医師日記

「美」にまつわる独り言です
水沼雅斉(みずぬま まさなり)

「罪と罰」に見た美学2

2007年07月18日 15時33分10秒 | Weblog
 ロシアのキジポゴスト、「天にゆらめく炎」、プレオブラジェンスカヤ教会    

 新七不思議に木造建築が・・・というならば、申し訳ございませんが清水寺よりも、22の円蓋(クーポラcupola)を持ち一本の釘も使わずという、こちらの教会のほうがどう見ても・・・


 あ、それでこの巨匠の作品を読んだ拙者の僕は果たして、この地球に生まれてドストエフスキーを読まずに死ねないっしょ!って思ったわけです。

 僕の場合は、この「罪と罰」が「カラマーゾフの兄弟」とともに、高校・大学時代の多感な時期に、思考することの楽しさを知らしめてくれ、哲学や宗教一般に対する憧憬を深めてくれたので・・・こんなにゆがんでしまいました。

 また単に「きれい」にとどまらない、本当の「美」を教えてくれた気がするのです。

 流麗さや華麗さよりも、グロテスクで醜悪で泥臭い中に、すっと伸びる崇高な理念のほうが、より美しさは際立つものです。

 以前、「洗練された悪趣味」というコーナーでも、健康的過ぎる不健全さってものを書きました。


 そして、永らく一部の日本人が熱狂的に愛してやまないドストエフスキー氏は、1821年11月11日に誕生し、 1881年2月9日に逝去されております。

 フランス革命が1789年、明治維新が1868年ですから、徳川家斉から徳川慶喜あたりの人。

 この作品は、ドス氏がギャンブルで作った借金を返すために、26日で口述したというのは有名な話です。

 また彼自身、革命思想により、20代にシベリア流刑になっているのも、これまた有名な話です。

 さらには持病のてんかん持ちであり、ギャンブル好きで、女性関係も放蕩とは申しませんが、妻が二人・・・?

 多分にカラマーゾフ的な人物です(きっと)。

 しかし、その思想や思考は実に深淵で、外貌も洗練という言葉の真逆をいっているようでもありますが、紛れもなく世界文学史上No.1のキングだと僕は考えております。

 ドストエフスキーの生きたロシアは、フランス革命後、農地解放が起こり、皇帝が暗殺されて、無神論の共産主義革命が起きようとしていた、まさに動乱期です。

 またロシアは以前も書きましたが、東ローマ帝国由来の、東方正教の中心的役割を果たすひとつの重要な地域です。

 それ以外に土着のアニミズムとして、母なる大地信仰があります。

 「罪と罰」も有名ですが、「カラマーゾフ」ほどに、美しさが突き抜けて際立ち、重厚かつ繊細で、交響曲のような旋律が奏でられるものではありません。

 しかし氏の人間ワザとは思えない深い洞察と思考、あちこちに仕掛けられる示唆や宗教的意味合い、人間にとって、生きる上で、もっとも尊重されるべきものとは何か・・・彼の作品は、越えられない山のようでもあります。