このところ、名古屋の天気はあまりよくないです。
週の初めは天気よかったので、その頃が桜の見ごろでしたね。
さて、少し前の判決ですが、商品広告写真の著作権が問題となった裁判例(東京地裁平成27年1月29日判決)を紹介します。
原告はIKEAで、被告はIKEA商品の買物代行業者。
IKEA自身が通販をしていないので、被告がIKEAストアで商品を購入し、注文者に転売するという商売をしてました。
名古屋もそうですが、IKEAストアが近くにない地域もあるので、需要はあるんでしょうね。
この事件、何が問題になったのか。
被告の買物代行業者は、自身のホームページに、IKEAのホームページに載っていた商品写真を勝手に転載していました。
それが著作権侵害だとして、IKEAが商品写真の掲載差止めと損害賠償を求めたというわけ。
両者の間で事前に話し合いがされたようですが、事案を読むと、被告の対応が不誠実だったようです。
判決では、著作権侵害が認められています。
となると、その前提として、IKEAの商品写真に創作性が認められ、著作物だと判断されたことになる。
問題となった商品写真は、たとえばこんな感じのもの。
(IKEAホームページより引用)
裁判所は、 「グラデーションとなるように整然と並べるなどの工夫が凝らされている」として、著作物と認めています。
単に、商品並べて撮影しただけじゃん、とも言えそうですが…
裁判所は、商品の並べ方という被写体になされた工夫を、著作物性を認める根拠としていますが、
そもそも写真の著作物において、被写体になされた工夫を考慮すべきか、という問題が以前からあります。
写真の著作物性は、露光、シャッター速度、構図、陰影等のカメラワークだけで判断すべきなのか、
それとも被写体の工夫も考慮すべきかという議論です。
ここは過去の裁判例でも、見解が割れているところ。
その意味で、この裁判例は、被写体の工夫を考慮した点で、果たしてそれでいいのか?という議論の余地があります。
他にも、
単に商品を正面から撮影しただけじゃん、と思うような写真にも著作物性を認めています (該当する商品写真を見つけられませんでした。)。
被写体を忠実に再現しただけの写真は、撮影者の個性が表現されてないので著作物と認められない、
という話もあり、ここも議論の余地がある。
本件では、どうやら被告は、弁護士を代理人につけていないようなので、そのあたり十分な反論ができなかったのか、IKEAに対する被告の不誠実な対応が裁判官の心証を悪くしたのか。
そのあたりの要素もからんだのかもしれませんが、ちょっと簡単に著作物だと認めすぎなんではないかなぁー、と思う次第。
とはいえ、このIKEAの商品広告写真、
著作物だと認められても、使用料は一つの写真につき1,000円です(安っ!)。
商品の広告写真だから創作性の程度が低いというのが、その安さの理由の一つ。
まあ、裁判所としては、その辺りでバランスを取ったのかもしれません。
以上のように、議論の余地があるにしても、商品広告写真に著作物性を認めた事例の一つであることは確か。
なので、転売業者さんなどは、製造元や販売元のホームページに掲載されている商品写真を、ただ「引用」と書いておけばいいやと安易に考えて、勝手に転載することは、避けた方が無難ですね。
転載の承諾を得るか、自分で撮影しましょう。
ちょっと長くなってしまいました。
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