弁護士早瀬のネットで知財・法律あれこれ 

理系で特許事務所出身という経歴を持つ名古屋の弁護士があれこれ綴る雑記帳です。

日々の弁護士業務

2015-02-27 23:22:56 | 日記

ここ数日、世間の注目を集めそうな知財ニュースが多いですね。

米国でアップルが「iTunes」が特許侵害しているとして日本円で630億円もの賠償を命じられたとか、

シャープの「IGZO」商標について、特許庁の無効審決が知財高裁で維持されたとか、

体重計について、タニタがオムロンの意匠権を侵害したと裁判で認められたとか。

 

そんな中、今日は空気を読まずに、日々の弁護士業務について。

 

弁理士業務を含めて知財関係の仕事をしていることが多いですが、通常の一般民事の仕事ももちろんやってます。

 

特許事務所は総勢20名を超える大所帯ですが、法律事務所は私一人。

なので、一般民事事件などの弁護士業務は、事務仕事を含めて一人でやってます。

 

弁護士になった当初は、事務員さんも何人かいる別の事務所に勤務していたので、事務仕事は事務員さんにお願いしていました。

でも、いざすべて自分一人でやることになると、一見些細なことでも手が止まる。

そのたび、「法律事務ハンドブック」という愛知県弁護士会が出している本を引っ張り出して調べるのですが、それでも知らないこともまだまだ多い。

 

先日も、裁判所地下のコンビニで、収入印紙や予納郵券セットを購入できることを、他の事務所の事務員さんから聞きました。

登録手続すれば電子納付も可能だということも…

非常にお恥ずかしい話、知らんかった(-_-;)

 

知ってしまえばなんでもないので、なーんだという話ですけど。

事務仕事は弁護士の仕事じゃない、という考えもあるかもしれません。

でも、こうやって、事務仕事も含めてまずはすべてを経験することも、大切なことだよなと思う次第です。

 

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訴訟に関するプレスリリース

2015-02-25 21:28:58 | 特許

今日は判例紹介したいと思います。

日亜化学さんの青色LED特許が少しからんだ裁判例です。

 

LEDも最近は製造装置さえ買えば誰でも作れるようになってしまったようです。

そのため、台湾、中国、韓国といったところが、安くLEDを作れるようになってしまった。

日本の主要メーカーである日亜化学さんや豊田合成さんとしては、対応にいろいろ苦労されているのだろうなと思います。

 

オーソドックスではあるけど、特許権の活用が対抗措置の一つです。

その一環として、日亜化学が、立花エレテック(商社)を相手に特許権侵害訴訟を提起しました。

この裁判例で問題となったのは、訴訟提起の際に日亜化学が出したプレスリリースの内容(大阪地裁平成27年2月19日判決)。

 

会社が知的財産権を根拠に訴訟提起した場合、そのことをプレスリリースに出すのが一般的です。

「誰それを相手に、特許権侵害を理由に訴訟提起しました。

当社は知的財産権を重視しており、侵害行為には毅然とした態度で臨みます。」

といった感じで、訴訟提起の事実、訴訟での主張や見解の説明、知財に対する態度表明、といったのが一般的な内容。

 

でも、そこから行き過ぎちゃうと、営業誹謗行為(不競法2条1項14号)として、プレスリリースが違法行為になってしまいます。

違法になるのは、「他人の営業上の信用を害する虚偽の事実」を告知・流布した場合。

もちろん、故意・過失があることも必要です。

先の一般的な内容、つまり、訴訟提起の事実、訴訟での主張や見解の説明、知財に対する態度表明といったものは、虚偽でもなんでもないので問題ありません。

 

個別に要件を見ていきます。

 

・「営業上の信用を害する」

今回の裁判例は、「訴訟提起の事実を公表し、…訴訟における自らの主張内容や見解を単に説明するという限度」なら問題ないとを示唆してます。

ただ、それを超えることまで書いてしまうと、「営業上の信用を害する」ことになると。

 

具体的には、相手が特許権などの権利を侵害する行為を行ったと断定するか、断定していると強く思わせるような場合です。

リンク先の判決書では、日亜化学がどう書いたかが最後に載っています。

立花エレテック社が特許権を侵害するLED製品を台湾の会社から輸入販売している、と強く思わせる内容になっていると判断されました。

断固とした意思を示すにしても、ちょっと書きすぎてしまった感じですね。

対抗措置の一環です、くらいまでで止めとけば、結論も変わったのではないかなと思います。

 

・「虚偽」

ただ、仮に権利侵害について断定的で「営業上の信用を害する」書きぶりでも、それが間違ってなかったら問題ないわけです。

でも、立花エレテック社は、特許権侵害の対象となっていたLED製品を台湾の会社から輸入販売しておらず、立花エレテック社自身に権利侵害行為はありませんでした。

なので、日亜化学が書いた、権利侵害を断定するかのような内容は「虚偽」だった。

権利侵害かどうかは裁判の結果によって判明するので、予測できません。

だから、そもそも、断定的な記載をして「営業上の信用を害する」ことはしない方がよいということになります。

 

・「故意・過失」

日亜化学側も、わざと虚偽(ウソ)の内容を書いたわけではないので故意はありません。

でも、プレスリリース出す際に、きちんと調査検討してましたか?してなければ注意義務を怠ったとして過失があるね、ということで、過失の有無が判断されています。

 

今回の件で、日亜化学側は、立花エレテック社に、該当製品を輸入販売しているかどうか直接問い合わせることはしていません。

裁判例では、ここも問題とされました。

相手や取引関係者への問い合わせもしていないのでは、調査を尽くしたとはいえないと。

そんなわけで、過失もあり。

 

結果、日亜化学のプレスリリースは、営業誹謗行為で違法だという判断がなされました。

 

この件からわかるように、プレスリリースの書き方には注意が必要です。

断固たる意思表示も大切ですが、勇み足になってしまわないように。

ダメとされた一例として、本裁判例を紹介しました。

 

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お笑いコントの著作権

2015-02-20 21:08:25 | 著作権

アンジャッシュのコントが中国でパクり?みたいなニュースありました。

アンジャッシュの元ネタも知らないですし,中国で放送されたコントの内容も見てないので,パクりなのかどうかとか判断できませんが…

 

ただ,この話題にちなんで,今日は,

お笑いのコントをパクったら法律上何が問題になるんだろう?

というところを少し考えてみようかなと。

 

コントを法律上保護することを考えるとすれば,やはり著作権でしょうね。

著作権で保護されるのは,

 コントのネタを作ったというネタ創作者としての権利と,

 そのネタを演じたことによる実演者としての権利,

の2つが考えられます。

 

今回の件は,ネタのパクりが疑われているので,ネタの話に限って話を進めます。

コントもネタというか脚本があるので,演劇と似たようなものですね。

その意味では,漫才もそうかな。

 

コントや演劇のネタ(脚本)は「著作物」となるので,それに著作権が発生します(何の登録もいらない)。

コンビ2人で考えてネタを作り上げたのなら,著作権は2人の共有です。

 

また,ネタが日本で作られたものでも,条約(ベルヌ条約・TRIPS協定)により,その著作権は中国でも保護されます。

というわけで,アンジャッシュのネタが本当にパクられ,中国で同じコント劇が行われたのなら,著作権侵害ということです。

 

ちなみに,著作権というのは,複製権,上演権,公衆送信権などといった複数の権利の総称のこと。

日本で,お笑いコンビのコントネタをパクって自分たちで同じコントを演じたとすると,

 ・そのコントを公に(特定少数を除くすべて。)上演した場合は上演権侵害

 ・その上演したコントを録画すると複製権侵害

 ・録画したものをYoutube等にアップして誰でも見れるようにすれば,さらに送信可能化権侵害

といったところで,すべて著作権侵害になっちゃいます。

多少変更したとしても,元ネタがわかる程度だと,NGであることには変わりません。

 

とはいえ,上演や複製については,所定の要件に該当すれば問題なし(非侵害)。

上演なら非営利・無料・無報酬という要件,複製なら私的使用の範囲内という要件です。

 

あくまで法律上の話ですけどね。

アンジャッシュは以前にも同じような話があったそうで,その時は,「光栄です。」みたいなコメントをされていました。

権利を主張するかどうかは,権利者しだいということです。

 

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アイデアの具体性

2015-02-17 19:02:33 | 特許

今日は,特許出願をする上での面談に行ってきました。

どんな内容だったか…,

なんて言えるわけありません(笑)

出願前に中身を公開してしまうと,特許権という権利が取れなくなってしまいますので。

 

面談を終えて思ったのは,こんなコンセプトで,あれこれしましたと説明を聴きつつ,

ここはどうなんでしょうとか問いかけながら,どこに発明があるのかいろいろ掘り下げていくのは楽しいですね。

 

今日面談してきたお客さんは,知的財産の部署があって,事前に社内で打ち合わせもされている大手メーカーです。

すでに具体化されたものがあり,その中にアイデアが詰まっているので,普通に話が進みます。

 

ところが…

たまに,個人の方からの相談を受けると,そう簡単にいかない場合も…

 

確かにアイデアはあって,その漠然としたイメージは理解できる。

でも,何せそのアイデアが具体化されていないので,実際にどうやって具体化(商品化)するのか,さっぱり理解できないという場合もあります。

イメージが先行しすぎというか…

そんな状況では,何とかしてくれと言われても,何ともできません。

 

特許の対象となる発明(アイデア)というのは,確かに抽象的な概念で,別に思い付きでもいいんです。

でも,それだけではやっぱりダメで,じゃあそれを実際どういう形にするの,という視点は必要ですね。

アイデアといっても,そのくらいは具体化してないとね。

 

と,今日の打合せを終えて,思ったことをつらつら書いてみました。

 

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パブリシティ権続き

2015-02-13 23:07:23 | 知財一般

前回の記事は、表題のおかげか、いつもよりも閲覧者数が増えました。

オッパイさまさまですね。

 

さて、前回の記事の中で、ピンクレディー事件というものにチラッと触れました。

今日は、そのピンクレディー事件(最判平成24年2月2日判決)について補足しようかと。

最近とはいえ、もう2年前の判決ですが…

 

事件の概要はこうです。

「女性自身」という雑誌に、「ピンク・レディー de ダイエット」という記事が掲載され、ピンクレディーの振り付けを用いたクリス松村さん考案のダイエット法が紹介されました。

その記事に、ピンクレディーのお二人の写真が、許可なく掲載されたということで、パブリシティ権侵害を理由に提訴しました。

なお、写真そのものは、雑誌社が過去に承諾を得て撮影したものなので、著作権は問題になりません。

 

第1審も第2審もパブリシティ権の侵害を否定しました。

そこで、原告のピンクレディー側が上告し、最高裁で判断されることになったというわけ。

 

前回の記事でも触れたように、最高裁は、

・人の氏名や肖像について、人格権に由来する権利として、顧客吸引力を排他的に利用する権利(パブリシティ権)を認める一方、

・表現行為とのバランスを考え、

「肖像等を無断で使用する行為は、

 1 肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し、

    例) ブロマイド、グラビア写真など

 2 商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付し、

    例) キャラクター商品など

 3 肖像等を商品等の広告として使用するなど、

専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に、パブリシティ権を侵害するものとして、不法行為法上違法となる。」

と、3つの類型を挙げて、侵害判断の基準を示しました。

 

その上で、本件の記事は、

・ダイエット法を紹介するものであること

・約200頁中の3頁であること

・白黒写真で、大きさもそれほど大きくない

といった事実から、写真は、記事内容の補足目的で使用されただけで、上記の基準にあてはまらないので侵害しないと結論付けています。

 

以上のような最高裁の判断からすると、 

事業や商品の宣伝広告目的で、有名人の氏名や肖像を使うのは全くのNG。

勝手にキャラクター商品(Tシャツとか下敷きとか)を作るのもNG。

 

一方で、著作権法での「引用」のように、例えばブログ等の記事を書く場合などで、必要かつ相当な範囲であれば氏名や肖像を載せてもセーフ。

あとは、来店した有名人と撮影した写真を店に飾るのもセーフかな。

Tシャツとか下敷き等の作成も、私的な使用ならセーフ。

 

ちなみに、肖像が写真の場合は、それを撮影した人の著作権が別途問題になります。

必要かつ相当な範囲として「引用」したり、私的に使用するだけなら、写真の使用もセーフです。

 

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