弁護士早瀬のネットで知財・法律あれこれ 

理系で特許事務所出身という経歴を持つ名古屋の弁護士があれこれ綴る雑記帳です。

地理的表示保護制度

2015-03-27 21:30:40 | 知財一般

地理的表示保護制度という,新たな地域ブランド保護の仕組みができます(今年6月開始予定)

これは,「地理的表示法」という法律に基づくもの。

 

地域ブランド保護といえば,これまで,商標法において,地域団体商標という制度がありました。

地域団体商標によって保護されている地域ブランドは,今年1月13日現在で,581件にのぼります。

名古屋近辺でいえば,「松阪牛(まつさかうし)」(三重県),「蒲郡みかん」(愛知県),「下呂温泉」(岐阜県),「市田柿」(長野県)などです。

地名と商品等の普通名称とがセットになっている商標について,地名との結びつきが強い等の要件を満たせば,商標登録されます。

商標なので,経産省傘下の特許庁の管轄です。

 

 

これに対し,地理的表示保護制度というのは,農水省の管轄。

なので,対象となるのは農林水産物。

地理的表示保護制度なら,地域団体商標の制度でカバーできないところをカバーできると,制度の開始にあたって,農水省が意気込んでます。

 

 

この地理的表示保護制度,地域団体商標とちがって,どういうメリットがあるのか?

 1 商標制度では,商品等に関する統一的な品質管理ができない(地域団体による自主管理しかない。)

   → 地理的表示なら,登録時に品質基準も申請し,それに合っているが国がチェックしてくれる

 2 商標権の場合,侵害者に対し,権利者自身が対処しなければならない

   → 地理的表示なら,表示を不正に使用する者を国が取り締まってくれる

といったもの。

 

理的表示として登録されると,国が主体となってブランド保護に取り組んでくれるので,確かにメリットありますね。

 

それなら,地域団体商標なんていらんのでは?という話もなりそうですが,そういう話にはなりません。

農水省が管轄になっているように,地理的表示の対象となるのは,農林水産物に該当するものだけ。

純粋な農林水産物だけでなく,その加工品も含みますが,お酒,温泉,牛そのものは対象になりません。

申請主体も,地域団体商標の場合は商工会や協同組合であるのに対し,地理的表示は生産者団体という点で違いがあります。

だから,地域団体商標制度が無意味になることはありません。

 

とはいえ,地理的表示保護制度って,地域団体商標とかぶるので,特許庁は面白くないでしょうね。たぶん。

経産省への対抗から農水省が考え出した制度なのかという気もしますが,国際的な枠組みの中でできている制度です。

例えば,イタリア料理を食べに行くとよくある「パルマ産生ハム(プロシュート・ディ・パルマ)」は,EUで地理的表示として登録されています。

 

せっかくできた制度なので,農林水産物の地域ブランド保護を考えている場合は,利用してみてもいいかもですね!

 

 

 

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卒業ソングの著作権

2015-03-20 16:37:50 | 著作権

卒業式のシーズンです。

 

ちょうど4年前になりますが、20代前半の卒業生たちに交じって、卒業式を久しぶりに経験しました。

ロースクールの卒業式です。

卒業生代表で出てくれと頼まれて出席したのですが、ロースクール卒業生の自分だけ、マントと角帽のスタイル。

修了証をいただくために登壇すると、後ろの方から、「おぉ~」という声が。

なんとなく気恥ずかったですけど、30代後半になって経験した卒業式も今となってはよい思い出です(^^)

 

さて、卒業式ソングについてです。

先日、土曜日午後11時からNHKで放送している「SONGS」を見たら、卒業ソング特集をやってました。

 

 森山直太朗さんの「さくら」 

 アンジェラ・アキさんの「手紙~拝啓 十五の君へ~」

 松任谷由美さんの「卒業写真」

 

どれも、中学生や高校生が一緒に歌ってました。

僕らの中高時代にも卒業定番ソングはありましたが、卒業式で歌うのでは、せいぜい「仰げば尊し」くらいだったような…

最近では、上記のような定番ソングを卒業式でも歌うようになってきたんですね。

 

これを著作権の話と結びつけます。

 

「仰げば尊し」のような作者不明の古い歌は別ですが、定番卒業ソングには著作権があります。

曲には作曲者の著作権が、歌詞には作詞家の著作権がある。

 

そうすると、卒業式のような公の場で曲を流して生徒たちが歌っても大丈夫なのか?

 

これはOKというのが結論。

卒業式は、非営利・無料・無報酬で行われるので、著作権(上演権)の侵害とはなりません。

 

では、生徒たちが歌っている姿を親たちがビデオで撮影することはどうか?

曲や歌詞を録画して複製していることになりますが、家庭で視聴する範囲の私的使用ならこれもOK。

ただ、学校が撮影して、生徒や親たちに配布するのはNGでしょうね。

 

ちなみに、卒業式だけでなく、学芸会とか学校祭などで歌ったり演奏したりする場合も、同じようなことが言えます。

著作権って、日々いろんなところにからんできますね。

 

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特許法と不競法の改正 閣議決定

2015-03-17 17:41:39 | 特許

前回,特許法の改正について触れました(→ こちら)。

その翌々日(この前の金曜日)に,どうやら改正案が閣議決定されたようです。

 特許法改正に関する経産省のニュースリリース → こちら

 

 

併せて,不競法の営業秘密に関する改正案も,同じ日に閣議決定されました。

 不競法改正に関するニュースリリース → こちら

不競法の改正に関しても,以前,このブログでも触れました(→ こちら)。

ちなみに,先日,東芝の営業秘密をSKハイニックスに漏らした件で判決がありましたが,執行猶予なく,実刑でしたね。

 

 

どちらの改正案も,審議会から事前に出された答申に沿った内容となっています。

 

 

職務発明に関して,特許を受ける権利の会社帰属の点,

改正案の条文を見ると,特許を受ける権利は,自然人である発明者自身に帰属するという原則はそのままです。

契約や勤務規則等の定めがある場合に限って,発明したのと同時に会社に帰属するという形ですね。

 

 

不況補改正に関しては,罰則の強化と,相手が営業秘密を使用したという事実の立証負担の軽減が柱です。

情報が営業秘密であると認められる要件の秘密管理性については,従前のまま。

 

なので,緩い管理でも営業秘密になるという話ではありません。

引き続き,情報の管理は重視する必要があります。

 

 

幸い,管理指針が改訂され,ページ数も少なくなって多少はとっつきやすくなっているので,参考になりますね。

 

職務発明や営業秘密に関して疑問点等がありましたら,あいぎ法律事務所にご相談ください!

 

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職務発明規定 改正へ

2015-03-11 23:27:35 | 特許

ノンアルコールビールに関するサントリーの特許をめぐり、アサヒビールとガチで争うみたいですね。

  「ノンアル特許侵害」サントリーがアサヒを提訴(YOMIURI ONLINE)

アサヒビール側は特許は無効だと主張するようです。

特許等の侵害訴訟では、被告側の抗弁としてよく主張されるものです。

結果がどうなるか、興味ありますね。

 

さて、職務発明規定に関する改正案がまとまったようです。

今の通常国会で成立を目指すとか。

今年の1月に、経産省の審議会がまとめた検討結果が公開され、制度見直しが提言されました。

改正案も、概ね、この提言に沿ったものとなると思われます。

 

提言では、改正の方向性として、大きく3つの柱が打ち出されています。

 

1 発明へのインセンティブ付与の法定

まず、会社に対し、発明に対する報いとなる経済上の利益(金銭以外のものを含む)を従業員に与える義務が課されます。

会社の義務として条文に明記されることと、利益には金銭以外も含むとされていることがポイントですね。

 

2 職務発明に関する「特許を受ける権利」は、会社帰属

職務として行った発明に関して、「特許を受ける権利」は会社帰属となります。

いろいろ議論されてきましたが、上記のインセンティブ付与とセットで、落ち着くところに落ち着いた感じですね。

ただ、従来通り、従業員帰属とすることも、それを希望する場合は可能です。

そういうニーズもあり得るからです。

3 発明へのインセンティブ付与に関するガイドライン

上記のように、特許を受ける権利を原則会社帰属とし、その報いとしての利益を従業員に与える、と法律が改正されたとしても、会社としては、実際どうやって制度化すればいいの?って話にはなります。

知的財産部に何十人もいるような大きな会社なら、なんとかなるのかもしれません。

でも、知財担当者が数人ですとか、知財専門の担当者はいません、というような会社だと、仕組み作りに困ることは現実問題としてあります。

それを想定して、政府が会社と従業員との調整に関するガイドラインを策定するようです。

 

今後、閣議決定や国会での審議となれば、具体的な改正案が公表されます。

また、ガイドラインも、改正法の施行前には公表されるはずですし、特許庁主催の研修会も開催されるかもしれませんね。

私も、職務発明の改正に伴ったセミナーをぜひ開催してみようと思います!

 

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弁理士会での研究結果発表

2015-03-06 22:35:14 | 特許

弁理士登録してもうすぐ1年になります。

この1年目の今年度,弁理士会東海支部の特許委員会に所属しました。

昨年の7月から月1回の活動で,特許明細書の記載不備(特許法36条)に関する裁判例を研究してきました。

昨日はその研究成果の発表会。

聴衆は50人程度の弁理士の方々です。

 

発表会は,委員各自が担当した裁判例を発表するもので,私も発表してきました。

担当した裁判例は,知財高裁平成20年(ネ)10013号です。

やや古いですが,記載不備(特許法36条)の判断がされた侵害訴訟案件に絞ると,これでも比較的新しい裁判例です。

せっかく担当した案件なので,このブログでも,どんな裁判例だったのか取り上げようと思います。

 

さて,本件は特許権侵害訴訟の案件です。

クレーム(特許請求の範囲)の記載の明確性(特許法36条6項2号)が問題となりました。

記載が不明確であるから特許は無効と判断されてしまい,それだけで原告の請求が棄却されてしまったというものです。

 

では,何が不明確とされたのか?

 

原告が持っていた特許は,「遠赤外線放射体」(遠赤外線を放射する性質を持つセラミックス)に関するものです。

この遠赤外線放射体をどうやって作るかが特許になっていて,素材となる粉末材料の「平均粒子径」が10μm以下であることが発明要素となっていました。

 

ここで,「平均粒子径」というものの技術的意義は様々です。

ミクロン単位以下の細かな粒子というのは,丸い形ではなく凸凹していていびつです(目に見えないレベルでの話ですが)。

そうすると,粒子の直径というものは測れないので,ふるいにかけたり,レーザー光をあてたりと,いろんな測定方法で物性値を調べ,そこから粒子の径はこのくらいと計算して求めます。

それを平均したものが平均粒子径です。

測定方法によって数値も変わります。

なので,粉末の平均粒子径が何μmという数値があっても,それがどういう測定方法によるのかが分からないと,どんな粉末なのかよくわからないという状態になってしまう。

 

ところが,上記の案件では,その「平均粒子径」の意義が,明細書という発明を説明する文書に何も書いてなかった。

そのため,発明を理解できる程度の記載がないとして,不明確と判断されてしまいました。

原審の大阪地裁でも同じような判断がされていて,知財高裁でも覆りませんでした。

 

というわけで,発表では,

一つの用語について,様々な定義や意義があるという場合には,きちんと明細書中で説明する必要がありますね,

という話をしてきました。

 

粉末材料を買ってきて製品を作るような場合,その材料購入先は,物性値として,平均粒子径が〇~〇μmと公表している。

こういう場合,買ってきたものなので,「平均粒子径」がどういう方法で測ったのか知りません,という場合もあるかと。

でも,平均粒子径の物性値を発明の特徴としてクレームに記載するのであれば,やはりどういう方法で測定したのか,きちんと明細書で説明すべきということになります。

 

最近公開される公報を見ると,平均粒子径についてきちんと説明されている例が多いので,この判例紹介も今更感があるかもしれませんけどね。

ちなみに,高分子化合物の平均分子量だとか,表面粗さ等では,平均粒子径と同じことが言えると思います。

 

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