んにおこなわれていた長期・低予算・周遊の「歩く」旅をそのまま現在に復刻しようと試みても、それこそ歴史的文脈が異なるため、うまく機能しないだろう。必要なのは、「歩く」旅の可能性を模索して、現在の文脈において実現が可能な海外旅行のかたちとして提案することである。

ガイドブックを回路とした真似と追体験の循環は、新しい旅行のかたちを広めると同時に、さまざまな文化を醸成する推進力となってきた。真似と追体験の旅行は、常に退屈で貧しい体験だけを提供するとは限らない。それは後世へつなげる文化の土壌を背性する重要な実践の場にもなりうる。

文化とは、博物館や学校などで保存され、教えられる過去の知だけではない。さまざまな人々がそれを生き、日常生活において実践していくことで編み成され、伝えられていく社会的文脈の結晶体である。そうした文化を生き、編み成していく主体になる実践の一つとして、いまも旅行は、貴重な価値を有すると考えられる。

脱文脈化する「買い・食い」中心の短期旅行だけでは、今後も日本の海外旅行は衰えていき、やがて海外旅行の歴史も失われてしまうだろう。歴史と文化が循環する回路としてのガイドブックの可能性は、「歩く」旅の可能性を同じく、いまだ尽くされていない。

(*)「ヨーロッパ一日5ドルの旅」アーサー・フロンマー 1957

★ ★ ★

この著書は、日本から海外へ向かう人々のこと(アウトバウンド)を論じていますが、インバウンドで外国人客を受け入れることにも充分応用出来そうです。

著者は、1990年代より出現したインターネットによる旅行ガイドについても言及しています。ネット投稿などの口コミは、ガイドブック「地球の歩き方」創刊時に使われていた投稿スタイルの編集様式と、変化はないと言います。

つまり、この分野はネットでも、リノベーションされていません。

「歩く」旅の本質である、点と点をつなぐ線あるいは面としての旅は、現代ではほとんど失われてしまい、面に対しての口コミは存在すらしません。

長い年月をかけ、面を楽しむバックパッカーも消え失せ、そのガイドも書物から消え、ネットには存在しない。

しかし、過去から脈々と続く「人の営み」である日常生活は続く。

誤解を恐れずに言えば、「買い・食い」は、「お土産屋」と「飲食店」を点として商品提供するだけの観光ということ。

「面としての観光」には、口コミ投稿を含めた書物を、現代風にリノベーションする必要があるということ。人々には、そこを「歩いて」もらう必要があるのだ。

日本遺産となった「会津三十三観音」は、やっと点としての情報集約がはじまったばかり。会津で生きる我々は、これを面として情報提供し、人々が「歩く」ことを促すことが使命だろう。

伊勢神宮参拝などの「講」は、もともと日常生活を脱することを付随の目的として行われてきたもの。そこに、現地の日常生活を含んだ「面」を構成させる。旅人の持つ日常生活と、旅先での日常生活は違うものだから、その対比を強調させることが、リノベーションのポイントなのかもしれない。

「講」や「巡礼」などを目的とする旅行者実数は、1990年末期にはじまったバックパッカーの衰退と反比例し、確実に伸びています。このあたりも、この書籍はしっかりと分析されています。

この本は、私にとって、ものすごく刺激的な内容でした。

今日も素敵な一日を過ごしましょう。

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【会津野】短大生の卒業研究

2017年01月30日 | 宿主からのブログ

おはようございます。旅人宿 会津野 宿主の長谷川洋一です。

会津大学短期大学部では、webサイトを使って卒業研究の一部を公表しています。

2015年のものをみると、「小水力発電を身近に」や「奥会津・只見線沿線エリアの活性化デザイン」というように、地域課題に取り組んだものが多い。

昨晩は、地域の短大生による卒業制作映画を観てきました。

「新富座~娯楽は俺らの相棒だった~」というドキュメンタリー映画です。

新富座とは、昭和40年代まで会津高田の街中にあった劇場で、いまでもその建物は残り、今回の卒業制作映画上映は、その新富座にて行われました。

昭和レトロな雰囲気を持つ劇場は、使われなくなって久しいですが、かつては相当にぎわったようです。町の人々がつめかけては、演劇や映画を楽しんでいる様子が伝わってきます。

昭和30年代の世相を映すNHKライブラリーの影像と、新富座周辺の様子を対比しながらストーリーが綴られていました。

こういった無形の民俗的なものは、なかなか文献で残ることも少ないものの、その地域の行動様式が体系だって理解できる優れものです。

劇場近くでは、芝居や映画を引けた後に人々が立ち寄る食堂や居酒屋が夜10時くらいまで営業していたなど、いまのさびしい商店街では考えられないような生活風習もあったようです。

2009年のハワイ島の映画館を舞台とした映画「ホノカアボーイ」と、昨晩のドキュメンタリー映画が私の頭の中でダブりました。

「ホノカアボーイ」ならぬ日本版「タカダボーイ」(「タカダガール」でもいいかもね)のような若者が誕生したら、超おもしろそう!

このような人々の気持ちを集める装置が平成29年のいま、まだ残っている会津高田って、なんだかすごいなと正直に思います。

こういう「資産」と「地域起こし」を結びつけて活用することが、求められているのでしょうね。

今日も素敵な一日を過ごしましょう。

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【会津野】書籍「愛国消費」

2017年01月29日 | 宿主からのブログ

おはようございます。旅人宿 会津野 宿主の長谷川洋一です。

2016年夏頃、シェアハウスに関する本を読みまくりました。そこで出会った消費社会研究家の三浦展さんの書籍で、積読(つんどく)になっていたのが、「愛国消費」(三浦展著)です。この度、目を通してみたら、興味深く、あっという間に読み終えてしまいました。

もっとも興味を感じたのは、「『世界を探す旅』『自分を探す旅』から『日本人を探す旅』へ」というところ。

ここでは、社会学者山口誠さんの「ニッポンの海外旅行」という書籍を引き、1960年代の「海外を探す旅」から、1980年代の「自分を探す旅」を論じ、1990年以降は、どこへ旅しても理想郷はないということを知ってしまった人々を描写します。その結果、「個性という様式でアイデンティティを追及することよりも、集団的アイデンティティを前提として出発する『日本人探し』」の時代がはじまったと導きます。

この書籍は2010年12月の出版なので、2011年の311直前の評論です。311では明らかに社会の様子が変わりましたが、このあたりの個人の行動様式(エートス)は、あまり変わっていないような気がします。

また、経済学者中谷厳さんの言葉を引き、新自由主義とグローバル化は、個人と国家しか想定していないと言います。そこには、個人と国家の中間にあるべき、固有の歴史を有し人と人とがつながりを持つ「社会」への視点が決定的に欠けているとも言います。

この言葉からは、311で、NPOなどの中間支援組織の重要性が認識されたことを思い出します。

2017年のいま、海の向こうでは、トランプ大統領誕生により、新自由主義とグローバル化に反する勢力の台頭が顕著になってきました。アメリカファーストの言葉に代表されるように、反グローバル化の風潮がはっきりとしてきました。

では、日本ではどうなのでしょう。古民家を大事にする風潮や、友達や家族を大事にする風潮がより力を増してきていると私は感じます。

これは、311前からの大きな流れであるでしょう。

戦後、日本はずっとアメリカの後を追いかけてきましたが、この風潮に関しては、アメリカに先行していたようです。

「日本人的なことを探す旅」、この先もまだまだ続きそうです。

今日も素敵な一日を過ごしましょう。

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【会津野】書籍「マックス・ヴェーバー入門」

2017年01月28日 | 宿主からのブログ

おはようございます。旅人宿 会津野 宿主の長谷川洋一です。

昨日は、こんな本を読んでいました。

「マックス・ヴェーバー入門」(山之内靖著)です。

昨年から、会津出身の社会科学学者小室直樹先生の本を読んでいるのですが、その中でよく登場するのが、ドイツの社会学者マックス・ヴェーバー。登場する場面は、エートスについて語るところが多い。このエートスは、日本語では「行動規範」と訳されるけれど、これだけではあまり良くわかりません。そこで、このエートスについて深く考えたマックス・ヴェーバー自身の著書を読み解いたものを読もうと思ったのがきかっけで、この本を読んでみました。

マックス・ヴェーバー自身は、超難解な書物を残していて、それはとてもハードルが高い。そこで、題名から選んだのがこの本。

実際読んでみると、「入門」とはいえど、東大卒で東京外国語大学名誉教授の作者の書物は、やはりハードルが高い。

読み終えても、「にゅうもん」の「に」の字に達したかどうかという状況です。

2011年の東日本大震災から、まもなく6年。原発事故からの福島復興の社会的問題点と、その前からの少子高齢化、過疎化などの社会問題がカオスのように渦巻き、現場にいる我々がいったいどんなエートスを持っているのかを認識しないと、最良の出口が見えないのではないかと、私はそう感じています。

そこで、「福島の行動規範」を知りたい。

読んだ結果として、長い道のりのようだけれど、「に」の字として、マックス・ヴェーバーが影響を受けたニーチェの思想も知らないとエートスの本質がわからないということがわかった。

巷では、「ニーチェ入門」という書物やコミックも出版されているようなので、次はそれに挑戦。

今度はカタカナの「ニ」の字で止まらないようにしなくては。。。

今日も素敵な一日を過ごしましょう。

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【会津野】超電導に興味あり!

2017年01月27日 | 宿主からのブログ

おはようございます。旅人宿 会津野 宿主の長谷川洋一です。

昨日は、久々に福島市まで出かけてきました。福島の冬は寒い。行き帰りの道も真っ白。これをなんとか利点として使えないものかと、あれこれ妄想しながら運転をしておりました。

そして、マイナス7℃の朝を迎えた会津野です。樹氷が成長しています。

さて、近頃、超電導(超伝導)に興味があります。

2012年のNEDOニュースリリースによると、200MV(メガボルト)級の超伝導ケーブルの実証実験を行っているとのこと。仮に2KA(キロアンペア)の電流を流せるとすれば、400GW(ギガワット)=4億KW(キロワット)という、とてつもなく大きな電力を送電することができる。ちなみに、2KAという電流は、同じNEDOの別のニュースリリースで66KVx2KAの実験にすでに成功しているから、実現可能な電流値だ。

水力発電銀座であるJR只見線沿線の水力発電所や地熱発電所を調べてみると、全部足しても140万KWの発電能力。4億KWまでは、まだかなり余裕がある。

最初のニュースリリースには、カバーに包まれた超電導ケーブルの写真があります。案外小さなもので、線路の脇に設置することくらいできそう。

超電導は、マイナス273℃(絶対零度)で金属の電気抵抗がゼロになる現象だけれど、安全で安価な液体窒素で冷やせる限界のマイナス196℃より高い温度でも超電導となる金属が、もうすでに発見されている。

もともと寒冷地である只見線に、マイナス196℃に冷やした電線を線路脇に置き、超ローカル線で超先進的技術を使った送電を行う。夢ですねぇ。

上下分離が決まった只見線ですが、これは線路が地元自治体の持ち物となるという意味。線路脇くらい、地元で自由に使ってもよかろう。

現在の送電線の送電損失は5%程度と言われているので、只見線沿線だけでも7万KWの損失がある。

この損失をなくし、販売できるとしたら、超電導ケーブルを超長い形の土地を持つ赤字ローカル線に敷く投資をしても、十分なメリットがあると思う。

青函トンネルや上越新幹線の線路脇には、すでに既存の送電線がひかれているので、技術的にも十分可能だよね。

これで、寒いところの利点と、その具体的利用がつながった。

これは福島県の掲げるスローガン。

うーん、やりたい。。。

今日も素敵な一日を過ごしましょう。

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