医師日記

「美」にまつわる独り言です
水沼雅斉(みずぬま まさなり)

「罪と罰」に見た美学14

2007年07月30日 11時22分25秒 | Weblog
 そして「謎とき」の江川氏によれば、ロジオン・ロマーヌイチ・ラスコーリニコフという名前は、ロシア語ではイニシャルがppp(エル)となるそうです。

 ロシアでpppのイニシャルを持つ確率を、ご丁寧に実際に計算し、その数字がとんでもなく低いことを証明し、しかも本当はワシーリイと決まっていた主人公の名前を、ドストエフスキーはあえて直前に変えたということです。

 これは氏が、pppをひっくり返して、ヨハネ黙示録に基づき、主人公に666のアンチクリスト=悪魔の刻印を忍ばせた、とのことです。

 キリスト教徒を迫害したネロという名も、「ゲマトリア数値」で換算すると666、ヒトラーもナポレオンも666だそうです。

 へぇ~

 
 またメイエル説では、老婆には斧で峰打ちし、さらに峰打ちしたという表現を作者が繰り返していることから、峰打ちということは刃は本人に向かいますから、裂かれたのはむしろ「割り裂く」名のラスコーリニコフの精神ではないか、と仮説を立てております。

 
 さらに、ラスコーリニコフの懲役が「7年、わずかの7年、・・・・この7年をあたかも7日間のように・・・」とこの7という数字も強調されますが、これも聖書では過去・現在・未来という3に東西南北という4を足した「完全数」だそうで、ドス氏の忍ばせたプロット・・・。

 そうか、僕たちが日常使用する、いわゆるラッキー7のいわれは、きっとこの完全数なのだな。


 しかも本書の出だしが、ゴーゴリの「狂人日記」のパロディだとのこと・・・。

 ゴーゴリは、ロシアの偉大な詩人、プーシキンに才能を認められた作家であり、あるHPによれば、

「ロシア的凡庸、愚鈍さや腐敗を鋭くとらえ、下層庶民の悲喜劇を苦い笑いのうちに、皮肉と哀感をこめて描いた。それらの作品によってヨーロッパ文学への模励はおわり、ロシアにおける批判的リアリズムの道が拓かれた。 」

 と紹介されております。

 すぐれた芸術家や表現者はそもそも、晩年にはどんどん内側に深く掘り下げられていって孤独に苛まれるか、あるいはその結果、より一層狂信的になるもので、ゴーゴリもしかり・・・しかも彼も同性愛者だったらしい。

 ゴーゴリはドストエフスキーにも、大きな影響を与えたのですね。

 そういえば、ゴーゴリの名前も、ゴーゴリ=ニコライ・ヴァシリエヴィチですから(ワシーリィ→ヴァシリーなので)、ドストエフスキーは主人公の当初の名前の候補を考えれば、ラスコーリニコフのイメージに、ゴーゴリを重ねてこの小説が生まれたのかも。

 しかも、ゴーゴリはВасильевич、僕のお気に入りで何度も写真で登場しているワシリー大聖堂もВасилияですから、つながってますね・・・。