モダン・ジャズ・カルテット (MJQ) の原型は 1946-8 年頃集まって演奏したミルト・ジャクソン,ジョン・ルイス,レイ・ブラウン,ケニー・クラークの4人.1950 年あたりには Milt Jackson Quartet としてそこそこ評価されるようになったが,その頃レイ・ブラウンは新婦エラ・フィッツジェラルドにかかりきりなので,代打に名前が挙がったのがパーシー・ヒースだった.
カンバセーション・イン・ジャズ (以下 CIJ と書く) には MJQ のメンバー4人との対話が含まれている.ここでののジョン・ルイスの談によれば「ヒースがベースを始めたのは ほんの 1947 年で,間違った音を弾くし,タイムも間違えるし,一緒に演るのが難しくてまるで地獄のようだった」.もっともそれはルイスの,例えば Vendome のような新曲でのことで,ヒースはふつうの曲はふつうに弾けたし,ジャクソンもクラークも彼に対しておおきな不満を感じていなかったふしもある.
右のジャケット写真は当時 ? の4人だが,ヒースだけはいかにも生真面目に考え込んでいる.
彼はチャーリー・ミンガスのレッスンを受けたりして,ルイスのしごきに耐える.その結果,1954 年のマイルズとの "Bag's Groove" におけるプレイは,ジャズベースの教科書と言われるまでになった.
CIJ 中でヒースは,MJQ はツァーばかりで,子育てを妻に丸投げにすることを嘆いている.こんな発言はこの本で彼だけだ.ちなみにヒース夫人は白人で,この結婚は 1950 年には異例だった.
コニー・ケイは現在では MJQ の他の3人に比べるとあまり話題にならない.しかし 1955 年ケニー・クラークのあとに座ったときは,彼はすでに名の通ったドラマーで,ヒースの場合のような問題はなかったらしい.クラークとルイスでは意見が違ったが,かと言ってルイスには MJQ におけるドラミングに確固としたイメージがあったわけではなく,その後はケイに任せることになったのだろう.ケイ自身もそれを楽しんだようだ.彼をパーカッショニストのさきがけと言っても良さそうだ.
ケイが 40 年代にハーレムのクラブ,ミントンズのハウス・ドラマーだったこと,その後リズム & ブルースバンドで名を馳せたなどはこの CIJ ではじめて知った.
メンバーは URL にある.小川ひとみさん,園田絢子さんなどにボーカルをお願いした年は盛り上がった.
Merry Christmas Mr. Lawrence*
Joy to the World
Medley - Santa Claus id Coming to the Town, The Christmas Song, Jingle Bells
* 戦場のメリークリスマス.
2018 サルディーニャ・リゾート
White Christmas
Santa Clause is Coming To Town
このレストランもその後閉鎖された.2019-2020 年はコロナ禍でコンサートはなかった.
2017 サルディーニャ・リゾート
Greensleeves
Winter Wonderland
トップ画像はこの年のもの.右上のヴィーナスの誕生はペンキ屋が描いたとのことで,よく見るとすこし変だった.
2016 サルディーニャ・リゾート
Santa Clause is Coming to Town
Jingle Bells
White Christmas
2015 サルディーニャ・リゾート
Sleepers Awake (BWV645) *1
Little Drummer Boy
星めぐりの歌 *2
Jingle Bells
The Christmas Song
*1 はバッハの教会カンタータ「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」のジャズアレンジ.
2014 サルディーニャ・リゾート
Our Little Town *
When You Wish Upon A Star
* Oh Little Town of Bethlehem に基づいて Jimmy Heath が書いた曲.
https://youtu.be/t2xm43w3IU0
2013 2日続き 川尻公民館ロビーコンサート/サルディーニャ・リゾート
Jingle Bells
Our Little Town
すてきなホリディ*
2010 「東広島で英語で遊びたい親子のサークル」公民館小ホール
Santa Claus is Coming to the Town
We Wish You a Merry Christmas
God Rest You Merry Gentlemen*
Let It Snow, Let It Snow, Let It Snow,
Jingle Bells
Rudolph the Red Nosed Reindeer
自分のブログをひっくり返したら,2006 年にカルテットでチャレンジしていた.お付き合いいただいた3人サマは今では家庭人である.
このときのリードシートが左で,出典は CLASSICAL 1001,日音(1975) らしい.原曲に近いのが右の楽譜で,リードシートでは小節が2分されている.ハ長調だが,これはその昔バイオリンの G 線で弾くために転調された結果かな.
バッハの曲はジャズ化しやすいので,下のようにお手本多数.
形式的にふたつめ,MJQ - Swingle Singers 版に従うことにする.メロディに乗るととアドリブがしぜんに対位法的になる.Percy Heath のベースがオリジナルの通奏低音をなぞっているので,我らがベース氏にも そうしていただいたら,気持ち良く合わせることができた.
Jacques Loussier
1959 年のアルバム Play Bach No.2 で演奏しているが,動画は 1988 年,André Arpino(ds), Vincent Charbonnier (b)
リードシートのリハーサルマークで表すと,AAB でおしまい..
MJQ and the Swingle Singers (1966)
AABB を A1A2B1B1 と書くと,A1A2 は vib,B1B2 は p で,A1 B1 はメロデイ,A2 B2 はアドリブ.A2 B2 に Swingle Singers が原曲に近い形で加わる.
the Classic Jazz Quartet (2002)
Kenny Barron (p), Ron Carter (b), Stefon Harris (vib & marimba), Lewis Nash (ds)
Bob Belden (arr), AA と B の 1/3 を繰り返す.始めからストレートにスイングする.
ベーシストの作品集.
1 Watergate Blues (Percy Heath)
https://youtu.be/DTyf_80-L9k
2 Gravy Waltz (Ray Brown)
https://youtu.be/AZPjcWhlZ7c
3 Bohemia after Dark (Oscar Pettiford)
https://youtu.be/s5EwGijmqKc
4 Del Sasser (Sam Jones) 黒本2-p56
https://youtu.be/vAdE3pLlMFQ
5 Our Spanish Love Song (Charlie Haden) 黒本2-p173
https://youtu.be/Zp3emvlS7uA
6 Goodbye Pork Pie Hat (Charlie Mingus)
https://youtu.be/louXB-r84vg
1,2,3,6 のリードシートは
https://1drv.ms/u/s!AtMVNOwTJHY4i26c6C9KdaRSMSh4?e=sLfMwU
にあります.
Percy Heath は一時 MJQ が解散した時期に,兄弟バンド Heath Brothers で演奏するために曲を書くようになった.Watergate... は MJQ の演奏だが編曲がうまい.MJQ には Ray Brown の Pyramid もあるがやはり編曲がいい.Oscar Pettiford の Swingin' till the Girls Come Home も好き.Del Sasser は日野皓正を擁した Sam Jones のリーダーアルバムにも入っていた.納浩一さん編集の黒本2には Charlie Haden の曲が4曲も入っている...まぁ好きな曲を入れろのが編集者の特権だけれど.
動画は Joni Mitchell の Mingus へのトリビュートで,ベースは Jaco.他に Pat Metheny, Michael Brecker, Don Alias...
これはFacebook で教わった本.父が黒人,母が白人で わたしはキャラメル色,というわけだが,原題はずばり Blended である.
この本についてはいずれ書きたいが,このタイトルで思い出したのが Gingerbread Boy というジャズ・チューン.gingerbread は キャラメル色的修飾語.Jimmy Heath の自伝によれば,テナー奏者 Jimmy Oliver が(もちろん黒人の) Jimmy Heath の妊娠中の白人の妻 Mona のお腹を見て a little gingerbread boy とからかったことから,この曲ができたのだそうだ (なんで,gingerbread girl ではなかったのかな).こうして生まれたのは男児だった.上にはキャラメル色の姉がいる.
Jimmy の兄が MJQ のベーシスト Percy だが,彼の奥さん June も白人で,あいだに3人の男児がいる.ペンシルべニアでは異種人種間の法律で禁止されていたので,ニューヨークに出て結婚したそうだ.
ジャズ・プレイヤーとしてのヒース兄弟は,控えめで穏やかという印象だが,1950-60 年代にあって,彼らの行動は破天荒... と思って聞き直すと,演奏の印象が変わりそう.
Percy 夫妻も Jimmy 夫妻も生涯連れ添った.彼らの子供達の人生は波乱万丈だったかもしれない.
Percy 夫人も有名人らしく2016年にはネットに死亡記事が出ていた.ちなみに Percy は 2005 年 Jimmy は 2020 年に逝去.
マイルズ・バンドの打楽器奏者だった Mtume は Jimmy が10代でつくった長男で,母は Mona ではない.若いときの Jimmy の麻薬まみれの生活はマイルズの自叙伝にも垣間見ることができる.
ヒース3兄弟の末弟アルバートの結婚については,知りません,
MJQ のピアニスト John Lewis の妻 Mirjana はクロアチア出身のピアニストで,夫婦合作のアルバム The Chess Game がある.この白黒ゲームというタイトルは暗示的?
動画は Milt Jackson - Jimmy Heath - Tommy Flanagan - Richard Davis - Connie Kay による Gingerbread Boy.
メンバーは Milt Jackson, Horace Silver, Percy Heath, Connie Kay.早く言えば MJQ - John Lewis + Horace Silver で,Horace Silver がいい... とは言え,ときどき彼のプレイが John Lewis のように聞こえるのがおもしろい.
曲目は Wonder Why / My Funny Valentine / Moonray / The Nearness Of You / Stonewall / I Should Care の6曲.「バラードの...」という看板も間違いではない.
しかし魅力はブルースの Stonewall.左上の画像のようにやたらと音符が細かいが,Milt Jackson の手癖を忠実に採譜するとこうなるのだろう.7段目 (6段目の3小節目) 以降はアドリブの冒頭といった方が良さそう.
Percy Heath のは生まれて初めて聴いたベースソロで,今でも好きだ.その後,テーマに至るまでのアレンジもかっこいい.
まぁ聞く側にとってはどうでもいいことだが.
そういえば,「ミントンハウスのチャーリー・クリスチャン」の Swing to Bop も Topsy と同じだった.歳をとるといろんなことが聞こえてきて,それが純粋な鑑賞を妨げる...
MJQ のアルバムには,大運河 (No Sun in Venice),Collaboration, Blues on Bach のように統一的なコンセプトがあるものが傑作とされている.The Sheriff はその点いろんな曲の寄せ集めだが,そのぶん気楽に聴ける.
異色は Villa-Lobos のブラジル風バッハ (Bachianas Braileiras) 第5番.アドリブはなく,ほとんど原曲に沿った編曲と思う.演奏して面白いのだろうかと思うが,Milt Jackson も Percy Heath も厭ではなかったらしいく,この方向で後年,バッハのフーガとかアランフェスとかも演奏している.