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西遊記 : 妖怪たちのカーニヴァル

2019-08-26 08:57:10 | 読書

図書館で借用.シリーズ「世界を読み解く一冊の本」(全10巻)の第三弾.☆☆☆☆★

著者はこの本を「長めのエッセイ」と言っているが,西遊記の解説の入門書,エピソードの積み重ね本というのが妥当だろう.同じく「西遊記」をタイトルとする中野美代子の岩波新書 (サブタイトル「トリック・ワールド探訪」2000) に比べると,系統的でないぶん読みやすい.中野本は西遊記の数秘論的側面に焦点を当てているが,ここにそういう視点はない.

構成は
序・「西遊記」は子供に読ませるな / Ⅰ・『西遊記』はどんな本か / Ⅱ・妖怪たちのカーニヴァル / Ⅲ・ゆれる『西遊記』・ふくらむ『西遊記』

I ではまず西遊記のあらすじが示され,この部分は後の記述でも参照される.こども時代の本には作者が呉承恩となっていたが,違うらしい.

II では「食か色か」「人の肉を食らうこと」「世界は〈うんこ〉であふれている」などが小見出しになっている.PTA的なセンスでは,序に言うように子供に読ませてはいけない本ということになるだろう.ここでは「ガルガンチュア物語」「ドン・キホーテ」も引き合いに出される.

III は東遊記・北遊記・南遊記の紹介から始まる.社会主義や文化大革命の視点から,あるいはSF的な取り扱いなども話題にされる.中国のみならず英語圏での西遊記の普及についても書かれている.

著者は猪八戒がお好きらしく,八戒に関するページが多い.
悟空・八戒に比べると沙悟浄はまことに影が薄い.悟空は猿,八戒は黒豚だが,悟浄では河童ではないと言う.それじゃあ何なのさと思うが,この本ではわからない.日本では中島敦,最近では万城目学が作品に取り上げているが,ここには悟浄テーマ,日本テーマの視線からの記述がないのが残念.

挿画が多く楽しいといいたいが,小さすぎる.中尾悠による「西」という文字をデザインしたカバーが良い.
慶応大学出版会の本だが,著者は北大教授.「ゆれるおっぱい、ふくらむおっぱい」とかいう本を編集して2018年に出版しているが,出版社はなんと岩波書店.


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