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武器としての世論調査

2019-07-10 09:10:49 | 読書
三春充希「武器としての世論調査 - 社会をとらえ,未来を変える」 ちくま新書 筑摩書房 (2019/6).

目次は*****
1 世論調査(世論調査の勘違い / 世論調査を総合して見えてくるもの / 政策への賛否を読む / 世論調査の限界)
2 データでとらえる日本の姿(地域が持つ特色 / 時代に生きる人々)
3 選挙と世論(政治参加の一つとしての選挙 / 選挙はどのように世論を反映するのか / 情勢報道の読み方)
*****

著者はもともと自然科学の研究者であったとのこと.データ処理の方法は理工系の読者にはよくわかるし説得力がある.

口絵以下,挿入された地図は全て地理情報分析支援システム MANDARA10 で作成されたという.フリーソフトだが,Mac 上では動かない.残念 !!

世論調査の結果はそれを行なった新聞社・放送局などでかなりバラツキがあるが,原因を知り,それなりの補正をすればバラツキはかなり小さくなると説く.
朝日新聞流の聞き方は「内閣を支持しますか/しませんか」の二者択一だが,日経では「言えない・わからない」と回答された場合は「お気持ちに近いのはどちらですか」と「重ね聞き」を行う.これを行うと支持率も不支持率も上がる.ちなみにJNNは4択である.

政策への賛否を問う場合は,誘導尋問的な聞き方をする調査もある.著者は,このような質問で意味のある結果が得られなかったしても,調査する側の自業自得である.誘導された結果が報じられることで読者・視聴者の心理に影響するとしても,それは世論調査自体の問題ではなく,報道の問題と割り切る.

本書の1/3は選挙に関連している.当落情勢表現の格付け (独走・安定・一歩抜け出す・互角・拮抗・激しく追う...独自の戦い...) が面白い.
選挙と世論調査との違いは,有権者は政策そのものを選べるわけではないこと,投票の際「支持政党なし」では通らないことである,という.

本書のタイトルには「武器としての」という枕詞がついている.武器が効果を発揮するのは選挙である.しかし投票日が迫った今,この武器でできることはかぎられていると思う.
武器であるから,どの陣営が使っても役に立つだろう.本書に従えば,一人区の野党統一候補は効果があるはずだけれど...
本書のような知識の上に複数の陣営が敷いたレールの上で,何も知らずに投票するわれわれ有権者はかわいそう...という気がしないでもない.

図書館本.☆☆☆☆★

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