
昨日の朝日新聞(2012年1月8日、14版、p.4)に、
『再生日本政治/貧困の多数派 歯止めを』(経済評論家 内橋克人さん)
というインタビュー記事(聞き手・園田耕司)が出ている。朝日新聞デジタル(http://digital.asahi.com/20120108/pages/politics.html)には記事が出ているようですが、asahi.comの方には出ていないようです。大変に勿体無いと思いますけどね。
日本で新たな階層が。「国民皆年金など基礎的な社会保障からさへも排除された人たちが多数派となる『貧困マジョリティー』だ。グローバル化やマネー資本主義が進み、非正規雇用が増えて中間層が崩壊する社会の到来」。
『うっぷん晴らし政治』。「・・・大阪市の橋下徹市長の『ハシズム現象』も貧困マジョリティーの心情的瞬発力に支えられている・・・。『地方公務員は特別待遇を受けている』とバッシングし、閉塞状況下の欲求不満に応えていくやり方だ」。『創』や『週刊金曜日』で中島岳志さんも同様なことを述べておられる。『●大阪元〝ト〟知事、重いツケ、将来への大きな禍根』でも触れた。
「◆橋下主義=ハシズムを支えるもの 中島岳志」
(『週刊金曜日』、2011年12月23日 877号)
(http://www.kinyobi.co.jp/backnum/tokushu/tokushu_kiji.php?no=2340)
「◆既得権益バッシングが格差に苦しむ若者を熱狂させる
橋下徹「ハシズム」を支えているものは何か 中島岳志」
(『創』、2012年12月号)
(http://www.tsukuru.co.jp/gekkan/2011/index.html)
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うちはし・かつと 1932年生まれ。神戸新聞記者を経て経済評論家。
90年代から一貫して市場原理至上主義、新自由主義的改革に警鐘を鳴ら
してきた。主な著書に「悪夢のサイクル―――ネオリベラリズム循環」
「共生経済が始まる」など。
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政治的閉塞感が国民の方向性を誤らせる。「・・・ヒーロー待望論ほど異常なものはない。・・・『頂点同調主義』・・・『熱狂的等質化現象』が一体となる。『うっぷん晴らし政治』の渇望・・・。グローバリズムが生み出した『貧困ファシズム』の培地となりかねない」。
さらに悪化の方向へ。「グローバル化の流れは変わらず、市場原理主義のもとで、貧困マジョリティーを生み出す『貧困の装置化』が進んでいる。消費税増税によって、零細企業や地域経済を支えてきた地場産業は、価格転嫁できずにコスト引き下げを迫られる。所得税なら稼いだ人がたくさん納めるが、日本型消費税は貧困マジョリティーを増幅させる『貧困の装置化』の手段になる」。斎藤貴男さんと同意見。
TPPについても。「・・・米シンクタンクは一貫して『投資の絶対的自由の保障』を求めてきた。・・・外資は日本政府を米国の経済法廷に訴えることができる。米企業はオーストラリアでの医療品への公的補助でさえ『自由市場に反する』と問題視している。日本の国民皆保険制度も目の敵にしているが、これは豊かな人も貧しい人も、ひとたび体を害せば医師にかかることができる制度で、国民的財産、社会的共通資本だ。それが毀損され、一部企業のビジネスチャンスになる。弱いところに社会的変動の影響が収斂する」。視点はコモンズにまで。『●TPP批判: 内橋克人さん』でも取り上げた。
目指すべき方向性。「私は新たな基幹産業として『FEC自給圏』を提唱してきた。FはFoods(食糧)。日本の穀物自給率は世界で124番目だが、食糧自給は国の自立条件で新たな産業も形成する。EはEnergy(エネルギー)。再生可能エネルギーとしてデンマークでは風力発電、太陽熱発電を推進し、エネルギー自給率が今では200%近い。日本は国策として原発に集中し、他の選択肢を排除した。CはCare(介護)。市場に任せるのではなく、社会による介護自給圏を形成すれば北欧諸国のように強力な産業になる」。「『うっぷん晴らし政治』ではなく、世界のモデルに目を向け、食糧、介護、エネルギーの自給圏を志向すべきだ。地味でも良いから、グローバル化の中で、それに対抗できる『新たな経済』を作ることが本当の政治の役割だと思う」。目指すべきは北欧型か? 「地味でも良いから」、というところにグッときた。
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