医師日記

「美」にまつわる独り言です
水沼雅斉(みずぬま まさなり)

美しきガイア 1

2008年08月18日 12時03分49秒 | Weblog
 「深海のYrr(イール)」という小説を読みました。

 ドイツの「フランク・シェッツィング」という、写真を見る限り・・・自意識過剰ぉ~そうな、ちょいといい男風の作家が書いた、上・中・下巻の3巻からなる、壮大な海洋科学小説です。

 ドイツでは日本よりも読書が盛んなためか、この小説は3巻にまたがり、その読み応えも十分なのですが、ドイツ国内では200万部越え?で・・・

 例のダ・ヴィンチ・コードに負けじ劣らずの人気だったようです。

 すでに大型映画化が決定しているそうで、それを狙っての小説ともいえそうです。




 本書には「海洋科学」を基礎に・・・

 それは海流、海溝、海底火山、プレート、海洋資源、プラント、海洋生物(哺乳類からゴカイ、バクテリアまで)、海洋軍事、Tsunami(津波が世界標準語)・・・

 その他、戦艦はじめ兵器、アメリカ合衆国における危機管理、CIAや軍にホワイトハウス、アメリカ先住民、地球外生命体との交信、地震、コンピュータ、ニューラルネットワーク、精神学、脳科学、気象学・・・・

 目もくらむほどの専門知識が、これでもかとういうくらい、疾風怒濤のごとく押し寄せます。

 また、登場人物は不死身のヒーローではなくほとんどが科学者のため、半ばページかせぎと思えてしまう、不要な戦闘シーンは少ない・・・が、アクションシーンが華だと思う戦闘的な民俗性のせいか・・あるにはある。

 しかし・・・よくまあ、ここまで専門知識を調査して、理解して、フィクションにつなげたものだ・・・。

 筆者のその執念というか、知性、意志の強さにも脱帽です。

 日本人の小説家に少ないのがこのタイプ・・・。

 以前にもお話しましたが、日本の小説は情念・情緒・怨嗟・怨念に基づく、ウェットなお涙頂戴ものが多数を占め、あいまいな根拠というか、科学知識も必要なく、こじんまりとして局所で完結するような・・・

 あるいはケチな恋愛ものが多く、いわゆる文字通りの文系小説が主・・・

 それはそれで結構なこともあるのですが、歌謡曲・演歌チックで、ちと食傷気味・・・。

 たまには最近の西洋での流行、学問に基づく、可及的にノンフィクションに近い、理系の科学フィクション、しかも地球規模の大風呂敷も読みたくなるものです。