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チラシの裏

幽霊屋敷

2012年08月20日 | JDカー
早川ポケミスの「震えない男」は持っているのですが、 創元版「幽霊屋敷」をネットで大枚はたいて買ってしまいました。 思い入れがあって、どうしても欲しかったので。 フェル博士ものの「幽霊屋敷」と対になるのはHM卿ものの「貴婦人として死す」。 そのココロは、一人称形式で書かれているから。 バンコランものを除いて、三人称形式で書いてきたはずなのに、 なぜこの2作品は一人称なのでしょうか。 「貴婦人とし . . . 本文を読む

黒死荘の殺人 2

2012年08月12日 | JDカー
「黒死荘の殺人」の陰惨な雰囲気は、HM卿ものの中でも(カー作品の中でも)特筆すべきで、 バンコラン登場作品の雰囲気がまだ残っているというよりも、 さらにメーターの針が振りきった感じで書いているように思えます 37、38年ぶりぐらいに再読してみると、 M・R・ジェイムズのような伝統的なゴーストストーリーのミステリ版というより、 ウィアード・テールズのホラー小説を強引にミステリ側へ引っ張ってきた感じ . . . 本文を読む

黒死荘の殺人

2012年08月06日 | JDカー
カーター・ディクスン名義の第1作(「弓弦城」はカー・ディクスン名義)、 およびHM卿のデビュー作は、作者も気合をいれて書いたのか、 引き締まった文章で、プロットも弛緩せず最後まで心地よい緊張が感じられて、 ミステリの王道のような作品です。 カーがある限りの才能を注いで書き上げた傑作と言いたいところですが、 一気に書きおろした節も見られ、「一角獣の怪」にも見られたように、 事件がひと段落したあとの . . . 本文を読む

皇帝のかぎ煙草入れ その2

2012年05月31日 | JDカー
作品が短めで後半の展開がドライヴがかかってぐいいぐい読ませるので、 なんとなく冒頭の叙述トリックが見過ごされがちですが、 寝室でのネッドとイヴのやりとりは綱渡りと言うより、 視点が随意に移動して人によっては「ひどいアンフェア」と言いたくなるでしょうね。 都合の悪い部分はどうとでもとれる曖昧、かつダブルミーニングな言い回しでサラリとやり過ごして、 「茶色の手袋」へと注意を集めるやり口。 クリスティ . . . 本文を読む

皇帝のかぎ煙草入れ

2012年05月30日 | JDカー
祝・新訳! カーにしては珍しく女性視点の作品なので、女性が翻訳して正解でしょう。 美人で金持ちで少し気の弱いヒロインを取り合う、2人の男。 かたやイケメンだけど傲岸不遜、 もう一人は堅実な銀行役員で優しいが そのじつ世間体を気にするとっちゃんボーヤだけど・・・。 ヒロインはどちらと結ばれるのでしょうか。 さーて、この作品はクリスティが誉めたということから(※)「傑作だ」という声と、 「カーらしくな . . . 本文を読む

バンコランがクビになったわけ

2012年04月07日 | JDカー
カーの初期におけるバンコラン4部作において、最初の3作「夜歩く」「絞首台の謎」「髑髏城」と、 4作目の「蝋人形館の殺人」とは、謎の重層度が格段に違います。 最初の3作は凡庸な犯人あてミステリの域を出ていませんが、 「蝋人形館の殺人」にはカーが後に発表する傑作の予感を思わせる部分があります。 バンコランは彼自身の性格設定が災いして、 物語の途中でプロットを割ってしまうというやっかいな行動をとるこ . . . 本文を読む

蝋人形館の殺人

2012年03月25日 | JDカー
創元推理文庫からカーの「蝋人形館の殺人」新訳版が出ました。 こんな話だったのかと新鮮な気持ちで読んでいます。 (ポケミス版を読んだときは、どんな話なのかさっぱり分からなくて…) 雰囲気が横溝正史の『三つ首塔』を思わせるのは、 退廃したパリの夜が、戦後の混乱時となんだかダブるからか。 訳者がディー判事ものの和邇桃子さんで、 文体も乱歩や正史を思わせるのは、そのあたりの線を狙ったんでしょうか . . . 本文を読む

猫と鼠の殺人

2012年02月29日 | JDカー
「連続殺人事件」に続いて発表された(1941年)フェル博士ものですが、 カーの作風が明らかに変化してきたことがよく分かります。 とくにこの作品はオカルトなし、ドタバタなし、不可能犯罪なし、 登場人物は最小限におさえられ、コンパクトなミステリとして成立しています。 しかしダグラス・グリーンの評伝「奇蹟を解く男」では、 『(猫と鼠の殺人における)ラストの論理性にはまったく納得できない』と書かれています . . . 本文を読む