Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

中村明一「倍音」

2010-11-17 08:37:07 | 新音律
副題 音・ことば・身体の文化誌,春秋社 (2010/10).
やや著者 (尺八奏者) の自己宣伝臭はあるものの,すごく面白い.

倍音とは,音をフーリエ分解して出て来る高調波とか, higher order mode とか称するもの.整数次倍音と非整数次倍音があり,西洋音楽ではもっぱら整数次倍音だけを使う.しかし日本音楽はそうではない.本書はそこから音,さらにはことば・身体の文化誌へと発展する.

縦軸に整数次倍音,横軸に整数次倍音をとって,歌手・芸能人の声を 2 次元ダイアグラムにプロットした図があった.整数次倍音派は黒柳徹子,非整数次倍音派は森進一・八代亜紀・青江三奈,どちらの倍音も良く出るのが美空ひばりである.
科学の啓蒙書なら,ここにデータ,すなわち個々の歌手・芸能人のスペクトルがあるところ.しかし,この出版社には宗教書が多いためか,「書いてあることを信じなさい」となっしまうのが,いつも学会で他人の揚げ足をとっている私には,かなり不満.
実は,私も人気歌手の歌声のスペクトルを取ろうと試みたことがあるが,伴奏が邪魔になってうまくいかなかったのだ.

オーケストラと尺八のスペクトル (ソノグラム) が並んでいて,尺八のスペクトルが複雑で,そのうえ一本の尺八がオーケストラよりも広い音域をカバーしていることを示していた.

平安時代には「しじま遊び」というのがあって,これはどれだけ黙っていられるかを競う遊びだったそうだ.環境音・自然音を楽しむのが目的らしい.中村さんはこういう感性は日本人特有のようにおっしゃるが,西欧にもジョン・ケージとか,静寂を買うジュークボックスなどの例がある.前回のブログの DUO とも無縁ではないかな.

巻末にすごい文献リストだが,専門書なら学術論文が並ぶところだが,ここには手に入れやすい一般書が多い..
著者は横浜国立大学工学部応用科学科卒.専攻は量子化学であったとのこと.

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