【サケ漁をするアイヌ民族の畠山敏さん… (東京新聞2019年9月2日)↑】
(2024年06月02日[日])
未だヘイトをまき散らす国会議員まで居る始末な国・ニッポン。どうなってんのかね?
木原育子記者《アイヌ民族からは、相次ぐ差別発言への罰則規定の導入など法改正を求める声が強い。だが政府の腰は重く、議論は低調だ。先住民族に関して、この国の無関心の根本原因は何なのか。》、《「私たちを観光資源としか見てない…」5年経ったアイヌ施策推進法は「抜け殻のような法律」》。
『●『ドキュメント 憲法を獲得する人々』読了(4/4)』
「【田中伸尚著、『ドキュメント 憲法を獲得する人々』
その他、「「神主の娘」の意見陳述」の木村さん、
「揺れる心で「アイヌ宣言」」の多原さん、
「在日だけど、日本社会の一員だから」の徐さん、
「沖縄に基地があるかぎり」の中村さん」
『●「「希望はTPP。」なのか」
『週刊金曜日』(2013年4月12日、939号)』
「平田剛士氏【アイヌ人骨〝発掘〟研究の実態は依然不明
北大のずさんな管理が発覚】……」
『●「安倍首相の暴走と「妄想」」
『週刊金曜日』(2014年2月7日号、978号)について』
「平田剛士氏【いまだ返還されず 全国12大学にアイヌ遺骨1636体!】、
「遺骨を返還すれば大学自体も癒される。アイヌも力を得て、
誇りを取り戻せるはず……より人間的な大学に変わるための
チャンスととらえることもできる」」
『●【<金口木舌>二風谷判決と沖縄】:
「わが国の統治が及ぶ前から北海道に住み…先住民族に該当する」』
《「わが国の統治が及ぶ前から北海道に住み、独自の文化を保っており、
先住民族に該当する」。1997年3月、札幌地裁で言い渡された判決に
原告のアイヌ民族の人々は驚き、涙を流した ▼司法の場で初めてアイヌを
先住民族と認めた、二風谷(にぶたに)ダム建設を巡る訴訟の判決だ…
▼しかし政府は沖縄の人々の権利保護を求めた国連自由権規約委員会の
勧告を無視》
『●《アイヌ民族…サケの捕獲は認められた先住権…
儀式用のサケ十数匹を捕獲…サケ漁をするかどうかは自己決定権だ》』
《畠山敏さん(77)が、サケの捕獲は認められた先住権だとして、
道の許可を得ずに儀式用のサケ十数匹を捕獲した。道職員が制止する
場面もあったが、畠山さんは「サケ漁をするかどうかは自己決定権だ」
として決行した。》
『●【<金口木舌>サケ漁は自己決定権】…《アイヌ民族は
先住民族と認められたが、権利回復の闘いは沖縄同様、道半ば》』
《▼アイヌ民族は先住民族と認められたが、権利回復の闘いは
沖縄同様、道半ばだ。「アイヌモシリ(北海道)に土足で
上がり込んできた和人には左右されない」と訴える畠山さんの
言葉は重くて深い》
『●《「アイヌの伝統」…捨て身ともいえる畠山さんの行動が
先住民族とは何かを問いかける》…そして、「言葉」を殺すな!』
『●「国が象徴空間に集約することに我慢がならない。
先祖の遺骨をコタンに返してほしい」』
『●琉球遺骨返還請求訴訟《旧京都帝国大…の人類学者が今帰仁村の
百按司墓から持ち出した遺骨を京大が占有》は違法…京都地裁が請求を棄却』
『●琉球遺骨返還請求訴訟《沖縄アイデンティティーのよりどころである
遺骨を本来あるべき場所に-という原告の訴えが…入り口論》で棄却』
『●《柔らかな響きと独特の語感が特徴のアイヌ語は、消滅の危機にある
とされています》…萱野茂さんは「言葉は民族の証」と訴えてきた』
『●【<金口木舌>差別を乗り越える】…《アイヌ民族…差別を乗り越え固有
の歴史、文化を守るすべを模索する状況は沖縄にも通じている》(1/2)』
『●【<金口木舌>差別を乗り越える】…《アイヌ民族…差別を乗り越え固有
の歴史、文化を守るすべを模索する状況は沖縄にも通じている》(2/2)』
『●東京新聞【アイヌ実名中傷動画を拡散 自民・杉田水脈氏、民族差別
助長】《差別的言動を繰り返す…さらなるレイシズム助長》する醜悪さ』
『●森達也監督《特に不安や恐怖を感じた時、異質なものを見つけて排除しよ
うとする…この場合、髪や肌の色、国籍、民族、信仰、そして言葉。》』
「大谷昭宏さん《森監督は…「…そして言葉。何でもいい」と言う。
翻って現代の社会。チマ・チョゴリに、アイヌの民族衣装、
身なりで人をあげつらう女性議員がいる。「朝鮮人虐殺の記録は
政府内には存在しない」と言い張る官房長官がいる。虐殺された
朝鮮人の慰霊式に長年送ってきた追悼文を「史実は歴史家の判断に
まかせるべき」と言って、突如、取りやめた都知事がいる。
100年、何も学ばなかった人がいる。100年、何かを学ぼうとさえ
しなかった人がいる-。》」
『●杉田水脈氏をヅボヅボ《党や政権内に厳しく責任を問う様子も見られない》
…自民党やキシダメ首相・自民党総裁の人権感覚は彼女と同じだから』
『●杉田水脈氏は《啓発》されず…《この発言をゆるし公認を出し続けている
自民党自体が差別的であることに気づいていないのならば、既にそれは同罪》』
『●東京新聞木原育子記者【こちら特報部/「盗ったものは謝って返して」
アイヌ民族が求める遺骨返還 「慰霊施設」に集めて移管じゃ浮かばれない】』
『●少なくとも2016年の国連女性差別撤廃委員会の参加者へのヘイト発言以来、
今も一貫してヘイトをまき散らす国会議員をヅボヅボ脱税党は許し、公認』
『●アイヌの人々は何を求めているか? アイヌ民族の遺骨の盗掘、墓荒
らし…倫理観無き情けない研究者・学会、《過去の盗掘の「謝罪」》無し』
木原育子記者による、東京新聞の記事【こちら特報部/「私たちを観光資源としか見てない…」5年経ったアイヌ施策推進法は「抜け殻のような法律」】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/330052?rct=tokuhou)によると、《アイヌ民族を日本の先住民族と明記したアイヌ施策推進法が2019年に施行され、24日で5年が過ぎた。同法は付則で施行5年を過ぎた段階で「必要であれば見直し」と規定している。アイヌ民族からは、相次ぐ差別発言への罰則規定の導入など法改正を求める声が強い。だが政府の腰は重く、議論は低調だ。先住民族に関して、この国の無関心の根本原因は何なのか。(木原育子)》。
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【https://www.tokyo-np.co.jp/article/330052?rct=tokuhou】
こちら特報部
「私たちを観光資源としか見てない…」5年経ったアイヌ施策推進法は「抜け殻のような法律」
2024年5月29日 12時00分
アイヌ民族を日本の先住民族と明記したアイヌ施策推進法が2019年に施行され、24日で5年が過ぎた。同法は付則で施行5年を過ぎた段階で「必要であれば見直し」と規定している。アイヌ民族からは、相次ぐ差別発言への罰則規定の導入など法改正を求める声が強い。だが政府の腰は重く、議論は低調だ。先住民族に関して、この国の無関心の根本原因は何なのか。(木原育子)
◆先住権を認めず、ヘイト発言への罰則規定もない
「役所の方はなぜ顔を出せないのか。私たちは日本の同化政策の被害者であるのに、身銭を切って遠路かけつけたのに…」
15日、法改正を目指して国会内で開かれた集会の冒頭、北海道平取町からやってきたアイヌ民族の木村二三夫さん(75)が声を震わせた。出席を求めた省庁担当者や与党系の政治家の姿は、会場にない。木村さんはこう続けた。「先住民族としての権利や違反行為に対して罰則行為が何も書かれていない、抜け殻のような法律だ」
(アイヌ民族の人らがアイヌ施策推進法の”作り直し”
を求め、声を上げた集会=国会内で)
札幌から駆けつけたアイヌ民族の沖津翼さん(43)は「アイヌ民族の名前を使った当事者不在の法律だ。アイヌ民族の私たちを観光などの資源としか見ていない」と切々と語った。
アイヌ民族の人らは、法の主体にアイヌ民族を位置付けていないと憤る。先住民族としながらも、地元でサケを捕るなどの先住権は認めず、ヘイト発言についても罰則規定はなく、理念法にとどまるからだ。
◆遺骨返還の項目を設けることを求める
集会を主催した研究者や当事者らでつくる市民団体「アイヌ政策検討市民会議」は明治期以来の歴史的不正義を明示せず、市町村の意向と計画に基づき財政投下の措置がとられる仕組みになっていることを「国際法の流れをくんでいない」と指摘。「国の責務」として、大学などが保管するアイヌ民族の遺骨返還の項目を設けることを求めた。
アイヌ民族らでつくる「少数民族懇談会」の原島則夫会長(74)は、同化政策の謝罪と「法律名をアイヌ基本法に」と訴えた。
都内に住むアイヌ民族の宇佐照代さんは「アイヌ民族は全国にいる。北海道に住んでいないと声が届かないのはおかしい」と訴えた。
◆省庁担当者たちの「出席できない理由」は
なぜ、省庁担当者らは出席できなかったのか。集会終了後「こちら特報部」が担当部局がある庁舎に出向くと、大半の職員が出勤し、仕事をしていた。
アイヌ施策推進室の梶本洋之参事官は「いろいろな市民団体がある。一つの団体の行事に参加すると不公平が生じる」と説明。そして「集会は15日で、施行5年となる24日の前でもあったから」とも話した。
では、菅義偉前首相はどうか。官房長官時代に法制定を進め、アイヌ民族の文様が入ったマスクを着けるなど熱心だったはず。だが、事務所に取材を申し込むと「受けられない」の一点張り。理由も「言えない」とかたくなだった。
◆世界の潮流に反する日本の無関心、原因はどこに
そんな中、24日の閣議後会見で、自見英子地方創生担当相は「法の施行状況について、アイヌの方々のご意見を広く伺って、検討を進めていく」と表明。ただ前出の梶本参事官に詳細を尋ねると「特定の団体にだけ意見を聞くことはないが、どういう方法で意見を聞くか、検討に少し時間をかけたい」とした。
先住民族に関する施策の推進は世界の潮流だが、日本における無関心の原因はどこにあるのか。
先住民族に詳しい鹿児島純心大の広瀬健一郎教授は「日本では、学習指導要領にも体系的にアイヌ民族を学ぶ機会は位置付けられておらず、知らないことが無関心につながっている」と指摘。「カナダでは先住民族学習が教科としてあり、学ぶ環境が当たり前にある。日本でも、大学共通テストの外国語にアイヌ語を選択できるようにするなど、機運を広げるやり方はいくらでもある。法律制定で終わりではなく、抜本的な改革が求められる」と続けた。
【関連記事】謝罪もせず「研究させろ」とは何事か アイヌ民族と研究者の初対話から考えた「知りたい欲求」が持つ暴力性
【関連記事】「極めて深刻な消滅危機」とされたアイヌ語、車内放送で聞けるバス路線がある「民族の文化に触れてほしい」
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【サケ漁をするアイヌ民族の畠山敏さん… (東京新聞2019年9月2日)↑】
// (2023年12月24日[日])
「墓を暴いて先祖の遺骨を集めた学者たちの責任をあいまいにしたまま、国が象徴空間に集約することに我慢がならない。先祖の遺骨をコタンに返してほしい」(東京新聞、2015年1月31日)。
「研究目的」(!!)で勝手に盗掘して「大量の遺骨や副葬品が返還されないまま」に放置する大学人、そして、政府のいい加減な対応。一体全体、どんな国? 当事者が「嫌だ」と言っているにもかかわらず、平気で「人権侵害」。「墓を暴いて先祖の遺骨を集めた学者たちの責任をあいまいにしたまま、国が象徴空間に集約することに我慢がならない。先祖の遺骨をコタンに返してほしい」と云う叫びにどう応えるつもりか?
『●『ドキュメント 憲法を獲得する人々』読了(4/4)』
「【田中伸尚著、『ドキュメント 憲法を獲得する人々』】……
その他、「「神主の娘」の意見陳述」の木村さん、
「揺れる心で「アイヌ宣言」」の多原さん、
「在日だけど、日本社会の一員だから」の徐さん、
「沖縄に基地があるかぎり」の中村さん」
『●「「希望はTPP。」なのか」
『週刊金曜日』(2013年4月12日、939号)』
「平田剛士氏【アイヌ人骨〝発掘〟研究の実態は依然不明
北大のずさんな管理が発覚】……」
『●「安倍首相の暴走と「妄想」」
『週刊金曜日』(2014年2月7日号、978号)について』
「平田剛士氏【いまだ返還されず 全国12大学にアイヌ遺骨1636体!】、
「遺骨を返還すれば大学自体も癒される。アイヌも力を得て、
誇りを取り戻せるはず……より人間的な大学に変わるための
チャンスととらえることもできる」」
『●【<金口木舌>二風谷判決と沖縄】:
「わが国の統治が及ぶ前から北海道に住み…先住民族に該当する」』
《「わが国の統治が及ぶ前から北海道に住み、独自の文化を保っており、
先住民族に該当する」。1997年3月、札幌地裁で言い渡された判決に
原告のアイヌ民族の人々は驚き、涙を流した ▼司法の場で初めてアイヌを
先住民族と認めた、二風谷(にぶたに)ダム建設を巡る訴訟の判決だ…
▼しかし政府は沖縄の人々の権利保護を求めた国連自由権規約委員会の
勧告を無視》
『●《アイヌ民族…サケの捕獲は認められた先住権…
儀式用のサケ十数匹を捕獲…サケ漁をするかどうかは自己決定権だ》』
《畠山敏さん(77)が、サケの捕獲は認められた先住権だとして、
道の許可を得ずに儀式用のサケ十数匹を捕獲した。道職員が制止する
場面もあったが、畠山さんは「サケ漁をするかどうかは自己決定権だ」
として決行した。》
『●【<金口木舌>サケ漁は自己決定権】…《アイヌ民族は
先住民族と認められたが、権利回復の闘いは沖縄同様、道半ば》』
《▼アイヌ民族は先住民族と認められたが、権利回復の闘いは
沖縄同様、道半ばだ。「アイヌモシリ(北海道)に土足で
上がり込んできた和人には左右されない」と訴える畠山さんの
言葉は重くて深い》
『●《「アイヌの伝統」…捨て身ともいえる畠山さんの行動が
先住民族とは何かを問いかける》…そして、「言葉」を殺すな!』
『●「国が象徴空間に集約することに我慢がならない。
先祖の遺骨をコタンに返してほしい」』
『●琉球遺骨返還請求訴訟《旧京都帝国大…の人類学者が今帰仁村の
百按司墓から持ち出した遺骨を京大が占有》は違法…京都地裁が請求を棄却』
『●琉球遺骨返還請求訴訟《沖縄アイデンティティーのよりどころである
遺骨を本来あるべき場所に-という原告の訴えが…入り口論》で棄却』
『●《柔らかな響きと独特の語感が特徴のアイヌ語は、消滅の危機にある
とされています》…萱野茂さんは「言葉は民族の証」と訴えてきた』
『●【<金口木舌>差別を乗り越える】…《アイヌ民族…差別を乗り越え固有
の歴史、文化を守るすべを模索する状況は沖縄にも通じている》(1/2)』
『●【<金口木舌>差別を乗り越える】…《アイヌ民族…差別を乗り越え固有
の歴史、文化を守るすべを模索する状況は沖縄にも通じている》(2/2)』
『●東京新聞【アイヌ実名中傷動画を拡散 自民・杉田水脈氏、民族差別
助長】《差別的言動を繰り返す…さらなるレイシズム助長》する醜悪さ』
《持ち去った側》の論理、《遺骨を集め保管した側》の論理で良いのか? 《だが、これで本当に「解決」と言えるのか。持ち去った側主導の返還のあり方について改めて考えた。(木原育子)》。《◆デスクメモ 人権侵犯の認定を受けてもなお、アイヌ民族への差別発言を続ける与党議員がいる。それに対して党内での処分はない。「共生」を名乗る施設を造ったところで、政府に誠意を感じようはずもない。少数者の尊厳を奪う無神経さと反省の欠如。それは遺骨の扱いにも表れていないか。》
木原育子記者による、東京新聞の記事【こちら特報部/「盗ったものは謝って返して」アイヌ民族が求める遺骨返還 「慰霊施設」に集めて移管じゃ浮かばれない】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/292246?rct=tokuhou)によると、《過去に発掘・収集され、博物館や大学に保管されていたアイヌ民族の遺骨返還が、国の指針に沿って進んでいる。引き取り手がないと判断された遺骨は、民族共生象徴空間(ウポポイ、北海道白老町)内の慰霊施設に集約している。「こちら特報部」の調査でも、博物館や大学が抱える遺骨の全体数が減っている実態が分かった。だが、これで本当に「解決」と言えるのか。持ち去った側主導の返還のあり方について改めて考えた。(木原育子)》。
《北海道大のジェフリー・ゲーマン教授(多元文化教育論)は「国は植民地主義や人種主義といった文脈を抜きに遺骨問題に対応しているが、全く本質を捉えていない。遺骨を集め保管した側が、民族の尊厳への打撃を受けた側に自ら遺骨を取り戻す手続きを強いること自体、人道的配慮を欠いている」と訴える。前出の木村さんも言う。「アイヌ民族から土地や言語、文化を奪ったこの植民地政策の成功体験を、その後アジアに広げて奪い尽くしていった。その根っこが遺骨返還のあり方にも表れている。過去に目を閉じるものに未来はない。謝罪なき返還は全く意味がない」》。
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【https://www.tokyo-np.co.jp/article/292246?rct=tokuhou】
こちら特報部
「盗ったものは謝って返して」アイヌ民族が求める遺骨返還 「慰霊施設」に集めて移管じゃ浮かばれない
2023年11月26日 12時00分
過去に発掘・収集され、博物館や大学に保管されていたアイヌ民族の遺骨返還が、国の指針に沿って進んでいる。引き取り手がないと判断された遺骨は、民族共生象徴空間(ウポポイ、北海道白老町)内の慰霊施設に集約している。「こちら特報部」の調査でも、博物館や大学が抱える遺骨の全体数が減っている実態が分かった。だが、これで本当に「解決」と言えるのか。持ち去った側主導の返還のあり方について改めて考えた。(木原育子)
◆返還先決まらない遺骨が慰霊施設に
「北海道博物館として、こういった形で遺骨返還手続きの方針を決めるのは、これが最初で最後」。道庁のパブリックコメント担当者、墓田裕二係長が話す。
道博物館には、前身の道開拓記念館だった1970〜80年代に寄贈されたアイヌ民族の遺骨7体と副葬品が保管されている。出土地域を調査で特定したとして、返還手続きの方針案に関するパブリックコメントを実施した。その結果を踏まえ、来週にも方針を決定する見通しだ。
(北海道白老町のウポポイにある慰霊施設。博物館や大学に
保管されていた遺骨が集約されている
(内閣官房アイヌ総合政策室ホームページより))
道博物館の小野寺努主幹は「遺骨は特別な部屋を作り、湿気や温度、空調に気を使いながら保管してきた」とこれまでを振り返る。
方針案では、遺骨がどの地域のアイヌ民族のものかなどの情報を6カ月間公開し、返還申請の受け付けを開始。アイヌ民族の団体から返還申請があれば協議し、なかったり、認められなかったりした場合、ウポポイ内の慰霊施設に集約するとしている。
道博物館が想定するプロセスは、文化庁が昨年7月、博物館に保管されているアイヌ遺骨の返還に関して、発出した通知に沿っている。遺骨の詳細が分からず、返還申請を受け付けていない博物館もあるが、文化庁企画調整課は「多くが通知の考え方に従い、返還申請を受け付けている。なるべく早期に返せるよう、来年度中には一定程度の区切りはつけたい」とする。
◆18博物館保管の7割は地域に返還
実際、どれぐらいの遺骨がアイヌ民族の団体に返還されたのか。「こちら特報部」は今月10〜17日にかけて、遺骨を保管してきた東京国立博物館と道内の17博物館にアンケートを実施。
18施設で保管されていたのは、遺骨143体と特定できない遺骨10箱分。22日現在、アイヌ民族側と地域への返還の合意ができたのが、道立埋蔵文化財センターなど6施設。伊達市などのように引き続き市側で保管しているケースや今後返還予定も含め、地域返還できたのは計95体で、全体の7割近くを占めた。
一方、返還申請がなく、慰霊施設に集約されたのは東京国立博物館など6施設で、28体7箱に上った。残りの6施設は、冒頭の道博物館のようにパブリックコメントを経るなど方針を策定中という状況だった。
国が望むプロセスで作業が進んでいるが、アンケートには博物館側の苦渋の言葉がにじむ。
「当地にはアイヌ民族団体がなく、相談する相手がいなかった」「返還したくても、出土地域が不明でかなわない。どうしようもない」と吐露する声も。「当館収蔵庫は遺骨を安置する環境になく、一刻も早くふさわしい環境にしたいと思ってきた」「資金面から(アイヌ民族側が)引き取りたくても引き取れないなどの事情もある」といった切実な意見が目立った。
◆慰霊施設に閉じ込めるなんて信じられない
元の地域に遺骨を返せなければ、国が整備した慰霊施設に集める方針をアイヌ民族はどう感じるのか。
9月上旬、遺骨返還運動に取り組む木村二三夫さん(74)=北海道平取町=を訪ねた。多くのアイヌ民族が暮らす平取町二風谷コタン(集落)から、さらに山奥へ車で20分ほど。腰ほどに伸びたササを分け入りながら進むと、静かで神聖な趣の場所に着いた。
所々に立つ墓標「クワ(アイヌ語で杖(つえ))」。「これがアイヌ民族のお墓だ。人は土から生まれ、土に返るんだ」と木村さんが語る。
(アイヌ民族の墓標「クワ」について説明する
木村さん=北海道平取町で)
クワはドスナラと呼ばれる木の皮をはいで作られる。数年で朽ちた時、死者はポクナモシリ(冥界)に旅立ち、クワはその際、杖になると伝わる。
木村さんは1916年、日高地域の新冠(ニイカップ)御料牧場内にあった姉去(アネサル)コタンから旧上貫気別(カミヌキベツ)(平取町旭)に強制移住させられたアイヌ民族の子孫。「慰霊施設に閉じ込めるなんて信じられない。和人はこのクワを目印に遺骨を盗掘していった。盗(と)ったものは謝って返す。なぜそんな当たり前が和人はできないのか」と憤る。
◆12大学に251体、多くが返還されないまま
博物館以外に、大学が保管している遺骨もある。こちらについても博物館と同様、政府は2018年策定の指針で、申請に基づいて返還する考え方を示している。ただ、大学で保管したままの遺骨も多い。
20年の国の調査では12大学に251体が残っていた。「こちら特報部」は今月中旬、12大学にアンケートを実施した。
東京大と大阪大は「個別の回答は差し控える」と回答拒否し、京都大は回答が空欄だったが、少なくとも計114体の遺骨がなお保管されていると分かった。
保管を続ける理由について、北海道大は「地域返還の申請があった遺骨が何度も移転する事態は、極力避けるべきだ」などとし、地域での継続的な保管の難しさを理由の一つに挙げた。
◆保管継続では「将来も研究すると誤解産む」
木村さんは大学の遺骨の取り扱いにも疑問の目を向ける。20年、地元の平取町に北海道、札幌医科、東京など4大学が保管していた遺骨34体が戻った。
明治から戦後にかけ、研究者が墓地を掘り起こすなどして収集した遺骨だ。「北海道大はご遺骨を抱いて持ってきたが、東京大は4トントラックで運んできた。あまりにアイヌ民族を侮辱する行為で、生涯忘れられない光景だ」と話す。
大学による遺骨の保管について、九州大の瀬口典子准教授(人類学)は「将来的に研究を継続する余地を残しているとアイヌ側(先住民側)に解釈されても仕方がない。主な国際ジャーナルは、先住民の許可を取らずに調査分析した論文は査読にも回さないほど厳格だ。今の状態ではアイヌの遺骨研究を投稿できる国際ジャーナルはなく、国際的な流れに反する」とする。
◆先住民族と協働、関係改善図ったアメリカの例
米国では、1990年に先住民族の遺骨返還に関する法律が整備され、先住民族と協働研究するなど積極的に関係改善を図ってきた。瀬口氏は「返還したら終わりではない。先住民族との協議を常に続け、関係の再構築をしていかなければならない」と指摘する。
北海道大のジェフリー・ゲーマン教授(多元文化教育論)は「国は植民地主義や人種主義といった文脈を抜きに遺骨問題に対応しているが、全く本質を捉えていない。遺骨を集め保管した側が、民族の尊厳への打撃を受けた側に自ら遺骨を取り戻す手続きを強いること自体、人道的配慮を欠いている」と訴える。
前出の木村さんも言う。「アイヌ民族から土地や言語、文化を奪ったこの植民地政策の成功体験を、その後アジアに広げて奪い尽くしていった。その根っこが遺骨返還のあり方にも表れている。過去に目を閉じるものに未来はない。謝罪なき返還は全く意味がない」
◆デスクメモ
人権侵犯の認定を受けてもなお、アイヌ民族への差別発言を続ける与党議員がいる。それに対して党内での処分はない。「共生」を名乗る施設を造ったところで、政府に誠意を感じようはずもない。少数者の尊厳を奪う無神経さと反省の欠如。それは遺骨の扱いにも表れていないか。(北)
【関連記事】持ち去られたアイヌの遺骨が子孫に返還されない 「一刻も早く土に」を阻む背景とは
【関連記事】強制移住→疫病で400人犠牲…杉田水脈氏が人権侵害したアイヌ 悲しい歴史は本当に共有されているのか
【関連記事】杉田水脈氏が謝罪したくなかった「アイヌ政策検討市民会議」とは 「政策全体を問うてきた。名指しに驚いた」
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[※ 「こんな人たち」 報道特集(2017年7月8日)↑]
(2023年11月09日[木])
人権感覚ナシの国会議員を重用する《ヘイト政権だと国内外に》喧伝し、一方で、壊憲で「…基本的人権の制限…」。
『●《神さま》気取りのアベ様にこんなお願いする気? ―――「国民主権
の縮小、戦争放棄の放棄、基本的人権の制限…緊急事態条項の創設」』
日刊ゲンダイのコラム【ここがおかしい 小林節が斬る!/自民党の憲法感覚の歪み「人権」が理解できていない】(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/331083)。《残念ながら、今の自民党議員たちの中には、他者が自分とは異質であることに対して権力をもって介入してはならない……という「感覚」を共有しない者が多いのであろう。だからこそ、杉田水脈議員のように他者の人権を蹂躙して恥じない者を組織として擁護し続けているのである》。
『●杉田水脈氏…《このような人権感覚に問題がある議員を政務官に登用した
岸田文雄首相の人権意識、任命責任を改めて厳しく問わなければならない》』
『●杉田水脈氏をヅボヅボ《党や政権内に厳しく責任を問う様子も見られない》
…自民党やキシダメ首相・自民党総裁の人権感覚は彼女と同じだから』
『●お維出身でアベ様お気に入りの杉田水脈氏が《啓発》程度で改心するなど
あり得ない…議員辞職をさせるどころか、自民党は党の要職につける始末』
カルトとヅボヅボな上にヘイト党、《こんな人物を政府に入れた時点で差別容認のヘイト政権だと国内外に示したようなもの》(角谷浩一氏)。
日刊ゲンダイのコラム【ラサール石井 東憤西笑/開き直りと大嘘…厚顔無恥で鉄面皮の杉田水脈と萩生田光一を倒すのは誰か】(https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/331438)。《なんという厚顔無恥。なんという鉄面皮! …2度にわたる人権侵害の認定を受けても、「ブログは削除して謝罪した」と繰り返すだけでなく、あろうことか動画で「私は差別と闘ってきた、差別はしていません」と開き直りの大放言だ。…自民党もなぜこれを放置するのか。彼女を重用した安倍元総理も今はいない。いったい彼女は何に守られているのか》、《そしてもうひとり恥知らずがいる。萩生田光一(同下)だ(敬称略!)。先日のNHK日曜討論で立憲の長妻議員から「統一教会と最も関係の深い議員のひとり」と言われたら「レッテル貼りはやめて欲しい」とブチギレた。いや、レッテル貼りしたんじゃない。すでに貼られているレッテルを読んだだけだ》。
《杉田水脈氏、アイヌ民族への差別との認識「全くない」 ブログが人権侵犯と認定 記者に囲まれ「びっくり」》だそうです。お維出身でアベ様お気に入りの差別主義者…《啓発》程度で、改心するなどあり得ない。こんなヘイト吐きを自民党要職どころか、国会議員で居させていいのか? 世界に恥をさらしている。
日刊スポーツのコラム【政界地獄耳/杉田発言を許す自民党自体が差別的】(https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202311040000038.html)。《★先月29日、杉田は一連の発言を巡り「差別がなくなっては困る人たちと戦ってきた。私は差別をしていない」とし、1日にはX(旧ツイッター)に「人権の定義に法的根拠はない」と書き込み、人権侵犯に認定する制度に疑義があると疑問を投げた。この発言をゆるし公認を出し続けている自民党自体が差別的であることに気づいていないのならば、既にそれは同罪と言わざるを得ない》。
最後に、木原育子記者による、東京新聞の記事【こちら特報部/強制移住→疫病で400人犠牲…杉田水脈氏が人権侵害したアイヌ 悲しい歴史は本当に共有されているのか】(https://www.tokyo-np.co.jp/article/285228?rct=tokuhou)。《日本の先住民族アイヌの民族衣装を「コスプレ」と表現した現職国会議員が、いまだ党の要職を務めている。人権侵害は論外だが、そもそもアイヌ民族の歴史を社会は本当に理解できているだろうか。どれだけ知ろうとしただろうか。明治期に強制移住させられた「樺太アイヌ」や、ダム建設で集落を分断された「北海道アイヌ」の地を巡りながら、歴史の負の遺産をどう乗り越えられるか考えた。(木原育子)》《◆アイヌの土地を分断した「違法ダム」今も稼働 苦渋の歴史を背負うのは、樺太アイヌだけではなく北海道アイヌもだ。象徴的なのが97年の二風谷ダム(平取町)訴訟判決だ。道収用委員会を相手に、土地強制収用などの裁決取り消しなどを求めた》。
『●【<金口木舌>二風谷判決と沖縄】:
「わが国の統治が及ぶ前から北海道に住み…先住民族に該当する」』
《「わが国の統治が及ぶ前から北海道に住み、独自の文化を保っており、
先住民族に該当する」。1997年3月、札幌地裁で言い渡された判決に
原告のアイヌ民族の人々は驚き、涙を流した ▼司法の場で初めてアイヌを
先住民族と認めた、二風谷(にぶたに)ダム建設を巡る訴訟の判決だ…
▼しかし政府は沖縄の人々の権利保護を求めた国連自由権規約委員会の
勧告を無視》
『●《アイヌ民族…サケの捕獲は認められた先住権…儀式用の
サケ十数匹を捕獲…サケ漁をするかどうかは自己決定権だ》』
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【https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202311040000038.html】
コラム
政界地獄耳
2023年11月4日6時53分
杉田発言を許す自民党自体が差別的
★「LGBTには生産性がない」「(性暴力被害について)女性はいくらでもうそをつけますから」など、さまざまな差別発言・女性蔑視をまき散らしてきた元総務大臣政務官・杉田水脈。この政務官に抜てきしたのは首相・岸田文雄だった。昨年12月2日、社民党党首・福島瑞穂は参議院予算委員会で、杉田の過去の発言を「ヘイトスピーチ」と断じ、「内閣の一員としてふさわしくない。更迭すべきではないか」と問うたが、首相は「職責を果たすだけの能力を持った人物と判断した。政府の方針に従って職務に専念してもらう」と退けたものの同日、総務相・松本剛明の指示で発言の一部について謝罪、撤回した。同27日、杉田は政務官を辞任した。
★思えば2018年8月号の「新潮45」に「LGBTのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女らは子どもを作らない、つまり生産性がないのです」と書き、騒ぎになった時に同誌は廃刊になったが、自民党は杉田を「指導」しただけだった。党内外からも多くの批判があったが、当時の首相・安倍晋三の強い庇護(ひご)の中にいた。16年2月にスイスのジュネーブで開催された国連女性差別撤廃委員会に参加した杉田は、傍聴に来たアイヌの民族衣装やチマ・チョゴリ姿の女性たちをブログに掲載し、『日本国の恥晒し』と題して「チマ・チョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場。完全に品格に問題があります」「同じ空気を吸っているだけでも気分が悪くなる」と書いた。これが先月、大阪と札幌の法務局から人権侵犯と認定された。
★先月29日、杉田は一連の発言を巡り「差別がなくなっては困る人たちと戦ってきた。私は差別をしていない」とし、1日にはX(旧ツイッター)に「人権の定義に法的根拠はない」と書き込み、人権侵犯に認定する制度に疑義があると疑問を投げた。この発言をゆるし公認を出し続けている自民党自体が差別的であることに気づいていないのならば、既にそれは同罪と言わざるを得ない。(K)※敬称略
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【https://www.tokyo-np.co.jp/article/285228?rct=tokuhou】
こちら特報部
強制移住→疫病で400人犠牲…杉田水脈氏が人権侵害したアイヌ 悲しい歴史は本当に共有されているのか
2023年10月22日 12時00分
日本の先住民族アイヌの民族衣装を「コスプレ」と表現した現職国会議員が、いまだ党の要職を務めている。人権侵害は論外だが、そもそもアイヌ民族の歴史を社会は本当に理解できているだろうか。どれだけ知ろうとしただろうか。明治期に強制移住させられた「樺太アイヌ」や、ダム建設で集落を分断された「北海道アイヌ」の地を巡りながら、歴史の負の遺産をどう乗り越えられるか考えた。(木原育子)
(「ここに確かに樺太アイヌの集落があった」と話す
本田さん=北海道江別市の対雁地区で)
◆寂しげな河川敷「かつてここに集落」
「かつてここに集落があったと想像できますか」。9月上旬、樺太アイヌの遠戚(えんせき)で、郷土史研究家の本田和義さん(71)=札幌市在住=が指さした。視線の先には石狩川。人気ひとけのない河川敷が広がっていた。横なぐりの風が吹き下ろし、何だか少し寂しげだ。
札幌中心部から北東へ車で30分。本田さんらに案内してもらったのは、石狩川河口から約20キロ地点の北海道江別市の対雁(ついしかり)地区だ。今から150年ほど前、明治政府によって人工的につくられた樺太アイヌの一大集落があったと伝わる場所だ。
なぜここに樺太アイヌが暮らしていたのか。背景にはロシアとの関係がある。1875(明治8)年、日本政府は樺太千島交換条約を締結。それまで樺太は両国の「雑居地」として国境が画定できずにいたが、条約で千島列島は日本、樺太はロシア領になった。
◆勝手に線引きされ「移住しない限り日本人と認めない」
両国が勝手に引いた線引きなわけだが、樺太アイヌはどちらの国籍を持つか決めるよう強いられた。猶予は3年以内。だが日本の開拓使は樺太南部のアニワ(亜庭)湾の樺太アイヌらとわずか3カ月の話し合いで、翌76年に道北の宗谷地域に移住させた。江別市郷土資料館の寺井貫生(みきお)・文化財係長は「日本へ移住しない限り日本人と認めないとする布告が出たことも大きい」と説明する。
その数、計108戸、総勢841人。この他に、唯一「和人」として移住した人もいる。それが、本田さんの高祖父(曽祖母の父)にあたる千徳瀬兵衛さんだ。妻が樺太アイヌで、瀬兵衛さんは後に対雁・江別両村の初代戸長になった。
本田さんは「内地からの移民も少なく、囚人が道路を造った時代。当時の政府は農業立国を目指し、北海道開拓に樺太アイヌを投入しようと最初から計画していたようだ」と説明する。
◆武力で威嚇、嫌々連れてこられ…
樺太アイヌたちは故郷が見える宗谷を離れることを嫌がったが、農業や炭鉱での労働を担わせるため、武力で威嚇しながら連れてこられた。それが、冒頭の対雁地区だった。
(樺太アイヌが対雁から移った石狩川河口の来札地区の
集落=国会図書館デジタルコレクション提供)
悲劇は続く。対雁を疫病が襲ったのだ。3年後の79年にコレラで約30人が死亡、86年からのコレラ・天然痘で約320人が亡くなった。他の病も含めて移住者の半数の約400人が、慣れないこの地で世を去った。結局、農業は続かず漁業で生計をたてるため、約20キロ離れた石狩川河口の来札(らいさつ)地区へ移住していった。1905年に日露戦争で南樺太が日本領になると、ほとんどの樺太アイヌは帰島した。
本田さんは65歳の定年後、自身の親族に樺太アイヌがいることを知り、祖先がどう歴史に関わってきたのか調べるようになった。
かつて対雁の集落があった付近には、現在「榎本公園」が整備されている。樺太千島交換条約を締結し、この地に農場を開いた榎本武揚の功績をたたえるためだ。本田さんは声を落とす。「何という皮肉なのか。たたえられる歴史がある一方、刻まれることなく忘れられ、消されていった歴史もある」
◆「知る努力、受け継ぐ努力を放棄してはいけない」
樺太アイヌ集落がかつてあった江別市内の市営墓地を訪れた。片隅には二つの碑があり、「樺太移住旧土人先祖之墓」「乗仏本願生彼国」と刻まれていた。傍らには、アイヌ民族の祭祀(さいし)に使われたイナウ(木幣)が残っていた。
(1891(明治24)年8月に真願寺で初めて行われた
「対雁の碑」(左奥)の建立法要=真願寺提供)
「1979年の前住職の時代から、毎年6月に『対雁の碑』の前で墓前祭を開いてきた」と語るのは真願寺の石堂了正住職(60)。寺院の前身が対雁地区にあり供養を続けてきた。
石堂住職は東京都調布市の寺院出身。30年前に結婚と同時に入寺し移り住んだが「樺太アイヌの歴史をほとんど知らなかった」と話す。今は公開講演会を開いており「樺太アイヌの歴史は世界で起きている難民問題に通じる。国は歴史を残す努力をし、私たちも知る努力、受け継ぐ努力を放棄してはいけない」とする。
◆アイヌの土地を分断した「違法ダム」今も稼働
苦渋の歴史を背負うのは、樺太アイヌだけではなく北海道アイヌもだ。象徴的なのが97年の二風谷ダム(平取町)訴訟判決だ。道収用委員会を相手に、土地強制収用などの裁決取り消しなどを求めた。
ダムは完成しており請求自体は棄却されたが、判決は収用委の裁決を違法と認定。「少数民族にとって民族固有の文化は多数民族に同化せず、その民族性を維持する本質的なものである」と言及し、「民族固有の文化を享有する権利は、自己の人格的生存に必要な権利ともいい得る重要なもの」と、アイヌ民族の文化享有権を初めて認めた。
(広大な自然の中にそびえ立ち、稼働し続ける
二風谷ダム=北海道平取町で)
だが、アイヌ民族の土地を分断して造られた沙流川(さるがわ)の「違法ダム」は今も稼働し、広大な緑の地に不自然な人工物はそびえ立ったままだ。法律でアイヌ民族を先住民族と明記したのも、東京五輪前に突貫工事で制定された2019年のアイヌ施策推進法を待たねばならなかった。その上、今年9月には、自民党の杉田水脈衆院議員がSNSにアイヌ民族の衣装を「コスプレ」と投稿した事実が人権侵犯と認定されるなど、放置しかねる問題が山積する。
◆「結局国は何も変わらなかった」
原告の1人でアイヌ民族の貝沢耕一さん(77)は「当時は画期的な判決だと思ったが…」と言葉少な。「結局国は何も変わらなかった。遠くから、しかと見てきたが、アイヌ民族の復権について何も解決していない。取り繕うことだけが実に上手な国になった」
翻って世界はどうか。
オーストラリアでは14日、先住民族の地位を憲法に明文化するかの是非を問う国民投票を実施。アボリジニやトレス海峡諸島民などの先住民族を「最初のオーストラリア人」とし、先住民族の全国的な代表機関を憲法上に設置することへの賛否が問われた。
◆豪州TVが紹介、先住民族同士で連帯
恵泉女学園大の上村英明名誉教授(国際人権法)は「歴史や国家制度の根幹に関わる、非常に重要な国民投票だった。結果として否決されたが、現政権は国民に問い、若い世代にも賛成は多かった。その意味では豪州は次の機会にまた期待できる」と指摘。「日本政府にはこの動きの本質的な意味を理解できる人は少ないかもしれないが、アイヌ民族が豪州のテレビで取り上げられ、先住民族同士が連帯を示す動きも深まっている。世界の潮流との連携を広げてほしい」と話す。
アイヌ民族の歴史とどう向き合っていけばいいか。
室蘭工業大の丸山博名誉教授は「先住民族は土地と一体だ。土地を意識せずに先住民族を理解することはできない」と切り出し、「北海道各地でアイヌ民族の強制移住は行われ、サケ漁やシカ猟の禁止とともに民族の集団性を失い、入植者社会に消えたアイヌは多い。後から来た入植者が社会制度などを塗り替え正当化するセトラー・コロニアリズム(入植者植民地主義)を自覚しなければならない」と説く。そのうえで、「同化に抵抗するアイヌもいる。謙虚に耳を傾け、歴史を先住民族など少数者の視点で捉え直し、歴史観を転換する必要がある」と訴える。
◆デスクメモ
広がる大地や珍しい動植物。海、山の幸に、スキー、温泉…。北海道旅行で先住民族のアイヌを意識する人はどれほどいるのだろう。私たちが魅了される観光のほとんどは、奪われた人たちの犠牲の上に成り立っているのに。歴史に目を向け、より深く北海道のことを知らなければ。(本)
【関連記事】杉田水脈氏、アイヌ民族への差別との認識「全くない」 ブログが人権侵犯と認定
【関連記事】持ち去られたアイヌの遺骨が子孫に返還されない 「一刻も早く土に」を阻む背景とは
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【<金口木舌>二風谷判決と沖縄】(https://ryukyushimpo.jp/column/entry-845214.html)。
《「わが国の統治が及ぶ前から北海道に住み、独自の文化を保っており、先住民族に該当する」。1997年3月、札幌地裁で言い渡された判決に原告のアイヌ民族の人々は驚き、涙を流した ▼司法の場で初めてアイヌを先住民族と認めた、二風谷(にぶたに)ダム建設を巡る訴訟の判決だ…▼しかし政府は沖縄の人々の権利保護を求めた国連自由権規約委員会の勧告を無視》。
『●「なぜ巨大な権力にあらがえるのか。人々は「世代の責任」を語る」
「子を守る「風かたか」になる」』
「『前田朗Blog』の記事【国連人権理事会で沖縄の山城博治釈放要求発言】
(…)によると、《64人の日本の刑事法研究者が山城博治の即時釈放を
求めている。山城(64歳)は沖縄でもっとも有名な平和活動家であり、
軽微な犯罪で140日間も身柄拘束されている。昨年10月17日に
平和への権利を求めて米軍基地反対行動したために逮捕された。弁護団は
保釈を要求しているが却下された。家族との面会もできない。この身柄拘束は
国際自由権規約に違反する。われわれは山城の釈放を求める》」
『●「人治主義国家」「放置国家」アベ様王国ニッポンへの
国際社会の眼差し…恥ずかしき「非文明的な国」』
「東京新聞の社説【対日人権勧告 聞きっぱなしにするな】」
《人権問題を扱う法務省は、二〇二〇年の東京五輪に向けて
「人権大国・日本」を掲げている。このスローガンに恥じないためにも、
より多くの勧告に耳を傾け、改善に取り組んでほしい》
番犬様や「在日米軍特権」のために、基本的人権が著しく侵害される沖縄。「日米共犯」で、「森」を殺し、「美ら海」を殺し、さらに、ニッポン政府は、「人殺し」のための米軍基地を沖縄に押し付けている。いま、巨大で恒久的な新基地建設のために辺野古を破壊している。沖縄の皆さんの民意は、何度踏みにじられるのか。
萱野茂さんについては、Wikipediaから(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%90%B1%E9%87%8E%E8%8C%82)。《萱野 茂(かやの しげる、1926年6月15日 - 2006年5月6日)は、日本のアイヌ文化研究者(博士(学術))であり、彼自身もアイヌ民族である。アイヌ文化、およびアイヌ語の保存・継承のために活動を続けた。二風谷アイヌ資料館(シシリムカ二風谷アイヌ資料館)を創設し、館長を務めた。政治活動面ではアイヌ初の日本の国会議員(1994年から1998年まで参議院議員)。在任中には、「日本にも大和民族以外の民族がいることを知って欲しい」という理由で、委員会において史上初のアイヌ語による質問を行ったことでも知られる…。息子の萱野志朗は、萱野茂二風谷アイヌ資料館館長、世界先住民族ネットワーク・AINU代表、FMピパウシ運営者、世界先住民族サミット2008の実行委員会最高責任者》。
『●『ドキュメント 憲法を獲得する人々』読了(4/4)』
「【田中伸尚著、『ドキュメント 憲法を獲得する人々』】……
その他、「「神主の娘」の意見陳述」の木村さん、
「揺れる心で「アイヌ宣言」」の多原さん、
「在日だけど、日本社会の一員だから」の徐さん、
「沖縄に基地があるかぎり」の中村さん」
『●「「希望はTPP。」なのか」
『週刊金曜日』(2013年4月12日、939号)』
「平田剛士氏【アイヌ人骨〝発掘〟研究の実態は依然不明
北大のずさんな管理が発覚】・・・・・・」
『●「安倍首相の暴走と「妄想」」
『週刊金曜日』(2014年2月7日号、978号)について』
「平田剛士氏【いまだ返還されず 全国12大学にアイヌ遺骨1636体!】、
「遺骨を返還すれば大学自体も癒される。アイヌも力を得て、
誇りを取り戻せるはず……より人間的な大学に変わるための
チャンスととらえることもできる」」
『●「国が象徴空間に集約することに我慢がならない。
先祖の遺骨をコタンに返してほしい」』
「「研究目的」(!!)で勝手に盗掘して「大量の遺骨や副葬品が
返還されないまま」に放置する大学人、そして、政府のいい加減な対応。
…当事者が「嫌だ」と言っているにもかかわらず、平気で「人権侵害」。
「墓を暴いて先祖の遺骨を集めた学者たちの責任をあいまいにしたまま、
国が象徴空間に集約することに我慢がならない。先祖の遺骨をコタンに
返してほしい」と云う叫びにどう応えるつもりか?」
『●沖縄出身脚本家上原正三さん、「民意を顧みず、
基地を押し付け…沖縄を植民地としてしか見ていない証拠」』
《■「怪獣使いと少年」で問うた人間の心の闇》
《登場人物の少年は北海道江差出身のアイヌで、メイツ星人が化けた
地球人は在日コリアンに多い姓『金山』を名乗らせた。1923年の
関東大震災で、『朝鮮人が井戸に毒を投げ込んだ』『暴動を起こした』
などのデマが瞬く間に広がった。市井の善人がうのみにし、軍や警察と
一緒になって多くの朝鮮人を虐殺したんだ。『発音がおかしい』
『言葉遣いが変』との理由で殺された人もいる。
琉球人の俺も、いたらやられていた。人ごとではない》
『●沖縄差別・沖縄破壊の「やりたい放題」…
「歴史的暴言」から想起されるナチソネ氏や「産経のドン」等々』
《日本の近現代史の中で「土人」という言葉が使われていた例で
僕が思い出すのは、1899年に制定された「北海道旧土人保護法」
という法律だ。アイヌ民族についての「旧土人」という
表現および法律の内容が差別的であるとの批判が高まり、1997年、
アイヌ文化振興法施行に伴って廃止された。アイヌ保護を名目とは
していたが、アイヌの土地の没収、アイヌ語使用の禁止、アイヌ固有の
風習の禁止などが含まれていた》
『●「差別意識に基づく、官憲による歴史的暴言」…
ガルトゥング氏「非常に深刻な状況となる兆候…」と警鐘』
《土人とは、土着の人を指す言葉で、軽蔑や侮辱の意味を含んで使われる。
かつてアイヌの人々に対しても使われたことがある。官憲が沖縄に
住む人を土人と呼んだことは先例に従えば、琉球民族が日本人とは違う
歴史を持つ先住民族であると公に認めたことになる》
『●「亡命」させられた辛淑玉さんは「一時帰国するにも勇気がいる…」とは、
一体ニッポンはどんな国なのか?』
「ブログ【海鳴りの島から 沖縄・ヤンバルより…目取真俊/
辛淑玉さんの裁判を応援する。】(…)では、《…辛さんへの攻撃をはじめ、
ネトウヨ・ファシスト勢力の沖縄や在日、アイヌ、その他への差別と
暴力を許さないために、力を尽くしたい。憎悪を向けられている者が
泣き寝入りし、逃げていたら、いつか実体的に抹殺される》」
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【https://ryukyushimpo.jp/column/entry-845214.html】
<金口木舌>二風谷判決と沖縄
2018年12月7日 06:00
アイヌ 先住民族 琉球人遺骨返還訴訟
「わが国の統治が及ぶ前から北海道に住み、独自の文化を保っており、先住民族に該当する」。1997年3月、札幌地裁で言い渡された判決に原告のアイヌ民族の人々は驚き、涙を流した
▼司法の場で初めてアイヌを先住民族と認めた、二風谷(にぶたに)ダム建設を巡る訴訟の判決だ。ダムに水没した地域を含め、平取町(びらとりちょう)二風谷の沙流川(さるがわ)沿いはアイヌの伝統的な舟下ろし行事「チプサンケ」が伝わる聖地だった
▼町出身でアイヌ民族として初めて国会(参院)議員も務めた萱野茂さん(故人)らが、土地の明け渡しを拒否して法廷で闘った。判決はダムが完成していたことから建設差し止め請求を棄却したが、土地収用の違法性を指摘した
▼判決の根拠の一つに、民族的マイノリティーの権利保護を定めた国際自由権規約27条があった。政府が2008年にアイヌ民族を先住民族と認める前の画期的な判断だ。判例は4日に京都地裁に提起された琉球遺骨返還請求訴訟でも訴状に引用された
▼旧帝国大学の人類学者が持ち去った遺骨を取り戻す運動もアイヌ民族が先行し、一部で返還を勝ち取っている。近代以降の同化政策など、アイヌと沖縄に共通する点は多い
▼しかし政府は沖縄の人々の権利保護を求めた国連自由権規約委員会の勧告を無視している。米軍基地問題を含め、政府は沖縄に対する政策を見直す時期に来ている。
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