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Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

新・音楽とキャリア 〜音楽を通した生き方・働き方

2021-01-28 09:47:20 | 読書
久保田 慶一 ,スタイルノート (2019/9).

H 大のような普通の大学のジャズ研のようなサークルからも,プロになった/なりたい という学生もちらほらいる.彼らの人生を考えるヒントがあるかなと,図書館で借りてみた.しかし序章第1節の冒頭「本書で『音楽』と言う場合は,クラシックの音楽を想定している.比較的幼い頃から音楽の学習を始め,高等学校や音楽大学に進学して,音楽活動を『職業』にしようと思っている人を,(読者として) 念頭に置いている」を読んで放り出したくなった.読了した後では,このように読者を限定する必要はないと思った.

著者が言うように「ハウツウ本」ではない.「おわりに」によれば,本書の内容には著者が代表となった科研費助成事業の研究成果が反映されているそうだ.
300ページの本に、目次が10ページ.この目次は出版社のHPにまるごと引用されている.ここだけながめれば読んだ気になれそう.
大学の講義調だが,現代に音楽関係者に必要とされる心構えを説いているようでもある.海外の学説が縦横に引用され,レジリエンス,ポートフォリオ・ワーク,ヒューリスティック,アウトリーチ,ウェル・ビーイング,プロティアン・キャリア.エンプロイアビリティといったカタカナが頻発する.横書きにして対応する英単語を併記していただきたいところ.


挿画・大野文彰が一貫していい感じ.以下は数少ない ! おもしろいと思ったページから.
第5章第3節「インタラクティブ演奏会を企画してみよう」では著者が実施した60歳以上を対象とするオペラ「カルメン」鑑賞会が紹介されている.まず著者が主要な4人の登場人物,カルメン,ホセ,エスカミリオ,ミカエラのキャラクターとともにオペラの前半部分を説明する.それから参加者がそれぞれこの4人のいずれかになったつもりで,自分ならどうするかをグループに分かれて話合う.最後にオペラの後半部分をDVDで鑑賞するのだが,参加者の終了後の興奮は並大抵のものではなかったという.
こうした具体例は他にはほとんどなかったのが残念.

要するに門外漢には縁のない,音楽教育本であった.音大の学生に読み切れるかどうか疑問であるが,卒論のネタ探しには良いかも.

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