弁護士早瀬のネットで知財・法律あれこれ 

理系で特許事務所出身という経歴を持つ名古屋の弁護士があれこれ綴る雑記帳です。

サルが自撮りした写真と著作権

2014-08-29 15:07:41 | 著作権

8月も終わりに近づき,もう9月が目の前。昨晩はずいぶん涼しかったように思います。

 

さて,このところ,サルが自撮りした写真の著作権が話題になっていますね。

先日あった弁護士同士の私的な知財勉強会でも,このことが小ネタとして話題になりました。

 

記事(自撮り写真もここに載っています。)によれば,イギリス人の写真家が,インドネシアで,写真機材をセットしたところ,クロザルが自撮りを始めたとのこと。表情豊かでとてもユニークな写真ですね。

Wikipediaが写真を勝手に掲載したため,写真家がWikipediaに対し,著作権は自分にあるとして,写真の削除や使用料の支払いを求めたという点で問題になっています。

写真家さんは,自腹でインドネシアまで行き,写真機材を準備したのも自分なのだから,著作権は自分にあると主張しているようですね。

 

でも,シャッターを押しているのはサルなので,準備行為をしただけの写真家さんに,写真の著作権が認められることはないですね。残念ながら。

著作権が発生する「著作物」というのは,「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号)と定義され,人間の精神活動の成果といえることが要求されており,シャッターを押したサルは人間でないからです。

一方,写真家さんといえば,撮影の準備行為をしただけでシャッターを押していないので,写真の創作行為をしていません。準備行為も大変なんだという気持ちはわかりますが,法的には,そこは著作物性を認める要素とならないんですね。

結果,サルが自撮りしたこの写真は,著作権フリーの素材となります。

 

アメリカの著作権局が最近発表した実務概要第3版(compendium of u.s. copyright office practices third edition)のドラフト(草案)でも,

「The Office will not register works produced by nature, animals, or plants.」

として動物等による作品は著作権登録の対象としない,と書かれています。

そして,今回の問題を意識したのかどうかわかりませんが,著作権登録の対象とならない一例として,「A photograph taken by a monkey」が挙げられていますね。

 

で,これまた面白いよねぇと,勉強会でも話題になったのが次の一文。

「although the Office may register a work where the application or the deposit copy(ies) state that the work was inspired by a divine spirit.」

登録申請書等に,神霊に導かれた作品であると述べられていれば登録する場合もあそうです。

 

ある先生いわく,キリスト教の国らしいなと。

確かに,こういう宗教(キリスト教)的な発想は,今の日本では考えられないですね。

 

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「STAND BY ME ドラえもん」観てきました!

2014-08-28 17:03:51 | 日記

おとついのブログで,AKB48の楽曲データが事案となった判例について書いたときのこと。

このブログにたどり着く検索ワードのトップは,なんと「AKB48」。いやー,「AKB」の力はすごい(笑)

 

で,今日は昨日までと違って,映画を観てきましたというだけのユル~いお話。

 

映画は好きなので,仕事帰りのレイトショーを利用して,たまに映画を観ます。

事務所のある名古屋駅は,映画館もあってちょうどいいのです。

 

先日観てきたのは,「STAND BY ME ドラえもん」の2Dバージョン。

これ,結構ヒットしているみたいですね。レイトショーでも,結構観客がいたし,それも大人ばかり。

映画の公式サイトの雰囲気からして,大人向けに製作されたようなので,目論見通りという感じでしょうか。

 

「いっしょにドラ泣きしません?」というキャッチコピーのように,泣くほどのことはないような…。

ドラえもん世代の僕としては,知っているエピソードばかりだからかな。あとはもう少し,のび太の優しさがわかるエピソードがあると,なおよかったかなと。

でも,ものすごーく懐かしかった。主題歌(秦基博「ひまわりの約束」)も映画のストーリにピッタリでしたね。

 

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匿名の権利侵害者にどう対処するか③

2014-08-27 17:40:48 | 知財一般

昨日,ファイル共有ソフトで楽曲データが自由にダウンロードできる状態になっている事案に触れましたが,今日は,もっと一般化してみようと思います。

商標権,著作権,パブリシティ権等を侵害する商品がネット上で販売されていたり,著作物がネット上で勝手にコピペされて使用されている,といった場合にどうするかという感じに。

 

① 該当ページの削除

まず必要なのは,該当ページが削除されること。削除されれば,とりあえず侵害行為が止むからです。

この場合,相手が不明でも,サイトの管理者・運営者に任意の削除を求めます。サイトの利用規約では,商標権や著作権の侵害行為を禁止しているのが通常なので,権利侵害が明白であれば削除に応じてくれるでしょう。

仮に削除請求が拒否された場合は,削除を求める法的手続を取らざるを得ません。

 

② 相手の特定

これまで書いてきたように,相手に損害賠償請求するには特定が必要です。刑事告訴する場合も,相手が特定されている方が受理してくれる可能性は高まると思います。

相手が事業者の場合,通常はサイトに情報が載っているため特定は簡単ですね。

でも,例えばヤフオクで個人が侵害品を出品していたり,匿名ブロガーが著作物をコピペしていたりした場合はどうするか?

昨日の事案のように,監視システム等を通じてIPアドレスが判明すればよいのですが,それもわからない場合です。

 

この場合,まずは,サイトの管理者・運営者に対してIPアドレスと投稿日時の開示を求めることから始めなければなりません。

まずは任意での開示を求めます。こちらのサイトには定型の書式が載っています。

権利侵害が明白であれば,開示してくれる可能性がありますが,開示してくれないなら,開示を求める法的手続が必要です。

 

次に,IPアドレスが判明すれば,そこから接続プロバイダを調査し,接続プロバイダに対して,当該IPアドレスで発信者した者の情報を求めます。

ここでも,まずは任意の開示を求めるわけですが,開示しれくれないなら,昨日の判例の事案のように,開示を求める法的手続が必要です。

 

ちょっと面倒ですが,こうやっていくつも手順を踏まなければなりません。

 

 

ちなみに,開示を求める場合は,できるだけ早く手続をする必要があります。

IPアドレスは随時変更されるため,時間が経過すると,接続プロバイダ内での記録が削除されてしまい,発信者を特定できなくなってしまうからです。

早め早めの対応が重要です!

 

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匿名の権利侵害者にどう対処するか②

2014-08-26 14:45:59 | 知財一般

昨日,発信者情報開示請求は著作権や商標権の侵害事案にも使えると書きました。

今日はその続き。

 

裁判所の判例データベースを見ると,東京地裁でなされた発信者情報開示請求事件の判決文がたまに掲載されます。

データベース上での数は少ないですが,事案としては,著作権侵害,商標権侵害,不正競争行為の例があり,中でも著作権侵害の案件がほとんどです。

 

最近載ったものでは,同じような事案が連続していました。

レコード製作会社(キングレコード,ユニバーサルミュージック,ポニーキャニオン等)が原告となって,接続プロバイダ(KDDIやソフトバンクBB)に対し,発信者情報の開示を求めた事案です。

どうやら,誰かが,AKB48の楽曲(「大声ダイヤモンド」←知らない(-_-;)),その他の楽曲を複製してパソコンのハードディスクに保存し,ファイル交換ソフト(Gnutella)を使えばその楽曲データをネット上で自由にダウンロードできる状態になっていたようです。

これは,レコード製作会社の著作権(厳密に言えば,公衆送信権)侵害となります。

軽い気持ちなのかもしれませんが,こういうことしちゃダメですね。

 

レコード製作会社としては,そのような行為をやめさせたいし,場合によっては損害賠償請求,刑事告訴をしたいと考えているのだと思いますが,いかんせん,相手がわからない。

ただ,クロスワープ社が提供する著作権の監視システムにより,相手のIPアドレスは判明していたようです(IPアドレスも不明なら,まずIPアドレスの開示請求も必要となります。)。

なので,そのIPアドレスが割り当てられている者の情報を開示せよと求めたわけです。

 

ちなみに,IPアドレスというのは,電話番号みたいなものです。

携帯電話を契約すると,契約者に番号が割り当てられるのと同じで,ネット接続の契約をすると,パソコンに番号が割り当てられます。

個人的に番号を教え合わない限り,電話番号を見ただけでは,その番号を使っている携帯電話の持ち主は誰なのかわかりません。

でも,携帯電話会社は,その電話番号を使っているのが誰なのか知っています。

それと同じで,接続プロバイダは,その割り当てられた番号(IPアドレス)は誰なのかという情報を持っているため,それを開示してほしいと求めるのです

 

接続プロバイダの側は,第三者による成りすまし等の可能性もあるとか,クロスワープ社の監視システムには信頼性がないなどと争いましたが,排斥されています。

 

このように,自己の著作権や商標権が侵害されているけど,侵害者が誰かわからないという場合には,発信者情報開示請求によって特定するという手法が使えるんですね。

 

あともう1回続く。

 

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匿名の権利侵害者にどう対処するか

2014-08-25 22:01:11 | 知財一般

昨日の日曜日,花火目当てでナガシマスパーランドに行ってきました。

ジャズドリーム内の「CAFÉ TANAKA Jazz」で,

 最近,食べ物の写真ばかり…

このイタリアン(鉄板ナポリタン 美味しい(^^))を食べ,よしっ!花火だと思って外に出たら,雨足が結構強くなっていて,雨天中止。せっかくここまで来たのに。

でもって,今日はこの蒸し暑さ。自転車での外出は,相変わらず汗だくです。

 

さて,表題ですが,ネット上での権利侵害の話です。

よくあるのが掲示板等を利用した匿名での誹謗中傷,プライバシー侵害,名誉棄損です。個人に対する攻撃だけでなく,会社やその商品が誹謗中傷の対象となることもありますね。

こういう場合の対処としては,掲示板からそういう誹謗中傷された記事を削除を求めたり,精神的損害(慰謝料)の賠償を求めたりすることが考えられます。

 

まず,削除請求については,サイトの管理者に対して行います。

では,ひどい書き込まれようなので,投稿者に慰謝料も請求したいという場合はどうでしょう?

この場合,投稿者は匿名なので,どこどこに住んでいる誰々であると特定することはできません。

損害賠償を請求する以上,その相手が特定されている必要があり,投稿者が不明のままでは請求できません。

それじゃあ,慰謝料については泣き寝入り?

 

いやいや,そんなことはありません。

プロバイダ責任制限法という法律の規定により,プロバイダ(KDDI,ソフトバンクBB等)に対して発信者を教えるように求めることができます。

もちろん,そう簡単に教えてくれるとは限らないので,場合によっては訴訟提起が必要です。

 

で,この発信者情報の開示請求ですが,何も,掲示板等での誹謗中傷等の事案だけに使われるものではありません。

権利の内容がどうであれ,個人や会社の権利を侵害する行為がネット上で匿名でなされていて,その者を特定したいという場合であれは,発信者情報の開示請求というのは使えます。

 

それならば,著作権侵害,商標権侵害,不正競争行為といった知的財産に関する事件においても使えるということになります。

 

とここまで書いて,つづきは明日。

 

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