医師日記

「美」にまつわる独り言です
水沼雅斉(みずぬま まさなり)

若き田辺朔郎の美意識5

2008年01月28日 07時49分08秒 | Weblog
 続きましては、有名な『南禅寺水路閣』

 お寺の境内を通す必要があったために、京のお寺に見合うデザインを工夫し、違和感なく見させる工夫、このデザイン感覚が素晴らしいでしょ?{

 おみごとっ




 さらにこの琵琶湖疏水の流れに沿って、第2疏水取入口には皇族の「久邇宮邦彦」による揮毫(きごう=筆をふるう)で、

『萬物資始』

(ばんぶつとりてはじむ)

~すべてのことがこれによって始まる~

の洞門に石額が・・・


 そして第1トンネル東口には総理大臣「伊藤博文」の、

『気象萬千』

~千変万化する気象と風景の変化はすばらしい~


 西口には内務大臣「山縣有朋」揮毫、

『廓其有容』

(かくとしてそれかたちあり)

~悠久の水をたたえ、悠然とした疏水のひろがりは、大きな人間の器量をあらわしている~


 第2トンネル東口 に外務大臣、「井上 馨 」、

『仁以山悦智為水歓』

~仁者は知識を尊び、知者は水の流れをみて心の糧とする~

 

 第2トンネル西口 には、海軍大臣、「西郷従道」 、

『随山到水源』

~山にそって行くと水源にたどりつく~

 

 第3トンネル東口 に大蔵大臣 、「松方正義」、

『過雨視松色』

~時雨が過ぎるといちだんと鮮やかな松の緑をみることができる~



 第3トンネル西口 に内大臣、「三条実美」、

『美哉山河』

~なんと美しい山河であることよ~
(国の宝である美しい山河を守るには、為政者の徳と国民の一致が大切との含意も)

 

 そして疏水合流トンネル北口には、「田邊朔郎」の筆で

『藉水利資人口』

(すいりをかりてじんこうをたすく)

~自然の水を利用して、人間の仕事に役立てる~




 と記されていくのですが、言ってみればただの水路のトンネルの入口・出口なのに、その意匠にご注目あれ

 それぞれ個性があって、トンネルの穴の形だとか門のデザインが微妙に異なり、瀟洒で素晴らしいと思いませんか?

 公共事業ですよ


















 この時代の為政者たる者、徳は当然、智慧と知識と教養と、それに筆力までがないと、恥をかいたんですねぇ・・・それに比べて・・・