今日はジョン・ディクスン・カーの命日ということで(1977年2月27日永眠)、
好きな作品ついての話を花替わりに墓前へ。
どれか1冊に決めるとなるとたいへん難しい作家なのですが、
作品の出来とは別の基準で「連続殺人事件」がマイフェイバリットです。
カーの著作の中ではB級クラスの作品ですよね。
トリックは大失敗しているしプロットは分かりにくい(これはこちらの頭がぼんやりしているからでしょう)。
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突然ですが、早川書房には「ジョン・ディクスン・カー選集」を出していただきたい。
全集ではないところがミソで、カー・マニア(古本屋やネットで探している方々)向けに、
カー作品の中でもB級作品の誉れも高い(?)作を中心に編んだ選集を、
新訳と充実した解説でもって出すという企画です。
『蝋人形館の殺人』
『四つの凶器』
『弓弦城殺人事件』
『毒のたわむれ』
『パンチとジュディ』
『五つの箱の死』
『震 . . . 本文を読む
ディクスン・カーの作品には傑作も多い半面、失敗作も多いんですね。
どの作品が傑作で、どれが失敗作なのかは、人それぞれでしょうが、
「死時計」は失敗作ではないにしろ傑作や佳作に推すのは勇気がいります。
「ジョン・ディクスン・カー 奇蹟を解く男」ではカーの創作マナーについても知ることができますが、
「弓弦城殺人事件」は「未消化のアイデアを集めたもの」(同書P137)とあります。
カーが経済的理由で執 . . . 本文を読む
カーの作品を読み直す作業が妙に面白いこのごろです。
昔ちゃんと読んでいなかったことのおかげですねえ。
この「死時計」、「つまらない」「わけがわからん」とかいろいろ評価(おもに負のほう)があるようですが、
分析してみると意外に面白い点がでてきます。
まずは「劇場型犯罪」であること。
カーには「衆人監視の中での不可能犯罪」をテーマにした作品が多くあります。
デビュー作の「夜歩く」がそうですし、
代表 . . . 本文を読む
いまは無くなってしまった社会思想社から、
現代教養文庫というありあがたい名前の文庫が出ていました。
(社会思想社は2002年に事業を停止)
その中に「探偵小説の謎」(江戸川乱歩著)という両刃の剣のような本がありました。
たしかにミステリへの入り口にはぴったりなのですが、
あまり読みすぎると、
乱歩が紹介した本を読んだときに妙な既視感をおぼえるのが玉にキズ。
現行本では上の「江戸川乱歩全集 第23 . . . 本文を読む
「孔雀の羽根」 カーター・ディクスン
30年ぶりに読み返したんですがね、これはまた真っ向勝負のミステリですね。
オカルト、ドタバタ、活劇もなし、
ひたすら「WHO」と「HOW」を読者に挑んでいる、といった感じです。
それだけにカーとしては珍しく、オーソドックスなミステリフォーマットで書かれています。
視点はポラード巡査部長に固定されているので、殺人の起きた後の関係者への尋問が続き、
やや退屈な . . . 本文を読む
この作品でカーはなにをしたかったのでしょうか。
事件の世界を外界と隔絶させて、クローズドサークルの中での犯人探し、が一点。
それと、被害者の身元を曖昧にしておいて意外な犯人トリックをしかけることも一点。
被害者の身元を曖昧にするトリックは「盲目の理髪師」「九人と死で十人だ」で使われていますが、
この作品の被害者は「ドラモンド」として殺されたのか、「ガスケ」として殺されたのか、
最後まで判然としませ . . . 本文を読む
創元推理文庫から、カーター・ディクスン「一角獣の殺人」が出ました。
別冊宝石~国書刊行会世界探偵小説全集といちおう読んできていますが、
じつはあまりちゃんとストーリーを把握していないのです。
結局どんな話だったの? という感じです。
せっかくなので、創元文庫版でしっかり筋を追ってみたいと思います。
ところで、創元文庫版13ページにジャズソングの歌詞で
「イエス、ウィ ハヴ ノーバナナズ」と書かれ . . . 本文を読む
ところで、カーのことを書いたら、思いついたことがありました。
カーはフェル博士もの、HM卿ものといったルーティンワークのほかにノンシリーズものの長編をいくつか書いています。このノンシリーズものが書かれた理由があるとしたら。
「毒のたわむれ」「弓弦城殺人事件」はバンコランからフェル博士・HM卿への、シリーズ探偵の乗り換えの合間に実験的に書かれた、というのは定説になっているようです。
「火刑法廷」はノ . . . 本文を読む
John Dickson Carr collection 3
曲った蝶番 The Croked Hinge 1938
物語は、現在の准男爵がじつは偽者で、本当の准男爵が屋敷に現れて地位を請求する、というところから始まります。
珍しくストレートなプロットですが、「現在の准男爵が偽者ならば、なぜ偽者が殺されなければならないのか」という、ひねりがうまく働いていません。
Who dune it というよ . . . 本文を読む
John Dickson Carr collection 2
連続殺人事件 The Case of the Constant Suicides 1940
カー版「バスカヴィル家の犬」。
旧家に祟る亡霊、
ダートムアとスコットランドと方向は違えど地方風景が背景、
犯人のスタンスが同じ。
フェル博士と犯人が初めて対面する場面と、
ホームズがバスカヴィル館で肖像画から犯人の顔を見つける場面が
なぜ . . . 本文を読む
John Dickson Carr collection 1
「爬虫類館の殺人」 He Wouldn't Kill Patience 1944
トリックにかんしてはいろんな人が書いているので、
そのトリックを支える著者の仕込みについて。
殺人の現場を見た目撃者がいて、その人間がすぐに証言をしていれば、
HM卿が乗り出すまでもなく、すぐに犯人は捕まったはず。
そうならない理由を、その目撃者のキ . . . 本文を読む
ジョン・ディクスン・カー、「三つの棺・密室講義」の真実
逆転プロット
カーはいわゆる本格ミステリ小説における「画一的展開」をさかさにしたようなプロットをときおり使用しています。「画一的展開」とは「殺人→警察登場→尋問→探偵登場→第二の殺人→解決」といったような(展開内容は多少前後するにしても)お決まりのパターンを思い浮かべてもらえばいいでしょう。
たとえば「パンチとジュディ」では、ありきたりな展開 . . . 本文を読む
ラジオドラマ集なのでシナリオ形式なのが惜しいけれど、カーの魅力の一端が素直に楽しめます。ラジオドラマという形式を逆手にとったカーの才気が詰まっていて、とくに意外な犯人の「誰がマシュー・コービンを殺したか」をはじめ他の2編もふくめておすすめです。
「幻を追う男 ジョン・ディクスン・カー著 論創社」 . . . 本文を読む
買ったわたしがバカでした。カーの贋作とはいえ、リスペクトするならば本気で書くはず、と思い込んだのが間違いでした。これが実力なんですね。おまけに趣向の自慢たらたらの自作解説には驚き。捧げられたカーも困惑してそうな。
「密室と奇蹟 J・D・カー生誕百周年記念アンソロジー 芦辺拓他 東京創元社」 . . . 本文を読む