弁護士早瀬のネットで知財・法律あれこれ 

理系で特許事務所出身という経歴を持つ名古屋の弁護士があれこれ綴る雑記帳です。

新しいタイプの商標 その後

2015-11-17 21:01:55 | 意匠・商標

ブログの装いをちょっと変えてみました(^^)

 

 

前回のブログで告知しましたように、先日(といっても10日ほど前ですが…)、

弁護士ドットコムニュースに、サントリーvsアサヒビールの特許紛争に関する拙コメントが掲載されました。

 

 

 「ノンアルコールビール」をめぐる特許訴訟――なぜ「サントリー」は敗訴したのか? (弁護士ドットコムニュース)

 

 

実はこのコメント、ちょっと違うんじゃないの?とのご指摘も受けたんですが、

文字数も限られている中で、大まかな説明としては、そんなに間違ってないんではないかと。

判決を細かく分析していけば、ご指摘の通りなんですけど。

 

 

前置きはこれくらいにして。

 

今年の4月から新しいタイプの商標制度が始まり、有名どころがこぞって出願しました。

以前に書いた記事でも取り上げてます。 → こちら

音、動き、位置、ホログラム、色彩も、商標登録が認められるようになったわけです。

 

 

先月末、これら新しいタイプの商標に関して、特許庁から一部の審査結果が公表されました。

 

 「新しいタイプの商標について初めての審査結果を公表します」 (経産省ニュースリリース)

 

 

これを見ると、音や動きの商標について、そこそこ登録を認める判断がされていて、

例えば、

 久光製薬の 「ヒ サ ミ ツ~ ♪」

 エプソンの  「カ ラ リ オ~ ♪」

 第一生命の 「ダイ イチ セイ メイ~ ♪」

なんかが登録OKと判断されています。

 

 

でも、登録が認められたとして公表されているのは、どれも「メロディ+言葉」のものですね。

正露丸のメロディや、インテルのメロディのように、メロディだけのものはまだ、審査中のようです。

また、色彩の商標が公表されていません。

 

 

無難なところから登録を認めて、

メロディだけとか、色彩といったところは、慎重に審査されてるのかな。

 

 

 

ポチッと,クリックお願いします!
   ↓↓↓↓↓↓↓   
    にほんブログ村 経営ブログ 法務・  知財へ

 

法律事務所と特許事務所が、AIGIグループとしてタッグを組んでます。
それぞれのページをぜひご覧ください!

 

 ★あいぎ法律事務所(名古屋)による知財・企業法務サポート

 

   〇知的財産トラブル
      特許権・実用新案権の侵害

      商標権の侵害
      意匠権の侵害
      著作権の侵害
      不正競争防止法(不競法)

 

   警告書(通知書・内容証明)対応
      警告書(通知書・内容証明)って何?
      始まりはいつも警告書(通知書・内容証明)

 

   〇契約書
      契約書の作成・チェック
      契約書のチェックポイント

   〇顧問契約

   ※名古屋商工会議所の会員です(HP)。

 ★あいぎ特許事務所
    商標登録に関する情報発信ページ「中小・ベンチャー知財支援サイト」もあります。 


新商標法施行 ~新しいタイプの商標~

2015-04-01 20:48:17 | 意匠・商標

今日から新年度。

満開の桜も新しい門出を祝福してますね。

 

 

さて,新年度の開始にあたり,知的財産関係では,一つ,大きな変化がありました。

新しい商標法が今日付けで施行され,特許庁で新しいタイプの商標出願の受付が始まりまっています。

 

これまで商標登録が認められていなかったけど,今回登録が認められることになった新しいタイプの商標というのは,次のようなもの。

 

 ・動き  文字や図形が時間とともに変化するもの

 ・ホログラム クレジットカードやお札についてる,角度を変えると絵が変わるもの

 ・色彩  例えば,セブンイレブンの色使い(米国商標第86491576号)

     

 ・音 例えば,インテルのCMでかかる「パン,パパパパン」のメロディ

 ・位置商標 例えば,ThinkPadノートPCのマウスポインタ(赤いやつ)の位置

 

こういった商標の登録は,アメリカとか欧州では,すでに認められていました。

日本でも,遅ればせながら認められるようになったわけです。

 

ちなみに,アメリカでは,「香り・におい」といったものも商標登録の対象とされています。

さすがにそれは特定が困難という理由で,日本では見送られました。

 

 

さっそく,正露丸の大幸薬品が,CMでかかってたラッパのメロディを出願するって告知してましたね。

 

 大幸薬品,ラッパのメロディを商標登録出願(日経ニュース)

 

 

特許などと同じく,商標も先に出願した方に権利が与えられます(先願主義)。

受付開始の今日,新しいタイプの商標に該当する主だったものが一気に出願されたんでしょうね。たぶん。

 

 

 

ところで,音の商標を出願する場合,五線譜や文字で音を表示し,CDROMなどで音源も提出することになります。

特許庁の新しい審査基準に載っている例では,以下のような感じ。

  (商標審査基準 改訂第11版 17頁より引用)

 

音を商標として認める以上,それがどんな音なのか特定が必要です。

となれば,音符で特定することになるのが通常かと。

 

でも,審査基準によると,文字で特定してもいいとなってます。

例えば,

 「パンパン」と2回手をたたく音が聞こえた後に、「ニャオ」という猫の鳴き声が聞こえる構成となっており、全体で3秒間の長さである。

 (商標審査基準 改訂第11版 18頁より引用)

例が面白い。

 

 

 

1ヶ月ほど経った5月初めあたりから,出願された新しいタイプの商標が公開され始めます。

また,半年ほど経てば,登録になった商標が公開されます。

どんな商標が出願され,登録されるのか,今から楽しみです(^^)

 

 

ポチッと,クリックお願いします!
   ↓↓↓↓↓↓↓   
    にほんブログ村 経営ブログ 法務・  知財へ

法律事務所と特許事務所が、AIGIグループとしてタッグを組んでます。
それぞれのページをぜひご覧ください!

 ★あいぎ法律事務所(名古屋)による知財・企業法務サポート

   〇知的財産トラブル
      特許権・実用新案権の侵害

      商標権の侵害
      意匠権の侵害
      著作権の侵害
      不正競争防止法(不競法)

   警告書(通知書・内容証明)対応
      警告書(通知書・内容証明)って何?
      始まりはいつも警告書(通知書・内容証明)

   〇契約書
      契約書の作成・チェック
      契約書のチェックポイント

   〇顧問契約

   ※名古屋商工会議所の会員です(HP)。

 ★あいぎ特許事務所
    商標登録に関する情報発信ページ「中小・ベンチャー知財支援サイト」もあります。 


意匠権の活用

2015-01-30 22:32:45 | 意匠・商標

前回の記事で,知財高裁のことを書きました。

その時,大合議事件の判決について触れたいとも書いたので,今日の記事では,そのうちのプロダクトバイプロセスクレーム事件について触れようかと思いましたが,えー,断念します。

短い時間でまとめられるようなものではないので(と言い訳…),また今度。

 

その代りに何を書こうなと思っていたら,Yahooニュースにこんな記事が。

 グリコが韓国ロッテを提訴(産経新聞)

日本ではなく,韓国での話なのですが,今日はこれで行きます。

 

記事によると,グリコは,意匠権侵害を根拠に提訴したようです。

調べてみると,このポッキープレミアム版「バトンドール」の商品パッケージについて,グリコは日本でも意匠権を取得しています。

こういった商品パッケージは著作権では保護されないので,予め意匠権を取得しておくことが肝要です。

パッケージの構造上の工夫とかがあれば,特許も取得できます。

後は,意匠権を取得できていなかったら(意匠権侵害の主張と共にでもいいですが),不正競争防止法違反を問うことになります。

韓国にも日本の不正競争防止法と似たような法律があるので,グリコはその点も提訴の法的根拠としているかもしれませんね。

 

ただ,意匠権ですが,ある商品の機能を得る上で,形は自由に変えてしまえるという場合にはあまり有効に作用しません。

本件の商品パッケージでも,今回は似たような形のパッケージを韓国ロッテが使ったので意匠権を問題にできましたが,違う商品パッケージにされてしまえば,意匠権は及びません。

同じ形のものを作らせないという意味では有効ですが,形を変えられるとなかなか意匠権では対処が難しい。

 

とはいえ,意匠権には,やり方によってはうまく使える場合がある。

たとえば,機能上,構造上,顧客のニーズ等から,ある特定の形にならざるを得ないような場合です。

ごくごく単純な例をいえば,スマホケースのデザインでは,サイドにあるボタン部分には必ず穴を開けないといけないとか。

 

このあたりの,どうやったらうまく意匠権を取って活用できるかは,商品の性質,流通の実態等,いろいろな点を考慮して判断する必要があります。

単純にデザインしたから意匠登録出願しとけばいい,という意識では,失敗することもあり得るので,その点はご注意を。

 

で,今日の話題とは全然関係ないですが,ここで他のブログのご紹介を。

 「邦人人質事件に思う」(中東の窓)

全くその通りだよなあと思ったので、紹介しました。

後藤さんとヨルダン人のパイロットの方、2人が無事に解放されることを祈って…

 

 

ポチッと,クリックお願いします!
   ↓↓↓↓↓↓↓   
    にほんブログ村 経営ブログ 法務・  知財へ

法律事務所と特許事務所が、AIGIグループとしてタッグを組んでます。
それぞれのページをぜひご覧ください!

 ★あいぎ法律事務所(名古屋)による知財・企業法務サポート

 ★あいぎ特許事務所
    商標登録に関する情報発信ページ「中小・ベンチャー知財支援サイト」もあります。


時事ネタ ~居酒屋笑笑の件~

2015-01-15 18:38:49 | 意匠・商標

今日の名古屋は大雨でした。

午前中に名古屋地裁で裁判期日があり、地下鉄の駅から歩いて裁判所まで行ったところ、膝から下がずぶ濡れになってしまいました(>_<)

 

さて、知的財産に関する昨日のニュースといえばこれですかね。

 「笑笑」そっくり家宅捜索 2店近接、商標権侵害の疑い(1/14日経)

 

広島県福山市で、「笑・笑(わらわら)」という居酒屋の名前が、モンテローザの商標権を侵害しているとの容疑により警察の捜索を受けました。

モンテローザは、飲食物の提供という区分で、「笑笑」や「わらわら」という商標権を持っています。

侵害かどうかは裁判所が判断することなので、現状ではあくまで容疑というレベルですが、看板を見ると、商標権侵害ありと言っていいのではないでしょうか。

 

商標権侵害の場合、民事事件として、使用差止めや損害賠償が問題となることはもちろん、侵害罪として刑事事件の対象となることも多いです。

典型的なのは、偽ブランド品なんかを所持したり、売った場合。

特許権侵害がほとんど刑事事件にならないのとは違います。

 

本件のように誰が見てもアウトでしょ、とわかる場合や、偽ブランド品のようにドンピシャの商標権侵害の場合など、侵害判断が容易な場合があるからでしょうね。

特許権では、侵害かどうかの判断が簡単ではないので、刑事事件として立件される場合は少ないんだと思います。

 

ところで、商標権侵害罪が成立するには、商標権侵害行為をしているというだけでなく、自身の行為が他人の商標権を侵害していることの故意が必要です。

そうすると、本件の店の経営者が、「笑笑(わらわら)」の名前が商標登録されているなんて知らなかったと言った場合はどうなるのでしょう?

故意がないとして商標権侵害罪という犯罪にはならず、無罪だと言い逃れできるか?

 

この場合、確かに、商標権侵害についての確定的な認識はなかったことにはなるのかもしれません。

でも、言い逃れはおそらくできないでしょうね。

モンテローザの居酒屋「笑笑」は全国的に有名だし、店の経営者も「笑笑」の存在を知っていたと言っているし、居酒屋という業態も同じなので、不確定ながらも、登録商標を勝手に使っているかもしれんという認識はあったはずと判断される可能性が高いからです(未必の故意といいます)。

 

ちなみに、商標権侵害罪の法定刑ですが、登録商標そのものを勝手に使った場合、個人に対しては、10年以下の懲役、1000万円以下の罰金、又はその両方。

登録商標に類似する名前を使った場合は、5年以下の懲役、500万円以下の罰金、またはその両方。

会社の代表者が商標権侵害をした場合は、代表者だけでなく、会社に対しても3億円以下の罰金。

結構重たい犯罪です。

 

ポチッと,クリックお願いします!
   ↓↓↓↓↓↓↓   
    にほんブログ村 経営ブログ 法務・  知財へ

法律事務所と特許事務所が、AIGIグループとしてタッグを組んでます。
それぞれのページをぜひご覧ください!

 ★あいぎ法律事務所(名古屋)による知財・企業法務サポート

 ★あいぎ特許事務所
    商標登録に関する情報発信ページ「中小・ベンチャー知財支援サイト」もあります


メロン熊の危機!?

2014-09-02 17:36:52 | 意匠・商標

裁判所の知的財産判例データベース,夏季休廷もあってしばらく更新ありませんでしたが,9月に入ってから更新され始めました。

今日新たに掲載されたのは,北海道物産センター夕張店のキャラクター「メロン熊」の事案です(平成25年(ワ)7840号 大阪地裁平成26年8月28日判決)。

メロン熊のオフィシャルブログは → こちら

きもかわいいってことで人気あるそうです。どう見ても,ゆるキャラとは言えない感じですね(^^)

 

本件は,商標権が問題となり,「メロン熊」さん側が被告でした。

原告会社は「melonkuma」という商標について,キーホルダーや人形等を指定商品とする商標権を有していたため,「メロン熊」さん側に損害賠償請求したというものです。

 

結論として,請求は認められませんでした。理由は次の通り。

・「melonkuma」と「メロン熊」とは,称呼(読み方)は同じだけれど,外観は違うし,観念も異なる。

外観が異なるというのは,一方はローマ字,他方は片仮名+漢字だから,見た目が違うということです。

観念が異なるというのは,一応「melonkuma」を発音すると果物のメロンと熊を思い起こさせるけれど,そもそも原告は,「melonkuma」という商標について何ら商品化していなかったので,具体的にイメージできるものはなく,「メロン熊」のようにメロンと熊とが一体化したようなイメージを思い起こさせるものではないということです。

・一般消費者が「melonkuma」と「メロン熊」の出所を誤認混同するおそれは極めて低い。

前述したように,原告は,「melonkuma」という商標について何ら商品化していなかったので,その商標自体に自分のところの商品を識別させる能力がないし,かえって,「メロン熊」を思い起こさせるくらい「メロン熊」が有名になっていて,両者を間違えることは普通はないでしょということです。

・原告の権利行使が権利濫用である。

原告商標には識別能力も顧客吸引力もないのに,「メロン熊」さんが有名になって顧客吸引力を得たのをいいことに権利行使するのは権利の濫用だと判断しています。

 

というわけで,裁判所は,商標が非類似だとするのではなく,権利濫用として請求を棄却しました。

「melonkuma」と「メロン熊」とが非類似だと言い切らなかったのは,誤認混同のおそれは低いけれどゼロではないという感覚が裁判官にあったのかもしれませんね。

 

この事案,原告が「melonkuma」商標を使った商品化をしていなかったという事情が,「メロン熊」さん側が勝つ要素の一つでした。

でも,これって正直なところ,結果論のような気がしますね。

 

原告の商標権取得が平成20年で,「メロン熊」さんが登場し始めたのが平成21年頃だとすると,その時点では原告による商品化の可能性はあったはずです。

「melonkuma」という名前と,キーホルダーや人形といった指定商品からすれば,原告は,メロンと熊を組み合わせたキャラクターを考えていたと思われるので,仮にその通り商品化がされていたら,結構やばかったんではないでしょうか。

ちゃんと商標調査をし,「melonkuma」商標の存在を知った上で,それでもリスクを取って「メロン熊」の名前で行くと「Go」を出したのなら,それも一つのやり方ですが,もし何も考えずに「メロン熊」という名前を採用し,後から商標登録しようと考えたら「melonkuma」という商標があったなんてことだとしたら…

 

やはり,事前にきちんと調査して出願しておくことは重要ですね。

 

ポチッと,クリックお願いします!
   ↓↓↓↓↓↓↓↓   
    にほんブログ村 経営ブログ 法務・  知財へ
 
 

 

法律事務所と特許事務所が、AIGIグループとしてタッグを組んでます。
それぞれのページをぜひご覧ください!

 ★あいぎ法律事務所(名古屋)による知財・企業法務サポート

 ★あいぎ特許事務所
    商標登録に関する情報発信ページ「中小・ベンチャー知財支援サイト」もあります