今日は判例紹介したいと思います。
日亜化学さんの青色LED特許が少しからんだ裁判例です。
LEDも最近は製造装置さえ買えば誰でも作れるようになってしまったようです。
そのため、台湾、中国、韓国といったところが、安くLEDを作れるようになってしまった。
日本の主要メーカーである日亜化学さんや豊田合成さんとしては、対応にいろいろ苦労されているのだろうなと思います。
オーソドックスではあるけど、特許権の活用が対抗措置の一つです。
その一環として、日亜化学が、立花エレテック(商社)を相手に特許権侵害訴訟を提起しました。
この裁判例で問題となったのは、訴訟提起の際に日亜化学が出したプレスリリースの内容(大阪地裁平成27年2月19日判決)。
会社が知的財産権を根拠に訴訟提起した場合、そのことをプレスリリースに出すのが一般的です。
「誰それを相手に、特許権侵害を理由に訴訟提起しました。
当社は知的財産権を重視しており、侵害行為には毅然とした態度で臨みます。」
といった感じで、訴訟提起の事実、訴訟での主張や見解の説明、知財に対する態度表明、といったのが一般的な内容。
でも、そこから行き過ぎちゃうと、営業誹謗行為(不競法2条1項14号)として、プレスリリースが違法行為になってしまいます。
違法になるのは、「他人の営業上の信用を害する虚偽の事実」を告知・流布した場合。
もちろん、故意・過失があることも必要です。
先の一般的な内容、つまり、訴訟提起の事実、訴訟での主張や見解の説明、知財に対する態度表明といったものは、虚偽でもなんでもないので問題ありません。
個別に要件を見ていきます。
・「営業上の信用を害する」
今回の裁判例は、「訴訟提起の事実を公表し、…訴訟における自らの主張内容や見解を単に説明するという限度」なら問題ないとを示唆してます。
ただ、それを超えることまで書いてしまうと、「営業上の信用を害する」ことになると。
具体的には、相手が特許権などの権利を侵害する行為を行ったと断定するか、断定していると強く思わせるような場合です。
リンク先の判決書では、日亜化学がどう書いたかが最後に載っています。
立花エレテック社が特許権を侵害するLED製品を台湾の会社から輸入販売している、と強く思わせる内容になっていると判断されました。
断固とした意思を示すにしても、ちょっと書きすぎてしまった感じですね。
対抗措置の一環です、くらいまでで止めとけば、結論も変わったのではないかなと思います。
・「虚偽」
ただ、仮に権利侵害について断定的で「営業上の信用を害する」書きぶりでも、それが間違ってなかったら問題ないわけです。
でも、立花エレテック社は、特許権侵害の対象となっていたLED製品を台湾の会社から輸入販売しておらず、立花エレテック社自身に権利侵害行為はありませんでした。
なので、日亜化学が書いた、権利侵害を断定するかのような内容は「虚偽」だった。
権利侵害かどうかは裁判の結果によって判明するので、予測できません。
だから、そもそも、断定的な記載をして「営業上の信用を害する」ことはしない方がよいということになります。
・「故意・過失」
日亜化学側も、わざと虚偽(ウソ)の内容を書いたわけではないので故意はありません。
でも、プレスリリース出す際に、きちんと調査検討してましたか?してなければ注意義務を怠ったとして過失があるね、ということで、過失の有無が判断されています。
今回の件で、日亜化学側は、立花エレテック社に、該当製品を輸入販売しているかどうか直接問い合わせることはしていません。
裁判例では、ここも問題とされました。
相手や取引関係者への問い合わせもしていないのでは、調査を尽くしたとはいえないと。
そんなわけで、過失もあり。
結果、日亜化学のプレスリリースは、営業誹謗行為で違法だという判断がなされました。
この件からわかるように、プレスリリースの書き方には注意が必要です。
断固たる意思表示も大切ですが、勇み足になってしまわないように。
ダメとされた一例として、本裁判例を紹介しました。
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