弁護士早瀬のネットで知財・法律あれこれ 

理系で特許事務所出身という経歴を持つ名古屋の弁護士があれこれ綴る雑記帳です。

ホームページ更新

2014-06-30 20:19:54 | その他

今日は事務所の宣伝に徹します。
すでにFacebookでも宣伝したのですが、このブログでも。

 

ホームページ(http://law.aigipat.com/)が新しくなりました!

トップページはこんな感じでして、恥ずかしながら、私の写真も載ってたり

 

今回の更新で、知的財産に関する情報を充実させました。

★ 模倣品を発見したけれど、どう対処してよいかわからず困っている

★ 警告書等が突然送られてきて権利侵害だと言われ困っている

といった場合にどうすればよいか、という視点で作成いたしました。

突然の警告書にびっくりして素直に相手の言うとおりにしちゃった。
けど、弁護士・弁理士からみれば、実は侵害していなかったとか、反論する余地があった、なんてことが実際にあります。

記事を読んでいただき、そうならないよう、ぜひ注意していただきたいなと思います。

はっきり言っちゃえば、模倣品対策でも、警告書対策でも、あいぎ法律事務所にぜひ相談してね!ってことなんですけどね。

 

今日はこんなところでおしまい。

 

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「チュッパチャプス事件」~ネットショッピングモールの商標権侵害~

2014-06-25 22:44:32 | 意匠・商標

毎日暑いですね。
でも、夜や朝はまだエアコンつけるほどでもなく、蒸し暑さもなくて過ごしやすい気がします。
本当に梅雨なんでしょうか…

 

今週金曜日にようやくロースクールでの授業が終わります。
3週間に1回とはいえ、毎回問題作成し、問題解説と判例解説のレジュメを作成し、答案添削することは結構大変です。

ようやく終わりだーと、思っていたら、突然、恩師であり実務家でもある先生から、「定期試験の問題作って採点してくれんか?」と電話連絡

 

さて、ぼやきはこんなくらいにして、本日は、毎月弁護士有志で集まってやっている「知財勉強会」の日でした。
本日の題材は結構面白い事件が多く、とても勉強になりました。

そのうちの一つ、「チュッパチャプス」事件(知財高裁平成24年2月14日判決)を取り上げたいと思います

この事件の概要はこうです。
楽天のショッピングモールに、棒付きキャンディで有名な『Chupa Chups(チュッパチャプス)』の商標を無断で使った帽子とかマグカップが出品されていました。
問題となった商品は、例えばこんな感じのもの。

 

                
               

 

そこで、「Chupa Chups」商標の商標権者であるイタリアの会社が、楽天に対して商標権侵害を理由に、商品販売等の差止めと損害賠償請求を求めたというものです。

 

ここで、んっ?なんで楽天に?商品販売者(モールの出店者)が相手じゃないの?と思った方、その通りなんですよね。

この事件では、上記の商品販売が商標権侵害にあたり、商品販売者に対して、原告が販売差止めや損害賠償請求できることに争いはありません。

でも原告は楽天を相手にしました。
原告としては、商標権侵害する出店者にいちいち警告書等を送るのは面倒だし、運営者の楽天に請求できれば請求先も一元化できて商標管理も楽になりますもんね。

でも、楽天からしてみれば、自分はショッピングモールの運営者にすぎないんだし、そんなの出店者に言ってよってことになる。

ですから、果たして楽天が商標権侵害の主体になるのか?っていうところが大きな争点となりました。

 

第1審の東京地裁は、現に商標権侵害の行為をしている者が侵害者なんだと厳格に考えて、原告の主張を認めませんでした。

ところが一転、控訴審の知財高裁では、商標権侵害を理由に、運営者に対して差止めと損害賠償請求できる余地を認めました。

判旨はこう言っています。

「ウェブページの運営者が,単に出店者によるウェブページの開設のための環境等を整備するにとどまらず,運営システムの提供・出店者からの出店申込みの許否・出店者へのサービスの一時停止や出店停止等の管理・支配を行い,出店者からの基本出店料やシステム利用料の受領等の利益を受けている者であって,その者が出店者による商標権侵害があることを知ったとき又は知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるに至ったときは,その後の合理的期間内に侵害内容のウェブページからの削除がなされない限り,上記期間経過後から商標権者はウェブページの運営者に対し,商標権侵害を理由に,出店者に対するのと同様の差止請求と損害賠償請求をすることができると解するのが相当である。」

これによると、楽天のような運営者が商標権侵害の責任を負うのは、次の①②を満たす場合です。

① 運営システムの提供・管理・支配を行い、出店料やシステム利用料の利益を受けていて、かつ
② 出店者による商標権侵害を知ったか、知ることができたといえる時点から合理的期間内にウェブページからの削除しない場合

①は、楽天を含むショッピングモールの運営者なら、通常はあてはまるでしょうね。
でも、本件の楽天は、6日~8日という合理的期間内にページを削除していたので、②をクリアしました。
その結果、原告の請求は棄却されました。

 

今日の勉強会では、

理屈が理解できないなーとか、

原告の商標権者は、結論で負けても、楽天などの運営者の責任を認める余地ができたから、そもそもの思惑は達成したよね

なんていう話で盛り上がりました。

 

 

話しは変わりますが、この事件の控訴審判断、飯村判事(今となっては元判事ですが)の裁判体が出したものです。

飯村判事、つい先日、退官されたばかりですが、アップルvsサムソンの大合議事件が最後の大仕事(花道?)になった感じですね。

今後、おそらく弁護士登録されるのでしょうが、どの事務所に行くのか、ちょっと(大いに?)興味あります。
大手事務所が争奪戦を繰り広げているんだろうなー。

 

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だが屋で交流会だがや

2014-06-16 19:50:14 | 特許

名古屋で知的財産(知財)系の事件を扱う弁護士の早瀬です。

 

先週の金曜日は、名古屋知財系オフ会「だが屋」に参加してきました。
いつもは知財関係の仕事に就いている人たちが集まっての懇親会が主体なのですが、今回はいつもとちょっと趣向が変わり、NHKドラマ「太陽の罠」(名古屋放送局制作)とのコラボ企画でした。

このドラマ、メーカーの知的財産部を舞台にしたもので、名古屋放送局制作とあってロケ地は名古屋(ノリタケの森とか)!
詳しくはこちら(DVD販売されています) → http://www.nhk-ep.com/products/detail/h19804AA

 

知的財産がかかわっていて、なおかつ名古屋が舞台!いうことで、ドラマ制作に携われた

(株)プロファウンド代表 石橋秀喜先生(ドラマ監修者)
・NHK名古屋放送局チーフプロデューサー 青木信也氏

のお二人をゲストに迎え、番組制作にまつわるお話をいろいろ伺いました。

 

でも、実はというと、ドラマを見ていない…(汗

ですが、ドラマ制作の裏話とか苦労話など、とても面白いお話を聞かせていただきました。

 

NHKスタッフの方は特許制度のこと、企業の知的財産部のこと、アメリカでの特許訴訟のこと等など、まったくの素人ということで、監修者の石橋先生が一つ一つ丁寧に説明したり、設定を考えたりしたそうです。

知的財産部内の小物(ファイルとか)や机などの配置はもちろん、カリフォルニア州での訴状の形式!まで現地の弁護士に確認しながら作ったなんて話を聞くと、そんな細かいところまで気を配るのかとビックリ。
正直、ドラマを見ていてそんなところまで気にならないんじゃないのと思ってしまいますが、気になって問い合わせする方に備えて、Q&A集も作ったりするそう。

いやはや、ドラマ制作の大変さが本当によくわかりました。

 

その後、懇親会があったのですが、石橋先生を交えた席で「ルーズベルト・ゲーム」(昨日は株主総会の話でしたね。)の話題となり、実用新案権侵害で訴訟を起こした件、あれは現実的にはないよねー、と見解が一致。
この件は、以前このブログで触れさせていただきました(ここ)。

でも、石橋先生曰く、現実的にはない設定でも、ドラマとしての面白さやストーリー展開とか、といったところを優先させる場合もあるとのこと。
そのあたりで、監修者とドラマ制作側とのせめぎあいがあるそうです。

 

普段、あまり聞けない裏話を直接聞けるのは、面白いですね!

「だが屋」番頭のm-kenさん、ありがとうございました。

 

 

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特許明細書の作成

2014-06-10 22:57:55 | 特許

梅雨なのに雨降らないですね…
先週末は関東の方で大雨でしたけど(ちょうどその時、東京出張(泣))、名古屋は全然降りません。

天気が良いのは、傘は不要で、移動もしやすいのでいいんですが、水不足、大丈夫なのだろうか・・・

 

少し前に弁理士登録し、弁理士としてはあいぎ特許事務所に所属する形で、特許出願の明細書を書いています。
先日、急ぎの案件を担当することとなり、今日、ようやく、原稿をお客さんに発送しました。

今回の案件は、技術的には全然難しくない発明だったのですが、技術が単純なだけに、それを言葉で表現しようとするのは本当に難しい。

週末をつぶし、頭を悩ませ、ウンウンとうなりながら作成し、修正に修正を重ねてようやく完成しました。やれやれ…

お客さんに原稿を確認していただいた上で、出願手続を行います。

 

かれこれ10年以上にわたって特許明細書を書いていますが、毎回のように頭を悩ませます。

特許の生みの苦しみというやつです。
あまりに限定しすぎては、特許権という権利が与えられても簡単に回避されてしまいますし、そうかと言って、必要な構成が抜けてしまったり、内容がよくわからないものになってしまっては、特許庁の審査官に拒絶されてしまいます。
このため、単にお客さんから渡された資料をそのまま文章にするのではなく、発明の本質を導き出し、それをうまく表現するという能力が、特許の明細書作成には求められます。

 

例えば、「ゼムクリップ」を新しく発明したとして、それをどう表現します?

「細い針金をU字形状に折り曲げ、さらにその一端をU字形状に折り曲げて外輪を形成し、さらにその一端をU字状に折り曲げて、内輪を形成した」

などと、ゼムクリップそのままの形を文章しただけだと、権利はあっという間に回避されてしまいかねません。

・針金じゃなくてプラスチックだとしたら…
・U字じゃなくて三角、四角、ハート形にしたら…
・U字の紙挟み部分が、2つの面で挟むものだったら…

機能は同じでも、形が違ってしまったら権利の範囲となる可能性が高まります。

※ただ、権利侵害かどうかはいろんな事情を考慮して判断するので、この例が絶対に権利範囲外になるとは一概に言えませんけど。

なので、

・紙等の対象物を挟み込む一対の挟み部分があり、
・その挟み部分どうしが一端側で連結されていて、
・その連結部分に復元力が付与されている

と説明すれば、上記のような回避がされてしまうことを防止できます。

ここまで権利を広げると、ゼムクリップだかなんだかわからなくなってしまいますね。
すでにある技術を含んでしまったら、それはそれで問題ですし、それに、もっといい表現の仕方もあるかもしれません。

でも、まあそこは一つの例として、大目に見てやってください。

 

というわけで、特許明細書の作成には、かなり頭を使うんだよという話しでした。

 

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著作権と所有権

2014-06-04 13:39:56 | 著作権

今回は著作権に関する勉強ネタ。

「著作権」を理解する上で、所有権との違いを理解することが一助になります。
所有権等の対象となる物には実体はありますが、権利そのものは実体のないものなので、理解がなかなか難しいのですが…

 

次のような例を想定します。

書道家のAさんが、毛筆を使って「甲乙丙」と紙に書いた作品Xを制作した

 

この場合、その作品Xには、Aさんの「所有権」「著作権」の両方が存在します。

まず、所有権について

これは、「甲乙丙」と書かれている書道用紙そのものを対象として存在します。
作品Xの「有体物(形ある物)」としての側面です。

著作権はどうか?

これは、筆遣いであったり、墨の濃淡であったり、といったAさんの個性が表現された部分を対象として存在します。
その対象部分を著作物と言いますが、これは作品Xの「無体物(実体のない情報のようなもの)」としての側面。

このように、所有権著作権はそれぞれ対象とするものが違います。
このため、1つの作品Xの上に、その両方が存在することができるのです。

 

仮に、Aさんが作品X(「甲乙丙」と書かれた書道用紙)をBさんに売れば、その所有権はBさんに移転します。
なので、Bさんから作品を盗んだ人に対し、Bさんは所有権侵害を理由に返せと言えますが、Aさんはもはや返せと言えません。

他方、著作権はAさんが持ったままです。
BさんがAさんに無断で作品の画像をネットに流すと、AさんはBさんに対して、著作権侵害を理由にそれをやめろと言えます。
たとえBさんが作品Xの所有権を持っていてもです。

 

このような著作権所有権との違いの場面において有名な判例が、「顔真卿自書告身帖事件」(最高裁昭和59年1月20日判決)です。

事案はこうです。

8世紀中国(唐の時代)に「顔真卿」という名の書家がいました。
その作品に「自書告身帖」というものがあります。

その所有者が、「自書告身帖」を写した写真を載せた写真集の出版社に対し、所有権侵害だとして写真集の販売停止等を求めました。
相手方の出版社は、作品の前所有者から承諾を受けて写真撮影された写真を使用していました。

判決は、次のように判示して請求を棄却しました。

「美術の著作物の原作品は、それ自体有体物であるが、同時に無体物である美術の著作物を体現しているものというべきところ、所有権は有体物をその客体とする権利であるから、美術の著作物の原作品に対する著作権は、その有体物の面に対する排他的支配権能であるにとどまり、無体物である美術の著作物自体を直接排他的に支配する権能ではないと解するのが相当である。そして、美術の著作物に対する排他的権能は、著作物の保護期間内に限り、ひとり著作権者がこれを専有するのである。…著作権消滅後は、…何人も、著作者の人格的利益を害しない限り、自由にこれを利用しうることになるのである。」

相手の出版社は、「自書告身帖」という作品そのもの(有体物)に対して何も手を付けていないので、所有権の侵害はしていません。
なので、結論はこうなりますよね。

 

ところで、そうなると、作者が亡くなって50年以上経過しているような作品(絵画とか書など)は著作権フリーなので、作品を所蔵する美術館でパシャパシャ写真撮ってもいいのでしょうか?

所有権を侵害していないから問題ないって話になりそうですが、そうは問屋が卸しません。

そもそもそれらの作品に接するには、入館料などを払って美術館の中に入る必要があります。
つまり、作品へのアクセスは制限されていて、誰でも見れる状態になっているわけではありません。

そうである以上、そのアクセス制限の延長として、作品を写真撮影するのも制限される、と考えられています。

実際上も、警備員につまみ出されるのがオチですし、無断撮影はいけませんね。

 

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