弁護士早瀬のネットで知財・法律あれこれ 

理系で特許事務所出身という経歴を持つ名古屋の弁護士があれこれ綴る雑記帳です。

契約書に書かれたことは絶対か?

2016-03-11 19:29:36 | 法律一般

事業者の皆さん、個人事業か法人にかかわらず、取引に際して契約書、作ってますか?

作ってますよね!

んっ、作ってない? ならばちゃんと作りましょう。

 

 

でもって、契約書を作るとします。

その場合、できるだけ自分に有利となるようにしようと考えたくなりますよね。

自分に有利となるように作って、その思惑通り、相手も合意した。

 

では、契約相手と訴訟になった場合に、その合意内容は、すべてそのまま裁判所で認められるのでしょうか?

 

 

もちろん、「双方合意した」というのは重要な事実ですし、契約書でその証明もできます。

このため、契約書に書かれている内容にしたがって、裁判所も判断する可能性が高いです。

 

とはいえ、その内容が、あまりに一方的すぎると、公平(バランス)という観点から、裁判所が制限することもあるんです。

 

 

一例として、知財高判平成26.4.23という裁判例があります。

 

映像制作会社X社が、カメラマンYに、山野草の映像撮影を委託した。

Yは、X社に、その山野草の映像Aを納入したが、同じ機会に撮影した映像Bを第三者に販売したという事案。

Yは、映像Bは自分の物だと主張したのですが、契約書の合意内容から、映像BもX社に譲渡すべきものとされました。

Yは、それに反して映像Bを第三者に販売したので、X社との契約に違反したことになります。

 

このことを前提に、契約書の解釈で問題となったのは、

 契約解除をしたら、それまでに支払われた対価すべてをYはX社に返還しなけばならない

と規定されていた点です。

この合意通りに判断するなら、Yは、受け取った対価すべてをX社に返済しなければなりません。

 

 

ところが、裁判所は、この規定を制限的に解釈し、契約の解除はあったけど、対価を返還する必要はないと判断しました。

X社は、納入された映像Aを使ってDVDを販売できたし、映像Aに比べれば映像Bの数はほんのちょっとでした。

こういう事情から、Yに対価を全部返せというのはちょっと一方的過ぎるという判断が念頭にあったんだと思います。

 

 

このような例からもわかるように、

合意した以上、一方的な内容であっても、必ずその通りにしないといけないという話ではありません。

こういう例外があることは、知っておくといいかもしれません。

 

 

とはいえ、当事者同士の話し合いでは、合意通りにするように要求されるのは当然です。

第一審の裁判所でも、合意にしたがって、全額の返金せよという判断がされていました。

それに、一方的かどうかは裁判所の心証なので、そう思ってもらうには、それなりの主張や立証が必要となります。

その意味では、合意したことの効力が強いことに変わりありません。

 

 

つまり、契約を結ぶ段階から例外に期待してはいけないということ。

一方的に不利な契約とならならいよう、契約書を提示されたら、内容はしっかりと検討しましょう!

ということで。

 

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平成27年の総括

2015-12-29 14:01:13 | 法律一般

本年の業務は今日で終了し、明日から来年1月4日(月)までお休みです。

5月や8月にも長期休暇を設定しているのですが、なかなか休めない時期が続いてました。

この年末年始は、ようやく少しゆっくりできるかなぁ、と思っています。

 

 

さて、

今年を終わるにあたり、念頭にブログで書いた目標はどうだったか、少し総括してみようかなと思います。

目標として3つ挙げました。

 

1 顧問先のさらなる増加

 残念ながら、2社のうちの1社が顧問終了となってしまいました(今でもたまに相談はありますが)。

 それでも、実質的には顧問のような会社様が1社増えたので、全体としては増減なしですね。


2 新規プロジェクトの立ち上げ

 少しずつ進んではいて、スタートもしているのですが、実質的な活動はもう少し時間がかかりそうです。

 来年こそはという感じです。


3 他の士業との連携(コラボ)模索

 達成結果が見えずらい目標を立ててしまったので、ちょっと反省。

 でも、この観点では、昨年よりもご紹介を受ける案件が増えました。

 他士業の方との交流の機会はいろいろあるので、来年はより積極的にそういう交流の機会に参加していきたいなと思います。

 

 

その他、今年を振り返ってみると、

 ・ 女子大で非常勤講師をしたり、

 ・ テレビに写真付きでちらっとコメントが放送されたり、

 ・ 新聞記事でコメントが配信されたり、

 ・ 弁護士ドットコムニュースに何度かコメントしたり、

 ・ 会社で契約セミナー講師をさせていただいたり、

と、昨年に比べれば、そこそこ活動域を広げられたのではないかなかと思います。

 

来年は、もっともっと広げられるようにしたいですね。

 

 

そんなわけで、皆さま、来年もよろしくお願いいたします。

どうぞよいお年を!

 

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知的財産に関する刑事事件

2015-12-25 23:17:12 | 法律一般

最近、国選で刑事弁護の事件を受任し、弁護人として活動してます。

また、先日、弁護士ドットコムニュースで、「ふなっしー」がからむ不正競争防止法違反の事件についてコメントしました。

 「274」「FUNA」ふなっしー連想商品の販売で摘発、キャラ自体でなくても違法?(弁護士ドットコムニュース)

 

そんな刑事事件つながりで、知的財産権に関する刑事事件ってどんな感じなんだろう?

と、平成27年の犯罪白書でいろいろ調べてみました。

 

この平成27年犯罪白書によると、商法法違反や著作権法違反での検察庁受理件数は、次のとおり。

 

1-3-2-6図 商標法違反等 検察庁新規受理人員の推移

(「平成27年犯罪白書」(法務省)http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/62/nfm/n62_2_1_3_2_3.html)

 

平成26年の商標法違反が600件で、著作権法違反が453件です。

商標法違反は減少傾向にありましたが、どちらもここ数年、若干上昇傾向ですね。

 

他方、グラフはありませんが、白書のデータによると、

特許法違反は、平成26年において0件(平成25年は3件)、意匠法違反は3件(平成25年は0件)です。

毎年、0件か数件で推移してます。

上記のふなっしーの案件のような不正競争防止法違反事件は、これらより少し多くて160件。

 

 

ちなみに、平成26年における殺人の受理件数は約1500件で、窃盗は約11万5000件です。

これらのよくある刑法犯事件と比べると、知的財産の刑事事件はやはり少ないですね。

 

 

次に、検察庁で事件が受理された後、どうなったか。

検察庁で事件を受理すると、検察官が、起訴するか不起訴にするかの判断をします。

起訴されると裁判で審理されることになる。

 

犯罪白書に、その起訴率のデータが出ています。

ただし、商標法違反と著作権法違反だけ。

特許法違反など、他の知的財産については、数が少な過ぎて、個別の統計対象にすらならないという・・・

 

平成26年では、商標法違反の起訴率は65.9%、著作権法違反は73.5%。

殺人の起訴率が34.6%、窃盗の起訴率が42.1%なので、それらに比べると起訴率は高いですね。

つまり、知的財産の刑事事件は、検挙されると、起訴される可能性が結構高いということです。

 

 

続いて、起訴されて裁判となった場合に、どうなるか。

無罪となった案件があったかどうかのデータは見当たりませんでした。

 

で、有罪となった場合の実刑率のデータが出ています。

実刑率というのは、有罪と判断されたとして、執行猶予がつかない(即、刑務所行きとなる)件数がどれくらいあったかというもの。

これも、商標法違反と著作権法違反だけです。

 

平成26年では、商標法違反の実刑率は12.2%、著作権法違反の実刑率は14.5%。

つまり、8割以上、執行猶予がついて、即、別荘(刑務所)行きにはならないということです。

 

 

犯罪白書から、こんな情報が得られました。 面白いですね。

上記のように、知的財産権に関する刑事事件は起訴されても執行猶予になる可能性が高いですが、それも犯罪であることに変わりはありません。

というわけで、知的財産権を軽視しちゃダメですよ!

 

 

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契約セミナーの講師を務めました

2015-12-18 18:34:40 | 法律一般

このところ、ようやく冬らしい天気になってきました。寒いけど・・・

 

さて、本日の話題です。

先日、アロン化成さんで、契約セミナーの講師を務めました。

 

アロン化成さんは、

 ・ 給排水に用いられる塩ビ管

 ・ 介護・福祉関連用品

 ・ エラストマー(弾力性のあるプラスチック素材)等

を主力事業とされている会社。

 

その開発拠点が、名古屋工場内のものづくりセンターというところにあります。

開発拠点が名古屋に集約されているので、知的財産部門も名古屋に。

 

その知財部門を担当する方から、開発者向けの契約セミナーをとのご依頼を受け、契約に関する法律面や実務面について、いろいろお話させていただきました。

事前の準備にちょっと気合を入れ過ぎ、資料が多くなってしまったこともあって、セミナーの冒頭ではスピード出し過ぎた(>_<)という反省点はあるものの、無事終らせることができました。

開発や知財ご担当の皆さま、聴いてくださってありがとうございました!

 

何点かご質問をいただきましたし、知財担当の方からは、「勉強になった」との声が聞かれたとか・・・

そんなこんなで、セミナー終了後は、知財担当の方と、楽しく打ち上げして、ビールがおいしく飲めたなと。

 

 

で、セミナーの前に、ものづくりセンター内をちょっと見学。

三角形をコンセプトに立てられていて、建築賞も受賞されたデザインや環境に配慮された建物です。

 

一般の方も、見学予約すれば見学できるそうです(^^)

見学記念品に、フリクション蛍光ペンをいただきました。

お尻の部分のこするところに、アロン化成さんのエラストマーが使われてます!

 

 

 

 

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製造物責任と製品回収

2015-12-11 21:44:07 | 法律一般

今日は、なんとも季節はずれな天気でしたね。

三重では、夏日(気温が25℃を超えた日)のところもあったとか。

名古屋でも、朝外へ出ると、12月だと言うのに、なま暖かーい風が吹いていて、その気持ち悪さといったら…

 

 

話は変わりますが、ちょうど1週間前、以前にこのブログでも書いた、知財シンポジウムがあり、寸劇の舞台に立ってきました。

役回りは、企業の知的財産部の部員。

机を前に座りながらセリフをしゃべる場面が多かったので、ズルして、机上の台本をチラチラ見ていたのですが、

台本を見られない場面で、セリフの一言がすっかり頭から飛んでしまいました(-_-;)

 

仕方がないので、机上の台本をチラッと見て、なんとかその場はやり過ごしたのですが、かなり焦りました。

 

そんなこんなでしたが、参加された方からは、知的財産仲裁センターというところの使い方がよくわかったと、概ね好評だったような…

ちょっと失敗もしましたが、いい体験でした(^^)

 

 

さてさて、ようやく今日の本題です。

製造物責任の話を、ちょっと取り上げてみようかと。

 

製品に欠陥が発見されたので、購入者に対して回収の通知をしたが、そのまま放置された場合でも訴訟リスクを負うのだろうかという問題です。

 

この場合、業者側としては、通知したのに無視して使い続けていたんだから、それは購入者の責任でしょ、と言いたいのが本音。

でも、この言い分は通りづらいところ。

 

製造物責任法(PL法)では、製品に「欠陥」(通常有すべき安全性)があると認定されたら、その「欠陥」について免責が認められない限り、賠償責任を負います(PL法3条)

この責任において、購入者が通知を無視して使い続けたという点は考慮されません。

 

もっとも、製品の危険性を知りながら使っていたという点は、購入者にも「過失」があったとして、過失相殺により損害額が減額される可能性はありますが。

 

不特定多数の消費者に販売した製品だと、リコールによってすべてを回収することは困難でしょうが、

購入者が特定されている場合は、製品に欠陥の可能性ありとなれば、回収の通知はもちろん、確実な回収を目指すことも大切ですね。

 

 

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