阿弥陀岳
「7年に一度の御柱祭で曳くモミの大木は、この山から伐り出され尾根の中間部にある御小屋山は御柱山ともいう。」とある。この御柱山を通り、御小屋尾根から阿弥陀岳が今回の山行だ。美濃戸口から阿弥陀岳は1315mの標高差。雪のない時でも、登り5時間の下り3時間50分。
八ケ岳PAにて車の中で寝ている我々に、車後部をトントンと叩くAさんに起こされたのは6時。この時点で当初予定より少し遅れ、着いた美濃戸口駐車場はすでに満杯に近く、一番上の駐車場に最後の1台として納まる。
眩い朝日が、今日一日の好天を約束して呉れる
当初より尾根途中での幕営予定、幕営地をどこにするかを思案しながらの山行で、結局2170m辺りの平坦地にテントを張り、
幕営地より覗く阿弥陀岳
ほぼ空身に近いザックで阿弥陀岳に向かうのだが、この尾根キツイ登りは3つある。
まだ緩めの登り
そろそろ登りもキツクなる
一つ目は御柱山の手前まで、二つ目は2400m手前から続く長い登りに、最後は中央稜との合流する稜線までの登り。
樹間の開けた地点より望む南アルプス(左から 北岳、甲斐駒ケ岳、仙丈ヶ岳)
正面の権現岳に、右 編笠岳
こんな辛くて長い登りになると、もう何も考えず、一歩一歩足を上げて進むしかない。でもその間、樹間の開けた処より南アルプスの甲斐駒ケ岳などが見える度に一息付く。
樹林を抜けると、一息付ける度に後ろを振り向き、茅野市の上方にある御嶽山、岡谷の方向にある北アルプスの山々を目に納めて行く。
諏訪湖の向こう、乗鞍岳から始まって北アルプスの山々
この登り坂、雪は固まっておらずサラサラな上に結構急なので、アイゼンを付けていてもよく滑る。ズボズボと足が深く沈み込む訳ではないが、ちょうど海辺の砂の上を走っているようで、倍のエネルギーを要するように感じる。
隣の中央稜のパーティー(ズーム)
さあ、これから最後の長い登りに掛るぞ
稜線上まであと少し
隣の中央稜から登って来たパーティーが御小屋尾根との分岐にある指導標近くで休んでいる。その前を通過し、最初の岩峰の狭い巻道を経て西ノ肩に掛ろうとした時、右脹脛の筋肉がプツンと云う感触と共に痛みが走る。肉離れに違いない。
右が最初の岩峰、その横にある指導標まで登って来て、狭い巻道を通過しここまで来たが・・・・
そう思うとこれまでの緊張感も一緒にプツンと切れてしまう、もう歩けないかも知れないかと思うと、あと数分の阿弥陀岳山頂まで行こうと云う気も失せてくる。
左 西ノ肩の下部と中央 権現と右 編笠、その上は南アルプス
ここで立ち止まり、山頂へ向かった皆を一人で待つ。
この脚、登りやフラットで脹脛の筋肉が張った時には痛いが、下りで弛む時は痛くなく、普段通りに下ることができた。稜線上の分岐から御小屋尾根、黒ロープの続く急な下りは用心のためTさん指導のもとコンテしながら下る。
こんなサルオガセが至る処にあるのだが、幕営地に戻ってくるまで全然気が付かなかった
この山、サルオガセが至る処に在る。これもやっと余裕が出てきて廻りの何気ない景色に気が行くようになって気づいたこと、それほど登下降に気を使っていたと云うことか。
次の日、風もなく、うす暗いテントの中、皆の体から発する水分がテントに張り付きそれが氷となってライトの灯りでキラキラ光っている。でも、シュラフの中は暖かくまだこのままズーッと居たいが4時半頃には起き出す、外気温は-13℃。
今回、僕だけがあと数分くらいの阿弥陀岳の頂を踏めなかった。でも、それを補う感動ものがあった。ニホンカモシカが登山道側、3~4mの処に居たんだ。近寄っても逃げもせず、3~4分間ほど声を掛けたり写真を撮ったりしても大人しく座っている。
「僕、カモちゃん。こんにちは。」
「オッコラショッ。皆、じゃあそろそろ帰るね。」
「僕、走るのは速いんだ。」
獲って喰われることもなく大切にされているのか、人を恐れていない。それにしてもこんなことは始めて。Tさんが近付き手を出したり、その上ツーショット出来たのにはビックリ。
下り着いた美濃戸口駐車場は変わらず満杯で、路上駐車もあるほどの人が来ているのに、今日の下山途中、出会った人は一組も居らず、カモシカさん静かに過ごせるね。
カモちゃん(ズーム)
出会ったのがカモシカさんで、熊さんでなくて、本当に良かった。
メンバー:浜(L)、井、會、田、河(記)