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チラシの裏

ウドルフォの匂いがするぞ!

2012年12月23日 | JDカー
「ウドルフォ(未詳)の匂いがするぞ!」(旧版 曲った蝶番 P192 1974年9版)
「『ユードルフォの秘密』か!」(新訳 曲がった蝶番 P205 2012年12月初版)
「ふん、こりゃウドルフォかな?」(ハヤカワポケミス P130)

自動人形を前にしたフェル博士の台詞が、30ん年ぶりにその意味がはっきりしました。



アン・ラドクリフの書いたゴシック小説の古典「ユードルフォの秘密」(「The Mysteries of Udolpho」 1794年)のことだったんですね。
残念ながら「ユードルフォの秘密」の邦訳は出ていないので確かめるすべはありませんが、
自動人形が出てくるんですかね。

そういえば、ちくま文庫から出た新訳「ブラウン神父の無心」の中の「透明人間」にも現代的な自動人形が登場します。
「透明人間」のトリックより、被害者の発明した自動人形のほうが印象的でした。

閑話休題。

新訳のジャケのイラストもなかなかの迫力で、カーの本はこうでなくっちゃあ!
作品中の描写からすると、もっと壊れていたはずですが、
不気味さはこのイラストのような壊れかけのほうが5割増しですね。

で、殺人事件の謎を解くことより、容疑者全員が自動人形の謎をおいかけている感じがするのはわたしだけでしょうか。
第2部のラストで、階段を落ちた自動人形が目撃者のメイドの病室へ突入するところは、
想像するだに恐ろしいです。
ドアをぶち開けてこの人形が現れるんですよ~。

脂の乗りきった時期のカーが、「いっちょ面白い本を」と
『タイタニック号・魔女崇拝・自動人形』の三題噺を使ったミステリを書き上げた
と思ってもいいくらいに、面白かったです。
こんなに面白いんだ、と昔の自分の言いたいくらい。

中村能三版(旧版)は読みづらかったんですけど、名前は旧版のほうがよかったなあ。
(デインさんより、ミス・デインのほうがいい。
ちなみにカー全著作中のヒロイン総選挙が行われたなら、
このミス・デインに1票いれます。CDを買って100票入れてもいいくらい)

福井健太の解説もコンパクトで要領よく読みどころを押さえていてGood。
その解説から一文を借りるならば「圧倒的な読ませる力が宿っている」、
これにつきます。

■曲がった蝶番 J・D・カー 創元推理文庫
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