Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

小説集 真田幸村

2017-06-09 09:01:23 | 読書
末國善己編,作品社(2015/11).

さきおとといの錦絵を表紙にする本.題字・本間吉郎.

南原幹雄,南原幹雄,海音寺潮五郎,山田風太郎,柴田錬三郎,菊池寛,五味康祐,井上靖,池波正太郎.
菊池寛のものは真田伝説が復習できる伝記みたいなもの.信繁という名も出てくる.この本に真田幸村その人を主人公とする小説はなく,彼はいつも脇役.正確なタイトルは「真田幸村の周辺」だろう.でも面白い.

編者解説によれば*****戦国を駆け抜けた真田家の興亡は、幸隆、昌幸、幸村の三代として語られることが多い。これに倣い本書『小説集 真田幸村』は、幸村を中心にしながらも、真田家を興した幸隆の時代から、昌幸を経て、幸村が死んだ大坂の陣までを全八作の短篇でたどれるよう傑作をセレクトした.*****

南原作に登場するのは幸村の曽祖父と祖父だが,主人公は曽祖父で,祖父は曽祖父を見捨てる役どころ.海音寺作には幸村の父昌幸が登場するが,やはり,どちらかといえば悪役.
その他の作も含めて,たいてい登場人物の出自が書いてあり,しかも互いに矛盾する,「小説家見てきたような嘘を言い」の競演である.いちばんの傑作は,五味康祐「猿飛佐助の死」で,ここでは猿飛は北条氏直 (小田原の北条氏滅亡時の当主) の落胤である.ただしここでの佐助の死は少々あっけない.

山田風太郎「刑部忍法陣」柴田錬三郎「曾呂利新左衛門」にも猿飛が登場する.猿飛が大谷刑部と小早川秀秋をあやつる山田作がこの本の中の僕のベスト.柴田作の曾呂利新左衛門もやはり忍者とされていて,名刀正宗の由来を描いたこの作はセカンドベスト.
井上靖「真田影武者」は幸村が大坂の陣で生き残ったかも...という話だが,義経がジンギスカンになったというような壮大なロマンはない.
池波正太郎「角兵衛狂乱図」の角兵衛は,海音寺潮五郎「執念谷の物語」の羽根尾照幸とどこか似ている.

同じ出版社から同じ末國善己編で,「小説集 竹中半兵衛」「小説集 黒田官兵衛」が出ている.

☆☆★

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