おはようございます。旅人宿 会津野 宿主の長谷川洋一です。
【会津野】JRの只見線復旧を考える(1)にて、線路の張り替えにどの程度の材料費がかかるか見てきました。
今日は、会津川口から只見の間の歴史から見ていきましょう。
「只見線敷設の歴史」(一城楓汰著)に詳しい記述があります。
この区間は、昭和31年(1956)1月31日の閣議決定により、電力開発を目的としている会社である電源開発株式会社が、会津川口までの会津線(当時の会津若松から会津川口までの区間は会津線と呼ばれていた)を田子倉ダムまで延長する専用鉄道を建設することとされました。専用鉄道とは、わかりやすく言えば貨物線ということです。閣議決定では、具体的に以下のことを示しています。
・会津川口から只見の間は、田子倉ダム完成後に専用鉄道を廃し、国鉄に編入する。
・ダム建設専用のため、鉄道として許容される簡易な規格で建設を行う。
・軌条や橋桁などは、中古品でも構わない。
・降雪や落石による災害防止策は含まない。
・仕様変更の場合は、さらに6.7億円の増額が必要である。
このような基準で建設が始まり、ダム建設用の貨物線としてスタートしました。
ダム建設が終わり、国鉄へ譲渡したのは、昭和37年(1962)3月31日のこと。3億6千万円で国鉄が買い取りました。
それから、只見線として運行がはじまったのです。
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さて、中古品を使って作られたこの区間は、くしくも平成23年夏の豪雨災害で大きな被害を出します。
災害当時、目視してすぐにわかる橋の損傷は、第5只見川橋梁、第6只見川橋梁、第7只見川橋梁、第8只見川橋梁で、第5と第6、第7の3つは、無残にも川の中に鉄橋が落ちている様子がよくわかりました。
鉄橋の架け替えにどの程度の費用がかかるかは、予想が難しいですが、参考になるものとして、兵庫県香美町のホームホームページに山陰本線の余部鉄橋を現在架けるとすると概算で42億円の費用がかかるとあります。この余部鉄橋の長さは310.7m、高さは41.5mのものです。
では、損傷のあった4つの橋をみていきます。
第5只見川橋梁は、長さ191.3m。鈑桁と呼ばれる橋の平な部分が側に落ちています。
第6只見川橋梁は、長さ160.75m。中央部のトラスと呼ばれる橋を支える構造が丸ごと落ちています。
第7只見川橋梁は、長さ164.0m。ここは、橋のほとんどが落ちています。
第8只見川橋梁は、長さ359.4m。ここは落橋は免れたものの、前後の路盤が損傷しており、大規模な土木工事が必要そうです。
この4つの橋だけで、総延長が875.45mあります。余部鉄橋とは単純に比較できないものの、余部鉄橋の42億円を超える費用がかかるだろうなと思うところです。
費用を削減するために、開通当時のように中古品を使うのは、また同じことが繰り返されることが払しょくできないだろうから、できそうもありません。
見積もりとして出てきた81億円の復旧費用のうち、この4つの橋だけでその半分以上を超えてしまいそうです。
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隧道(トンネル)については、本名隧道(1452m)、橋立隧道(739.9m)、高根沢隧道(116m)、滝隧道(1615.2m)、蒲生隧道(352m)の5ヶ所があります。
ここは被害がなさそうです。点検と、経年劣化による補修程度だろうと思います。
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3億6千万円で国鉄時代に買ったものを、81億円かけてなおす。こういうことが現実として行われます。
今回は、上下分離方式として線路と駅は自治体に譲渡し、その管理は自治体がすることになります。線路の管理ということは、雪崩防止や落石防止フェンスの設置などもしなければなりません。ただ、これは復旧費用ではないでしょうから、新たな費用負担については心配なところです。
さらに、除雪作業はフツウ管理者が行うものです。自治体が雇う除雪オペレータ(運転手)と、線路を走る除雪車も用意することになりそうです。
つまり、道路管理と同じことをしなければならないでしょう。
私が心配してもはじまりませんが、3ケタ国道のような県が管理する国道の特殊事例として、国道1001号線のようなことにできないのだろうかと、思考実験をしているところです。だって、階段国道のように、ヒトが歩くことしかできない国道もあるのだから、列車しか走れない国道があっても良いと思うのです。国道252号バイパスでもよいでしょうか。
妄想っぽくなりましたが、前途多難な只見線です。
今日も素晴らしい一日を過ごしましょう。
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