奇蹟を解く男

カーの魅力が楽しめる短編として創元推理文庫カー短編集３に入っている、
「奇蹟を解く男」をオススメしたいです。
短編集に収録されているので見逃されやすいのですが、けっこう面白いです。

冒頭の主人公とヒロインの邂逅場面
（寝坊してパンをくわえた女子が路地で主人公とぶつかる、という典型的なマンガそのもの）から、
怪談じみたエピソード、ＨＭ卿による謎解きと殺人、
最後には迷路でクライッマクスというカーのショーケースみたいな作品です。
短いのが残念なくらい。大好きで何度読み返したか分かりません。

どういったいきさつで書かれたのか分かりませんが、
いずれ長編に書き直すつもりだったのかもしれません。
メイントリックを思いつかなかったので、短編のままになってしまったと勘ぐってみました。

ＨＭ卿は初期の設定に戻り、例の部屋に居座って「奇蹟担当局」という不可能犯罪課の親玉に就任しています。
ＨＭ卿を犯罪へ不自然なく関わらせるための布石のようですが、
惜しいかな「奇蹟担当局」はこれ１作だけだったようです。
ところでこの３巻は「パリから来た紳士」「とりちがえた問題」等良い作品が集まってます。
「空部屋」がいくつかの長編のプロットを含んでいるところが興味深いですね。
他の巻も面白いですが個人的にはイチオシです。

■カー短編集３　創元推理文庫