弁護士早瀬のネットで知財・法律あれこれ 

理系で特許事務所出身という経歴を持つ名古屋の弁護士があれこれ綴る雑記帳です。

小さな民主主義

2014-05-31 18:33:47 | その他

今日は法律とはあんまり関係のない話題…

先日、弁護士会の定期総会に出席してきました。
欠席のつもりでしたが、総会の数日前に、「時間あったら出席して!」と電話で要請を受け、急きょ出席することに。

 

現在、愛知県弁護士会に所属する弁護士は約1700人です。総会の定足数は100人。

1700人も会員がいるのに、100人そこそこの出席で愛知県弁護士会の方針が決めてしまえるんですね。

100人ってちょっと少ないようにも感じますが、今後もしばらく、定足数はこの数で変わらないでしょう。
毎年70人ぐらいずつ会員数は増えてますが、今でも、十分な出席会員を確保するのは簡単ではないみたいですし。

 

総会の進行は、逐一、規則を確認しながら行い、とても形式的で、正直なんの面白みもありません。
議論が白熱しそうな議案の審議であれば、話しは別でしょうけど。

そんな形式的なこと、無意味ではないの?

と思う方もいらっしゃるかもしれません。
でも、こういう形式的なところ、手続的なところ、案外大切であったりします。

なぜって、それが、多数決決議の大前提だから。
本来なら、多数決で決議したことですから、欠席した会員や出席しても反対票を投じた会員も、決議で決まったことには従うことになります。
でも、もし議事進行が規則にしたがっていないとなると、そんな決議は無効だ!って言わわれてしまいかねません。

 

今回の定期総会の多数決で決議された内容にしたがって、本年度の弁護士会は運営されていきます。
弁護士会という、(国家に比べれば)小さな集団における民主主義ですね。

 

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FRAND宣言

2014-05-26 23:57:51 | 特許

最近、ディズニー映画「アナと雪の女王」が大流行ですね。

幼稚園(保育園)や学校では、子供たちが主題歌の「Let it go」を大合唱だとか。
昨日会った姪っ子や甥っ子も例にもれず、口ずさんでました。
Youtubeにアップされている動画を真剣に見て歌を聴いていた姿がなんとも微笑ましい。

でも、流行るだけあって、いい曲ですよね。「Let it go」

上りエスカレータに乗る時に、つい「I'm free」とか「Let it go(ありのままに)~」になんて口に出してしまいそうになる!?(笑

 

ところで、先日のFacebookにも載せましたが、「FRAND宣言」に関する意見募集で注目されていた、アップルvsサムスンの事件、判決全文が裁判所のページにアップされましたね。
同じページには、5月16日の判決言渡し直後に、すでに判決要旨がアップされていました。

(注) FRAND(フランド)宣言

「公正、合理的かつ非差別的(Fair,Reasonable and Non-Discriminatory)」な条件で、ライセンスを許諾する用意があるとの宣言

ざっくり言うと次のような感じです。

例えば、iphoneとサムスンのandroid携帯とで通信規格がバラバラだと、相互の通信に不都合が生じて困ってしまいます。
古くは、ビデオテープの規格がVHSとβで分かれて、消費者が使いづらかったという話を出せば、ある年代以上の方にとってはわかりやすいでしょうか。
そのため、通信をはじめ、製品に関する規格は、標準となる規格を決めて世界的に共通化を図るのが通常です。

こうして決まった標準規格(本件は3G通信規格)には、自分の特許だけでなく、他人の特許が含まれることが当然考えられます。
その場合、規格に合わせて製品を作ろうとすると、どうしても、その他人の特許を使わざるを得なくなる。
だからといって、その他人が、特許を持っていることを根拠に、自由に権利行使できるというのはおかしな話です。
そこで、標準規格の一部になった以上、「公正、合理的かつ非差別的」な条件で特許を使わせますよ、というのがFRAND宣言です。

 

本事件では、サムスンが、3G規格に関する標準規格にかかわる特許についてFRAND宣言していました。
そんな中、サムスンとアップルとのライセンス交渉がこじれ、サムスンがiphone等の製造や輸入の差止め請求をしたことがきっかけで、アップル側が、特許侵害による損害賠償請求権の不存在確認を求めたのがこの事案です。
サムスン側が申し立てた差止め請求についても一緒に判断されています。

アップル側は、特許権を侵害していない、仮に侵害していたとしても、サムスンによる損害賠償の請求は、FRAND宣言したのにライセンス交渉において不誠実だったから権利の濫用だ、と主張しました。

一審の東京地裁は、アップルの4つの製品のうち、iphone4とipad2について特許侵害となると判断しましたが、権利濫用の主張を認めて、アップル勝訴。

これにサムスンが控訴して、今回の知財高裁の大合議(裁判官5人)判決となったのです。

報道では「サムスンの逆転勝訴!」なんてセンセーショナルな見出しになっていました。
でも、知財分野を扱う学者や弁護士等の間では、落ち着きのよい結論だと言われています。実質的にはアップルの勝ちではないかとも。

 

判決内容をざっと説明すると次のような感じです。

・iphone4とipad2について特許侵害となる。
・FRAND宣言しただけでライセンス契約が成立するわけではない(個別の交渉を経てライセンス契約は成立する)
・FRAND宣言した場合の損害賠償請求は、FRAND条件でのライセンス料を超える部分については権利の濫用だけど、FRAND条件でのライセンス料の範囲内なら問題ない(著しい不公正な場合は除く)。
・本件でのライセンス交渉を見る限り、サムスンがライセンス料相当の損害賠償請求することに著しい不公正があるとまでは言えない。
・サムスンの損害額(ライセンス料相当額)は約995万円。
・FRAND宣言し、相手がFRAND条件を受け入れると言ったのに、差止め請求することは権利の濫用で認められない。

 

ライセンス交渉がこじれたとしても、よっぽどのことがない限り、FRAND条件でのライセンス料相当額の賠償を認めるというのは、特許権者の利益を考えれば妥当なところだと思います。
やはり、ライセンス料すら請求できないというのは、権利者にとっては不利益が大きいですから。

でも、認定された賠償額が1千万とは、やはり少なく感じますね。
ライセンス交渉でのサムスンの態度が影響したのか、まったく影響しなかったのか…

今後の議論にも注視したいところですね。

 

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前回ブログ(ルーズヴェルトゲーム)の補足と著作権法の改正と

2014-05-14 21:35:22 | 著作権

最初に、前回のこのブログで取り上げた話題について補足します。

先日の「ルーズヴェルト・ゲーム」によると、イツワ電器の実用新案権ですが、特許庁の評価をもらっていたみたいですね。
その評価書によれば、権利性なしという判断であったと。

これに対して、イツワ電器側の弁護士は、それはあくまで行政の判断であって最終的には裁判所が決めることだって言ってました。

確かにその通りなんですけどね。

でも、特許庁の判断で権利性否定された権利で、訴訟までするかなあ。
ましてや、今回の実用新案は技術的に新しくないので、裁判で権利性ありとされる可能性はほぼゼロのような気がしますし。

返り討ちに合うリスクがきわめて高いので、現実的には、訴訟しないのが普通だと思います。

 

前置きはこれくらいにして、著作権法の改正に触れます。
著作権に関する今のホットな話題は、保護期間の延長(死後50年→70年)ですけど。

※ちなみに、延長はほぼ決まりなんでしょうね。
 なんで70年なのかという議論も不十分なまま、アメリカと統一させるというTPP交渉での政治判断で決まってしまうことに、ちょっと違和感あります。
 70年に延長することが、果たして「文化の発展に寄与する」(著作権法1条)んでしょうかね?

法改正の話に戻りますが、今回の改正のメインは、出版権が電子出版にも及ぶようになったことにあります。

出版権というのは、契約によって、小説家や漫画家などから出版社に与えられます。
それにより、出版社は、本やマンガの出版を独占できる(小説家や漫画家自身も、自ら出版できなくなります)。
なので、出版社は、他人が勝手に本やマンガを出版すると、出版権の侵害として、その他人に対して差止請求や損害賠償請求ができます。

こういった内容の出版権に関し、現在の著作権法では、紙ベースでしか対応できていませんでした。
最近では、本やマンガが電子書籍化され、スマホやタブレットで読めるようになっているのに、そういう場合に対応できていなかったのです。

そこで、今回の改正で、電子書籍化の場合にも出版権が及ぶようになりました。
出版社は、電子書籍化したものについても、出版権を行使できることになります。

改正法の施行(効力が生じること)は、来年1月からです。

でも、だからといって、来年1月までなら、電子書籍を勝手にコピーやネット配信していいという話にはなりませんのでその点は誤解のなきよう。
現状でも、勝手なコピーやネット配信は、著作権侵害や不法行為の問題が生じますので。

 

ところで、法改正の情報は、文化庁のホームページを見ても発見できない…
文科省のページに行って、ようやく見つかりました。
著作権を直接所管する官庁は文化庁なんだから、文化庁のページに載せてよ。

 

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ルーズヴェルト・ゲーム

2014-05-07 13:15:55 | 特許

前回、次回のブログは著作権の改正ネタにすると公言しましたけど。
先日の日曜日にみたドラマ「ルーズヴェルト・ゲーム」で、知的財産がネタになっていたので、ここぞとばかりにそれに乗っかります(笑)

以前の池井戸ドラマ「半沢直樹」も毎回欠かさず見てましたが、今回も、その勧善懲悪な感じ(その意味では、水戸黄門に通ずるところがある!?)が、なんとも痛快で面白いです。根が単純なものですから・・・。
それにしても、香川照之さん、「半沢直樹」の時からの悪役ぶりが板についてますね。

「半沢直樹」が面白かったので、ドラマ終了後、シリーズの続編とか他の作品とかも読みました。ミーハーですね(笑)
池井戸潤さん、直木賞をとった「下町ロケット」もそうですが、知的財産をネタにすることが、他の作家さんと比べて多いように思います。

 

前置きはこのくらいにして。

ドラマでは、主人公の会社(青島製作所)が、ライバル会社(イツワ電器)から、イメージセンサのカラーフィルタに関する実用新案権を侵害したとして、販売の差し止めと200億の損害賠償請求の警告を受け、訴訟提起されていました。

それを聞いた瞬間、え~っ、特許権ではなく、実用新案権か~、と思ってしまいました。

おまけに、イツワ電器の実用新案権は、カラーフィルタとして一般的な技術であり、この訴訟には勝てるとのこと。
そうすると、余計に、実用新案権はないよなーとツッコミを入れたくなってしまいました。

 

なぜかって?

ここで、特許と実用新案との大きな違いを一つ確認します。

特許の場合、出願しただけでは権利になりません。従前の技術と同じでない等といった要件をクリアして初めて権利として認められます。

これに対し、実用新案の場合、出願しただけで権利になります。実質的な審査は何もないんですね。
なので、たとえば、羽をモータで回転させて風を送る扇風機という当たり前の内容でも、形式さえ整っていれば、1,2か月後には実用新案権という権利になってしまいます。

でも、実用新案についても、特許と同じように、権利を侵害すれば、販売差し止めや損害賠償請求ができるわけです。
ですから、それ相応の内容を伴っていないといけないはずです。

そこで、実用新案権の場合、販売差し止めや損害賠償請求をする前に、権利として有効なものなのか、という評価を特許庁から受ける必要があると法律で定められています。
その結果、有効だと評価されて初めて権利を行使できる。

先の扇風機の例でいえば、そんな扇風機は当たり前のものなので、権利と名がついていても、権利としては有効ではない(つまり、無効)と評価されます。
このため、実用新案権を持っていても、扇風機メーカーや販売会社に、販売の差し止めや損害賠償請求はできません。

 

これを踏まえて、ドラマに戻ると、イツワ電器が根拠にしてきた実用新案権は、カラーフィルタとして一般的な技術であるとのことでした。
そうすると、この実用新案権は、権利として有効という評価が得られないはず。つまり、権利として無効という評価がされているはず。
なのに、訴訟提起するってどういうこと?というツッコミを入れたくなるわけです。

 

あくまでドラマなんで、実用新案だろうが特許だろうがどっちでもいいのかもしれません。
でも、現実に、無効という評価が得られているか、そもそも特許庁から評価自体を得ていない権利で警告し、訴訟まで提起したとなれば、非常にマズいことになります。

ドラマでも、訴訟提起されたことで青島製作所の信用が低下し、大損害を受けるみたいですね。
この場合、青島製作所は、イツワ電器に対して、その信用低下によって被った損害を賠償請求することができることになります。
現実は、この時点で青島製作所の大逆転。

 

この話からわかりますように、実用新案権というのはとても使いづらい面があります。
ですから、将来、真似した相手に差し止めや損害賠償請求したいと考えているのであれば、実用新案ではなく、特許の出願をしておくべきです。

この特許と実用新案との違い、ぜひ押さえておいてください。

 

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今日は憲法記念日!

2014-05-03 18:51:49 | 日記

皆さま、連休後半の初日、いかがお過ごしでしょうか?
今日は天気もよく、絶好の行楽日和でしたねー!

僕はと言いますと、昼頃に実家に顔出した後、午後から事務所に来て、ロースクールでの授業のための準備中。

 

で、今日は何の日かというと・・・・・・ 憲法記念日
67年前(1947年)の今日、今の日本国憲法が施行されました(効力が生じたということ)。
ちなみに、公布されたのは、その前年の11月3日。その日は文化の日で同じく祝日になってます。

車で鶴舞公園の辺りを通った時、県警の機動隊がいっぱいいてなんだか物々しい雰囲気でした。
なんで?と思ってふと考えてみたら、そうそう、憲法記念日には、毎年、名古屋市公会堂で、護憲派の方々が集会やるんですよね。
案の定、付近に街宣車が結構たくさんいました。

 

そういう日にちなんで、と言いますか、僕の憲法、特に憲法9条に関するスタンスを表明しますと、改正賛成です。
弁護士なのに・・・って感じですかね。確かに、少数派かもしれません。

右翼弁護士と呼ばれてしまうかな(笑

別に、外国を侵略できるような条文に改正せよ、という話ではなくてですね。

国を守る自衛隊の存在そのものは、多くの人に認められているところだと思います(まあ、その存在そのものを認めない方々もいますけど)。
そして、自衛隊って、その組織構造や装備等からして、どう見ても日本という国家の軍隊です。

そういう性質を持つ自衛隊のことが憲法に一言も書かれていないというのって、おかしいと思いません?

憲法って、国家のあり方や仕組みを規定しているのですから、そこには、国を防衛する軍である自衛隊の存在とその役割をきちんと明記すべきだと思います。

もちろん、その役割については、大いに、かつ冷静に議論すべきですけど。
なんでもかんでも、戦争できる国になるって結びつけて思考停止するのはなしで。

とはいっても、そういう冷静な議論って、現実には難しいのかなぁ。
その手の話になると、頭に血が上っちゃう人、左右どちらにもいそうだし。

 

いやー、著作権法の改正を本題にするつもりが、話題が話題だけに、たいしたこと書いてないのに上の話だけで結構時間を使ってしまった(>_<)
なので、著作権法改正はまた今度にします。

 

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