弁護士早瀬のネットで知財・法律あれこれ 

理系で特許事務所出身という経歴を持つ名古屋の弁護士があれこれ綴る雑記帳です。

特許権侵害の判断手順3

2014-09-24 19:45:49 | 特許

台風(本日の朝、温帯低気圧に変わったようですが)のおかげで、名古屋は久々の雨。

今回の台風の進路変更は、なんともえげつないですね。

偏西風のせいとはいえ、この時期の台風は必ず日本に近づくようになっているんだなあと、改めて実感した次第。

 

さて、特許権侵害の判断手順について、昨日までに、

・第1段階で、特許発明の内容を把握し、

・第2段階で、対象製品が特許発明の構成要件に該当するかどうかを判断する、

というところまで書きました。

今日は、その続きとなる第3段階(実質的な判断)です。

 

昨日説明した第2段階の判断において、対象製品が、特許発明の構成要件の一部でも該当していないということになると、この第3段階の判断が必要となります。

ここでは、形式的には発明の要件に該当しなくても、実質的にはどうなの?ということを判断します。

 

例えば、昨日と同じ「Cheeza」を使って説明すると、

特許発明の構成要件は、

A: 少なくとも1つの孔を有し、

B: チーズと最大膨潤力30以上の澱粉を主成分とし、さらにトレハロースを含み、

C: 厚みが6mm以下、

D: かつ、全ての孔の面積の合計が焼成後の面積に対して3%~50%の範囲内にあり、

E: チーズが固形分として前記澱粉100重量部に対し45~150重量部含まれる、

F: 焼き菓子。

というものでした。

 

ここで、トレハロースの代わりに砂糖を用いた場合はどうでしょう?

昨日説明した第2段階の判断では、以下のようになります。

 砂糖とトレハロースは違う物質

 → 構成要件Bでは「トレハロースを含み」とある

  → 構成要件Bに該当しない

   → 非侵害

 

でも、考えてみると、トレハロースも砂糖も同じ甘味料だし、トレハロースと砂糖は相互に代用品として使われることも普通にある。

それなのに、砂糖を使ったら侵害しないとするのはちょっと酷くない?というのが、そもそもこの第3段階の判断をする理由です。

 

そこでは、発明の内容を詳しく説明した書類(明細書)、特許権として許可されるまでの経緯、技術常識等、いろいろな要素をもとに検討します。

 

「Cheeza」に関する特許の書類をみると、「砂糖を使っては色味もチーズ風味もでない。」と書かれています。

つまり、権利者の江崎グリコ自身が、どうやら「砂糖」の場合は権利範囲外ですと宣言してる。

それならば、トレハロースを砂糖に変えたものは特許権を侵害しないと言っていい、という最終結果が得られます。

 

んー、こうしてみると、なんだか簡単なようですね。

でも、それはあくまで、説明しやすくわかりやすくなる例を設定しているからなので、通常は、こんなにホイホイと簡単に判断できるわけではなく、かなり専門的な判断が伴います。

※ もちろん、昨日の第2段階の判断でも、場合によっては議論の分かれる難しい判断が求められることもあります。

 

 

以上、3回にわたって、特許侵害の判断手順について説明してきました。

特許って、とっつきにくく、難しいものと思われがちですが、大まかな概要については、多少なりともわかっていただけましたでしょうか?

 

ポチッと,クリックお願いします!
   ↓↓↓↓↓↓↓   
    にほんブログ村 経営ブログ 法務・  知財へ

法律事務所と特許事務所が、AIGIグループとしてタッグを組んでます。
それぞれのページをぜひご覧ください!

  ★あいぎ法律事務所(名古屋)による知財・企業法務サポート

 ★あいぎ特許事務所
    商標登録に関する情報発信ページ「中小・ベンチャー知財支援サイト」もあります


最新の画像もっと見る