[※ ↑ 闘う主張、現場の声支えに 経済評論家・内橋克人さんを悼む (金子勝さん) (朝日新聞 2021年09月08日(水))] (2021年09月09日[木])
朝日新聞の朝刊に、金子勝さんの寄稿【闘う主張、現場の声支えに 経済評論家・内橋克人さんを悼む】が掲載されていました。引用させていただきます。
『●内橋克人さん ―――《今は社会問題と正面から向き合う経済ジャーナ
リストがどんどん減る中で、また優れた知性を一人失った》(金子勝さん)』
=====================================================
(朝日新聞 13版 2021年09月08日(水)、22面 文化面)
闘う主張、現場の声支えに
経済評論家・内橋克人さんを悼む
寄稿 金子勝 (立教大学大学院特任教授)
新自由主義の流れに警鐘
理論が正しくて、現実が間違っていることはない。
内橋克人の仕事を貫いている精神だと、私は思う。1990年代、バブルが崩壊し、日本経済が行き詰まり出した時、大胆な規制緩和政策が声高に叫ばれた。規制緩和で市場原理を働かせれば、物価が下がって消費者の実質所得が上昇し、新しい産業が生まれるとわかりやすく説明された。この「新自由主義」のドグマはメディアも当然なこととして受け入れていった。
これに対して、内橋は95年に『規制緩和という悪夢』でアメリカの航空業界の実情を見ながら、安全性をも軽視する規制緩和の問題点を鋭く告発した。そして、規制緩和を主張した経済学者たちに敢然と立ち向かった。その後の格差拡大を含めて、結果は内橋の主張通りになった。当時、私はそれを見ながら、セーフティーネット論を組み立てていった。
いつの間にか、人々はできあがったドグマに縛られがちになる。研究者も例外ではない。それを正す役割を果たすのが、ジャーナリストが突きつける事実の積み重ねである。
しかし、ジャーナリストのこうした作業も、時代の流れに抗 (あらが) うと、しばしば孤立することになる。時代に流されるのは簡単だが、それに抗うことはとても難しい。孤立してでもドグマと闘う内橋の姿勢を支えてきたのは、一体何だったのだろうか。直接聞く機会を失ってしまったが、それは、多くの人々が自らの主張を支えてくれるという確信ではなかったのか。70~80年代の『匠 (たくみ) の時代』シリーズを中心に、地域や中堅・中小企業の豊富な取材経験で培われた現場感覚から来ているのだろう。実際、内橋の著作が幅広く深い共感を生んだのは、地域や中小企業において、現実と格闘して生きている人々の心のひだにまで食い込んでいたからだ。
もちろん、内橋の魅力は現状批判の鋭さだけではない。未来を先取りして、代替的なビジョンを打ち出す著作をたくさん書いている。内橋は、2011年の福島第一原発事故を見通すかのように86年に『原発への警鐘』を書いた。そして00年には『浪費なき成長 新しい経済の起点』を書いた。そこで環境問題にいち早く取り組み、「新自由主義」に代えて、北欧のデンマークモデルを紹介し、F (フーズ)、E (エネルギー)、C (ケア) を軸にして地域で雇用を創 (つく) る新しい経済政策を打ち出した。私も、福島原発事故以後に、農業、自然エネルギー、福祉をベースにした地域分散ネットワーク型経済が、日本経済再生の突破口になると主張するようになった。たしかに内橋は先端の情報通信技術については詳しく展開していないが、私の主張は内橋の先駆的な仕事を踏まえたものである。結局、私は内橋の後を追いかけていただけなのかもしれない。
理論と現実の乖離 (かいり) が進んでいる状況の下では、私がそうしてきたように、これから先も、現実と格闘してきた人々の心を揺さぶる内橋の仕事を追いかける者たちがきっと現れるに違いない。
=====================================================
《原子力規制委員会で審査が進んでおり、秋にも再稼働する可能性がある……内橋克人さんは「集団的自衛権の先に待っているのは、核兵器を持って抑止力にしようという政策。原発は『プルトニウムをつくる装置』でもあり、原発を止めることは日本の核武装に待ったをかけることだ」と訴えた》(アサヒコム【「川内原発再稼働に反対」東京で集会 5500人参加】、2014年6月29日)。
== - - - - - - - - - - - - - ==
佐高信さんの「筆頭両断!「百の説法屁一つ」 竹中平蔵」(…)。「…ベラベラしゃべっている人間の下品さがわかるということだが、小泉純一郎と竹中平蔵にこそ、この格言がぴったりと当てはまる」。「…そんなセリフは「年棒1億円」とかいわれる〝新規権益〟のパソナ会長の椅子を放棄してから言え、と怒鳴りつけたい」。「竹中の強欲ぶり…『東京新聞』も…「究極の天下り」と批判…」。「郵政民営化に影響力を行使した後、かんぽの宿の一括譲渡を実施させようとしたオリックスの宮内義彦会長と同じ。自分が関わったところで自分が利益を得るという構図は、まるで政商ならぬ学商だ」。「…消費者金融、つまりサラ金の経営者の集まりでも講演し、彼らの喜びそうなことを言っている。…郵便局のカネをそちらにまわせというのである。どこまでサラ金の手先となればいいのか」。「「新自由主義の時代は終わった」とか、「新自由主義は誤った」などという評論家は一切信用しないことにしている、とミエを切っている。内橋克人や私は信用しないということだろうが、作家の城山三郎も明確に竹中を批判していたし、高杉良も厳しく断罪しているのだから、城山や高杉も竹中は「信用しない」ということになる。/サラ金業者からカネをもらって講演したり、日本マクドナルドの未公開株を買ったり、さらにはパソナの会長になって一億円もフトコロに入れる竹中と、「渇しても盗泉の水は飲まず」といった感じの清冽な生き方を貫いた城山三郎のどちらに信用があると、この卑しい軽薄才子は思っているのか」。
== - - - - - - - - - - - - - ==
FEC自給圏、《原発は『プルトニウムをつくる装置』》…本当に尊敬できる経済評論家でした。トリクルダウン教祖・竹中平蔵氏などとは全く違う、真の意味での経済ジャーナリストだった内橋克人さん。まだまだお話を聞きたかった《優れた知性》でした。お亡くなりになったこと、とても残念です。
『●『もうひとつの日本は可能だ』読了』
「グローバリゼーション (「市場化」・「民営化」) のオルタナティブ
として、FECの地域内自給自足権 (圏) の確立こそ重要であることが
提唱…。FECとは、Foods (食糧)・Energy (エネルギー)・
Care (人間関係=医療や教育等)」
『●『浪費なき成長』読了』
『●『不安社会を生きる』読了(1/2)』
『●『不安社会を生きる』読了(2/2)』
『●『新版 悪夢のサイクル/ネオリベラリズム循環』読了(1/4)』
『●『新版 悪夢のサイクル/ネオリベラリズム循環』読了(2/4)』
『●『新版 悪夢のサイクル/ネオリベラリズム循環』読了(3/4)』
『●『新版 悪夢のサイクル/ネオリベラリズム循環』読了(4/4)』
『●原発絶対断固反対!』
『●FECにつながる「地給率」』
『●SLAPPと祝島』
『●TPP批判: 内橋克人さん』
『●まさに、FEC自給圏を目指せ』
『●内橋克人さんインタビュー:
〝貧困マジョリティー〟の形成と『FEC自給圏』への志向』
『●衆院選の惨敗と参院選という正念場:
FEC自給圏・「浪費なき成長」と「暗闇の思想」』
『●原子力ムラに対して、開き直ろう!:
こういう挑発や脅し、騙しに乗ってはならない』
『●居直ろう!: 〈毒食わば皿まで〉?
「一度認めた以上、どこまでも認めるという論理の一貫性」?』
『●電源構成(エネルギーミックス)案という貧相な「未来図」:
泥棒やその子分に縄をなわせる愚』
「ニッポンにとって、デンマークはとても参考になると思うのですが?
内橋克人さんのFEC自給圏の確立を」
『●「原子力の平和利用」という核発電への幻想…「原発は『プルトニウム
をつくる装置』」(内橋克人さん)にこだわる周回遅れのニッポン』
『●「始まりの地、福島から日本を変える」:
シェーナウ電力、会津電力、飯舘電力…内橋克人さんのFEC』
『● FEC自給圏(内橋克人さん)…《地域の中で隣人同士が見守り合い、
支え合いながら、病気を予防し、重症化を防ぎ、健康寿命を延ばす》』
asahi.com(http://www.asahi.com/national/update/0914/TKY201109140713.html)の記事。
添付された写真のキャプションには「東京電力の寄付金などで購入した青森県むつ市役所。もとは商業施設で、床面積約1万8千平方メートルと広大だ=同市中央1丁目」とある。こういう癒着した金が出なくなれば、だれしも原発なんて望まないのではないか? 逆に言えば、膨大な広告費で「安全喧伝」されているとは言え、原発という超迷惑施設を引き受けてもらうためには、おカネ(マネー*)で懐柔しなければ立地し得ない訳だ。原発周辺の市民は内心どう思っておられるのでしょう・・・。
発電コストが安いだの、安全だの、電力不足解消のための国策だの、・・・福島第一原発の人災以降にようやく数々の言説が単なる神話であり、デマであることが明らかになりつつあるが、まだ原発を続けようと云う・・・。信じ難い。
(*: 直接的には関係ないのだけれども、内橋克人さんの「「そうした「投機」のための金を、私は労働の対価や商品を買うための「おカネ」と区別する意味で「マネー」と呼ぶことにしています」という言葉を思い出しました。内橋さんには名著がたくさんあるが、『原発への警鐘』もその一つ。)
==========================================
【http://www.asahi.com/national/update/0914/TKY201109140713.html】
2011年9月15日5時48分
東電、原発立地自治体に寄付400億円 予算化20年余
東京電力が20年以上にわたり年平均で約20億円の予算を組み、東電の原発などがある3県の関係自治体に総額四百数十億円の寄付をしたことが分かった。原発の発電量などに応じて「地元対策資金」を配分する予算システムになっており、自治体側がこれに頼ってきた構図だ。
原子力施設の立地自治体に入る電源三法交付金、核燃料税の金額は公表されているが、東電が原則非公表としている寄付金の全体像が判明したのは初めて。東電幹部は「原発の立地などで自治体の理解を得たいという思惑もあり、癒着と批判されるのを避けたかった」と証言している。
複数の東電幹部によると、立地自治体への寄付は、福島第一原発の建設が始まった1960年代からあったという。1990年前後から昨年まで、東電本社は毎年、年度初めに10億~20億円の寄付金の予算を組んできた。必要に応じて増額することも多く、年平均にすると20億円以上になる。自治体首長らの要望などを審査し、役員会の決裁を得て支出する仕組みだ。金額は、県ごとの原発の発電量などを目安に配分。寄付が多額な場合は数年に分割して予算計上し、支払うこともあったという。
==========================================
新聞の広告で気づきました。堀江邦夫さんの『原発ジプシー』が復刻されて、『原発労働記』として再版されています。
===========================================
【http://www.bookclub.kodansha.co.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2770008】
講談社文庫
ゲンパツロウドウキ
原発労働記
著者: 堀江邦夫
発行年月日:2011/05/13
サイズ:A6判
ページ数:366
ISBN:978-4-06-277000-2
定価(税込):680円
話題沸騰 幻の名著『原発ジプシー』 27年ぶりに緊急復刊!!
「原発事故は人災です」――瀬戸内寂聴
「これでは事故が起きないほうが不思議だ」。放射能を浴びながらテイケン(定期点検)に従事する下請け労働者たちの間では、このような会話がよく交わされていた――。美浜、福島第一、敦賀の三つの原子力発電所で、自ら下請けとなって働いた貴重な記録、『原発ジプシー』に加筆修正し27年ぶりに緊急復刊。
===========================================
20年ほど前に、2、3回読みました。本棚のどこに置いているかも確認したのですが、まだ再読に至っていません。復刻版も買わないと。
鎌田慧さんの復刻された本、それから、これまた名著の内橋克人さんの『原発への警鐘』も持っているのですが、すでに、復刻されたものも購入しました。まだ〝積ん読状態〟。