医師日記

「美」にまつわる独り言です
水沼雅斉(みずぬま まさなり)

文学の美しさ

2006年01月09日 11時12分17秒 | Weblog
 僕は昔から本が大好きです。 

 活字中毒のため、食事中でも厠でも何かしら文字を脳に刷り込みたくなります。

 遺跡本、宗教ネタが好きなことは以前お話しました。

 一番ごひいきの作家は「安部公房」です。 

 阿部公房本はたぶん全部読破していると思います。

 今でも繰り返し読みをしております。

 彼の素晴しさは、文章の「キレ」といいますか、とっても理系の文章なところです。

 無駄をそぎ落として、理論的で、無機的で・・氷のように冷たくて美しい。 

 ねちねちからみついてこないんですね。

 その一字一句が「カッコイイ」のです。

 彼の真骨頂は、日常生活が進行方向で、1度だけずれたとして、それが遠くにいけば行くほど大きなずれになるでしょ?

 針穴くらいの落とし穴から、そうやってずるずると「狂気」という名の袋小路に引きずりこまれていくのです。


 勝手に絶対ノーベル賞を取ると信じて疑いませんでしたが、残念なことにお亡くなりになられて。

 東大の医学部卒なんですよ。

 日本共産党を除名されているので、思想的には元々はかなり左よりなのかなと思いますが。

 代表作の「砂の女」はそういう政治的比ゆ本といわれております。

 小説の実験的取り組みや(表現者としてのアバンギャルド性)、文章表現と形容詞のひとつひとつ、日常に潜む狂気のあぶり出しがもうたまりません。


 「他人の顔」「密会」「けものたちは故郷をめざす」「箱男」などが読みやすいと思いますのでぜひ。

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