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新訳「爬虫類館の殺人」

2025年06月29日 | JDカー
★「爬虫類館の殺人」の新訳が出ましたね。
■タイトルは変わらずで安心した。訳者も白須清美で良かった。カーの翻訳では彼女が一番好きだな。
★ほかの人に失礼です。
■中村能三訳のイメージを変えずに読めるのは嬉しいね。
とはいえ、50年ぶりにちゃんと読み返してみたら、勘違いしていたところがいくつかあったよ。
★50年前の旧本をみたら、値段が180円! 奥付に翻訳者中村能三の住所まで掲載してあります。狛江市ですって。
■時代だね。で、マイク・パーソンズ(パースンズ)の「灯火!」の声は、あまりトリックに関与してなかった。
★「ホーリス」が「ホーレス」、「ルイズ」が「ルイーズ」に変更され、「ノーブル大尉」は「キャプテン・ノーブル」に、
ジャック・リヴァースは「博士」から「医師」に肩書が変わっています。
■ノーブルは探検隊長という意味のキャプテンだろうから、軍の階級は使わないほうが妥当だろう。
リヴァースは医師としての「ドクター」だよね。
それはさておき、「Who done it」を捨てて「How done it」に振り切ったせいか、
話の筋を読者にミスリードさせるほどには膨らませていない点が気になる。
★殺人トリックに自信があったからじゃないですか。アッと言わせるぐらいに。
■最後のほうで、ルイーズが義理の娘(被害者の亡妻の連れ子)だったという事実や、
ホーレス叔父が事業に失敗して借金を抱えていた、ということがちらりと書かれているが、
それがプロットとほとんど関係していないのは何故だろうね。
★雑誌掲載用の長さに関係しているのかも。「爬虫類館の殺人」は1944年に雑誌に分載されています。
■30年代だったら、娘と叔父の背景をもっと早い時点で出してきて、その筋に読者を誘導していたような気がするし、
50年代以降だったら義理の娘の恋人は~、なんて展開するんだろうな。
★掲載は「Woman's journal」なので、若い男女は落ち着くところへ落ち着くというお話ですが。
■アグネス・ノーブルは、カーにしては挑戦したキャラクターではなかったか。
中年女性ながらアクの強さはたぶんカー作品の中で一、二を争う。その彼女にノーブルって名前を振っちゃう。
★二位はヒラリイ・キーンでしょう。
■話をふくらませなかった理由が雑誌掲載のためか、あるいは書けなくなりはじめたからなのか、気になるところだね。
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