Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

山靴の画文ヤ 辻まことのこと

2013-04-17 08:27:09 | 読書


駒村 吉重,山川出版社(2013/01)

「BOOK」データベースによれば*****
稀代の「自由人」は本当に“自由”だったか。父は放浪のダダイスト辻潤、母は革命家・大杉栄とともに虐殺された伊藤野枝。多くの画文と逸話を遺した「辻まこと」がかかえていた“魂の苦痛”とは。開高健ノンフィクション賞受賞作家が描く、父と子百年の物語。*****

辻まことのことを書いた本には
折原 脩三「辻まこと・父親辻潤―生のスポーツマンシップ 」(1987)
西木 正明「夢幻の山旅」(1994)
池内 紀「見知らぬオトカム」(1997)
宇佐見英治「辻まことの思い出」(2001)
琴海 倫「辻まことマジック」(2010)
等がある.

今度の本の著者は,若くて辻まことに面識がないらしい.それは「夢幻の山旅」の西本氏も同じだが,西本本が中間小説調だったのに比べ,ノンフィクション調.「八方美人」とか「千三つ」とか,けっこう辻まことに対して点が辛い部分もある.

第十章の扉には,竹久百登枝のデスマスクの,竹久不二彦 (竹久夢二の息子・百登枝の夫)によるデッサンと辻まことによるデッサンがならんでいる.この二枚について,竹久野生 (父は辻まこと,養父は竹久不二彦) が,「不二彦の絵にはこころの乱れがそのまま現れて,絵が泣いている.これに対し辻まことは,いい絵を描こうとして,絵の完成度にこころを配っている」と評しているのが印象的だ.
この例のように,辻まことについて,誰 (固有名詞つき) が何を言ったかが明らかにされているのがこの本の良いところ.

辻まこと自身は,当人達の死後書かれた辻潤論・伊藤野枝論について,「世間ただ今が,たまたま死人の名を借りて,世間ただ今の話しをしているだけ」と言っている (図書新聞 1970/04/25).この言はそのまま,辻まことの死後に現れた辻まこと論にあてはまるだろう.

山川出版社は高校のときの歴史の教科書の出版社だ.
本自体はとても丁寧にできているが,モノクロの挿画が黒っぽすぎるのが残念.

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