弁護士早瀬のネットで知財・法律あれこれ 

理系で特許事務所出身という経歴を持つ名古屋の弁護士があれこれ綴る雑記帳です。

妄想オッパイグランプリ 控訴審

2015-08-31 21:00:01 | 知財一般

雨や曇りの日が徐々に増え,一時の暑さが和らいでますね。

9月になっても暑い日が続く年もありますが,今年はこのまま秋になっていく感じかな。

 

この8月は,お盆休みがあったり(と言っても仕事してましたが…),

弁護士会の委員会にかかわる行事で,担当委員として準備などに追われ,

手持ちの仕事がなかなか進まないのに,やることがたくさんある,

というなんとも言えない1ヶ月でした。

 

そんな行事も無事終わり,

合間を縫ってやっていた訴訟案件の書面作成もひと段落したしので,

これからは,特許出願の明細書作成モードです。今週末は休みなしだなあ(>_<)

 

 

 

さて,前置きが長くなりましたが,今日の本題。

以前記事にした「妄想オッパイグランプリ」の訴訟ですが,原告と被告の双方が控訴していたようです。

その控訴審判決が,今月頭に出てました知財高判平成27.8.5判決)。

 

この前回の記事,今年の2月11日に書いたものですが,

つい少し前まで人気記事のランキング上位にあり,そこそこ読んでいただけたようです。

皆さん,「オッパイ」が興味をそそるんですねー(^^)

 

「お前もだろ!」というツッコミはさておき…

 

本件は,パブリシティ権(顧客吸引力を排他的に利用する権利)が問題となった案件でした。

週刊実話という雑誌が,女優さんの顔写真を使ってオッパイのイラストを合成したものを記事として載せたため,

写真を使われた女優さんたちが,雑誌の販売差止め・廃棄のほか,

パブリシティ権侵害による損害賠償,人格権侵害による慰謝料を請求していました。

 

 

第1審の東京地裁は,パブリシティ権の侵害を否定して,

雑誌の販売差止め・廃棄や損害賠償は認めず,

その一方で,人格権侵害による慰謝料(80万円ずつ)は認める

という判断でした。

 

控訴審でも,この第1審の東京地裁の判断が維持されています。

 

 

この控訴審において原告の女優さん側は,

オッパイのイラストを合成した今回の記事は,顔写真そのものを鑑賞目的とするものであって,

それが主要部分であり,オッパイのイラストは単なる添え物に過ぎず,

「専ら顔写真が持つ顧客吸引力の利用する場合」に該当するんだとして,

改めて,顔写真が持つパブリシティ権の侵害を主張しました。

 

 

でも,控訴審判決では,

記事の目的からすれば,オッパイのイラスト部分も不可欠の要素であって,単なる添え物ではない,

と判断して,結局,パブリシティ権侵害を認められませんでした。

 

 

一人80万の慰謝料というのは雑誌社の痛みとしてはどうなんでしょうね。

それくらいなら,今後も同じような記事を載せてもいいや,となるのか,

それとも今後はやめておこうか,となるのか。

 

 

慰謝料の金額がちょっと少ないかなあという気もしますが,

判決から事案を見る限り,今回の件でパブリシティ権侵害の主張はなかなか難しいんだな,

とやはり思った次第です。

 

人気記事のその後,ということで取り上げてみました(^^)

 

 

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TVコメンテーターデビュー!?

2015-08-18 20:58:53 | 知財一般

五輪エンブレムに関連して出てきた,名古屋の東山動植物園のマーク。

 「似てる」東山動植物園も 佐野氏デザインのマーク (CHUNICHI Web)

 

市民から指摘があったとのことですが,なんだか,あらさがしの様相を呈してきた感じ。

 

 

そんな中,今日のお昼12時過ぎ頃に,突然,東海テレビの記者さんから電話があり,

東山動植物園のマークの問題についてコメントが欲しいとのこと。

 

でもって,今日の夕方のニュースに流すので,今すぐ,取材クルーを連れて事務所に行きたいって。

えっ,今からですかと,

突然すぎて,ちょっととまどってしまいました(^_^;)

ニュースに関するテレビの取材って,タイムリーな話だからいつもこんな感じなのかな。

 

 

本日の午後は予定が空いていたし,テレビかぁ,いろんなネタにもなりそうだなと,ちょっと色気も出てきて,

早速OKと返事をしましたが,結局のところ,VTRを流すだけの時間がないとのことで, 

電話取材を受け,コメントが写真とともに流れる形になりました。

 

 

 (司法書士の淵先生ご撮影)

 

もっといい写真用意しとくべきでした…(T_T)

 

 

いろいろ回答し,メールでも補足しましたが,

記者さんが作成されたコメント内容は,ほんのちょっとだけ。

時間限られているから,そうなっちゃうんでしょうね。

 

 

ここで,ちょっとご注意いただきたいのは,

そもそも,コスタリカの博物館のマークが著作物といえるのか,

という問題もあるということ。

 

宣伝広告目的でのマークは応用美術として著作物とはいえないのではないか,

とか,

他にも同じようなデザインがあれば,ありふれてるのではないか,

といった問題もあるので,そう単純な話ではありません。

 

時間が限られているテレビ番組では,細かく説明するのは難しいですけどね。

 

 

てなわけで,テレビの取材初体験。

写真だけなのに,表題が大げさすぎますね(^_^;)

 

 

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地理的表示保護制度

2015-03-27 21:30:40 | 知財一般

地理的表示保護制度という,新たな地域ブランド保護の仕組みができます(今年6月開始予定)

これは,「地理的表示法」という法律に基づくもの。

 

地域ブランド保護といえば,これまで,商標法において,地域団体商標という制度がありました。

地域団体商標によって保護されている地域ブランドは,今年1月13日現在で,581件にのぼります。

名古屋近辺でいえば,「松阪牛(まつさかうし)」(三重県),「蒲郡みかん」(愛知県),「下呂温泉」(岐阜県),「市田柿」(長野県)などです。

地名と商品等の普通名称とがセットになっている商標について,地名との結びつきが強い等の要件を満たせば,商標登録されます。

商標なので,経産省傘下の特許庁の管轄です。

 

 

これに対し,地理的表示保護制度というのは,農水省の管轄。

なので,対象となるのは農林水産物。

地理的表示保護制度なら,地域団体商標の制度でカバーできないところをカバーできると,制度の開始にあたって,農水省が意気込んでます。

 

 

この地理的表示保護制度,地域団体商標とちがって,どういうメリットがあるのか?

 1 商標制度では,商品等に関する統一的な品質管理ができない(地域団体による自主管理しかない。)

   → 地理的表示なら,登録時に品質基準も申請し,それに合っているが国がチェックしてくれる

 2 商標権の場合,侵害者に対し,権利者自身が対処しなければならない

   → 地理的表示なら,表示を不正に使用する者を国が取り締まってくれる

といったもの。

 

理的表示として登録されると,国が主体となってブランド保護に取り組んでくれるので,確かにメリットありますね。

 

それなら,地域団体商標なんていらんのでは?という話もなりそうですが,そういう話にはなりません。

農水省が管轄になっているように,地理的表示の対象となるのは,農林水産物に該当するものだけ。

純粋な農林水産物だけでなく,その加工品も含みますが,お酒,温泉,牛そのものは対象になりません。

申請主体も,地域団体商標の場合は商工会や協同組合であるのに対し,地理的表示は生産者団体という点で違いがあります。

だから,地域団体商標制度が無意味になることはありません。

 

とはいえ,地理的表示保護制度って,地域団体商標とかぶるので,特許庁は面白くないでしょうね。たぶん。

経産省への対抗から農水省が考え出した制度なのかという気もしますが,国際的な枠組みの中でできている制度です。

例えば,イタリア料理を食べに行くとよくある「パルマ産生ハム(プロシュート・ディ・パルマ)」は,EUで地理的表示として登録されています。

 

せっかくできた制度なので,農林水産物の地域ブランド保護を考えている場合は,利用してみてもいいかもですね!

 

 

 

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パブリシティ権続き

2015-02-13 23:07:23 | 知財一般

前回の記事は、表題のおかげか、いつもよりも閲覧者数が増えました。

オッパイさまさまですね。

 

さて、前回の記事の中で、ピンクレディー事件というものにチラッと触れました。

今日は、そのピンクレディー事件(最判平成24年2月2日判決)について補足しようかと。

最近とはいえ、もう2年前の判決ですが…

 

事件の概要はこうです。

「女性自身」という雑誌に、「ピンク・レディー de ダイエット」という記事が掲載され、ピンクレディーの振り付けを用いたクリス松村さん考案のダイエット法が紹介されました。

その記事に、ピンクレディーのお二人の写真が、許可なく掲載されたということで、パブリシティ権侵害を理由に提訴しました。

なお、写真そのものは、雑誌社が過去に承諾を得て撮影したものなので、著作権は問題になりません。

 

第1審も第2審もパブリシティ権の侵害を否定しました。

そこで、原告のピンクレディー側が上告し、最高裁で判断されることになったというわけ。

 

前回の記事でも触れたように、最高裁は、

・人の氏名や肖像について、人格権に由来する権利として、顧客吸引力を排他的に利用する権利(パブリシティ権)を認める一方、

・表現行為とのバランスを考え、

「肖像等を無断で使用する行為は、

 1 肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し、

    例) ブロマイド、グラビア写真など

 2 商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付し、

    例) キャラクター商品など

 3 肖像等を商品等の広告として使用するなど、

専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に、パブリシティ権を侵害するものとして、不法行為法上違法となる。」

と、3つの類型を挙げて、侵害判断の基準を示しました。

 

その上で、本件の記事は、

・ダイエット法を紹介するものであること

・約200頁中の3頁であること

・白黒写真で、大きさもそれほど大きくない

といった事実から、写真は、記事内容の補足目的で使用されただけで、上記の基準にあてはまらないので侵害しないと結論付けています。

 

以上のような最高裁の判断からすると、 

事業や商品の宣伝広告目的で、有名人の氏名や肖像を使うのは全くのNG。

勝手にキャラクター商品(Tシャツとか下敷きとか)を作るのもNG。

 

一方で、著作権法での「引用」のように、例えばブログ等の記事を書く場合などで、必要かつ相当な範囲であれば氏名や肖像を載せてもセーフ。

あとは、来店した有名人と撮影した写真を店に飾るのもセーフかな。

Tシャツとか下敷き等の作成も、私的な使用ならセーフ。

 

ちなみに、肖像が写真の場合は、それを撮影した人の著作権が別途問題になります。

必要かつ相当な範囲として「引用」したり、私的に使用するだけなら、写真の使用もセーフです。

 

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妄想オッパイグランプリ

2015-02-11 22:34:43 | 知財一般

今日は建国記念の日(紀元節)。

神話の世界の話ですが、我が国が建国された日を祝う日です。

建国記念日ではなく、「建国記念の日」というように、間に「の」を入れるのが正式なようです。

 

さて、そんな建国をお祝いする日なのに、いきなり表題がアレですが…

これ、「週刊実話」という雑誌に掲載された記事のタイトルです。

8人の女優さん(綾瀬はるかさん、石原さとみさん、深田恭子さんなど)の顔写真を使い、オッパイのイラストを合成したものを載せてました。

これは酷いということで、週刊実話の出版社を訴えたわけです。

 

その判決が先日出ました(東京地裁平成27年1月29日判決)。

ニュースにもなってちょっと話題になってましたね。

そういう意味では、ブログで取り上げるのが遅い…

 

この訴訟、主な争点は、

 ・パブリシティ権侵害と、

 ・人格権(氏名権、肖像権、名誉権)・人格的利益(名誉感情)の侵害

の2つ。

 

判決は、

 ・パブリシティ権侵害は否定

 ・他方で、人格権・人格的利益の侵害は肯定

ということで、後者の権利侵害により、原告各人に75万円(+弁護士費用5万円)の損害賠償請求を認めました。

いかにもヌード写真であるかのように表現され、コメントにも露骨な性的表現が使用されていたので、これは許されないという判断。

 

で、なぜこのブログでこの判決を取り上げたかと言うと、パブリシティ権が問題となっていたから。

 

パブリシティ権というのは、顧客吸引力を排他的に利用する権利のこと。

要は、有名人の氏名や肖像には宣伝効果や商業的価値があるので、その氏名や肖像を勝手に使うなという権利です。

どの法律にも規定されていませんが、判例上認められ、知的財産権の一つとされています。

 

以前からいろいろ議論されていましたが、最近、最高裁がその権利性を認めてます。

ピンクレディー事件という平成24年2月2日の判決です。

ちなみに、最高裁が認めたのはあくまで人に関するパブリシティ権。

人格権に由来する権利として。

 

なので、人ではなく、物やキャラクターに関するパブリシティ権は認めていません。

以前、ギャロップレーサー事件(平成16年2月13日判決)というのがありました。

競走馬(オグリキャップとか)の名前等のパブリシティ権が問題になったのですが、否定されてます。

 

さて、このように、人の氏名や肖像にパブリシティ権を認めるのはいいとして、

有名人というのは、社会から注目を浴びる人です。

報道や論評等の表現行為の対象となります。

なので、表現の自由というものとバランスを取る必要がある。

そうでないと、自分に都合の悪い報道等の表現行為にだけパブリシティ権を主張する、

なんてことになりかねませんので。

 

そんなわけで、最高裁は、パブリシティ権が認められる基準をきちんと立てています。

上記の件は、この基準に事案を当てはめ、パブリシティ権の侵害には当たらないと判断したというわけです。

 

理由は、

・記事は、女優さんたちの肖像(顔写真)そのものを鑑賞させるのではなく、ヌードを妄想させることを目的としていること

・記事は、雑誌の巻末に近いところに、ほんの一部として掲載され、表紙にも取り上げられず、一人一人の扱いも小さいこと

といった点から、この記事を見るために雑誌(週刊実話)を購入するとは考えづらい、というもの。

 

このように、パブリシティ権侵害では、名前や肖像がどのように使われているかが判断要素となります。

理由については、裁判官の評価の問題なので、いや実際は違うでしょという意見もあるかと。

とはいえ、氏名や肖像(顔写真)の顧客吸引力の保護というパブリシティ権に限ってみれば、事案を見る限り、こういう判断になるんだろうなあと思います。

人格権・人格的利益の侵害は認められているので、結論としても妥当じゃないですかね。

 

おっと、今日はちょっと長くなってしまいました。

 

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