岡崎武志 編,夏葉社 (2014/7).
図書館で,表紙のイラストに惹かれて借りた.装丁 和田誠.しかし読んだ後では,この絵のようなお屋敷は,この小説の一家が住むには立派すぎるように思った.
近頃まれなことに,函に入っていたらしい.
全9篇.
1) 最初の「山茶花」は「夕べの雲」所収.
2) 最後の「山上に憩いあり」は100ページ超.「都築が岡年中行事」というサブタイトルがあるが,評論家・河上徹太郎夫妻と庄野一家との交友録.
3) 挟まれた7篇は10-20ページの短編.
共通して,夫妻+1女2何ー男の庄野一家が登場するが,固有名詞は 1)2)3) でそれぞれ異なる.ただし2)の7篇では共通.
2) は小説か・実録が,判然としない.年中行事とは,猟銃と犬との河上家周辺の散歩と,クリスマスと正月(のちには春)のパーティである.河上家には辻留から料理人が出張したりする.帰りに使ったタクシー会社までいちいち書いてある.子供たちにとっては徹太郎は「てっちゃん」である.長女は途中で結婚し,最後には3人の母となる.
この長女は 3) では,嫁入り前なのに弟を腕相撲で負かしたり,凧揚げが得意で大きな凧をがんばって新居まで運んだりする.とても生き生きとしている.
家族しか出てこないから「私小説」かもしれにないが,日本の私小説に共通のうらぶれ・しょぼくれた感じは皆無.面倒な心理描写もなく,事実だけを書いた日記みたいだが,読んでいて引き込まれた.子供たちの「...したの」という口調がかわいい.
著者は安岡章太郎・吉行淳之介・遠藤周作たちと共に「第三の新人」と位置付けられているというが,2) に名前が登場するのは,井伏鱒二、三好達治、吉田健一など.河上の世代の文人たちである.
庄野英二の弟だということを Wikipedia で初めて知った.
図書館で,表紙のイラストに惹かれて借りた.装丁 和田誠.しかし読んだ後では,この絵のようなお屋敷は,この小説の一家が住むには立派すぎるように思った.
近頃まれなことに,函に入っていたらしい.
全9篇.
1) 最初の「山茶花」は「夕べの雲」所収.
2) 最後の「山上に憩いあり」は100ページ超.「都築が岡年中行事」というサブタイトルがあるが,評論家・河上徹太郎夫妻と庄野一家との交友録.
3) 挟まれた7篇は10-20ページの短編.
共通して,夫妻+1女2何ー男の庄野一家が登場するが,固有名詞は 1)2)3) でそれぞれ異なる.ただし2)の7篇では共通.
2) は小説か・実録が,判然としない.年中行事とは,猟銃と犬との河上家周辺の散歩と,クリスマスと正月(のちには春)のパーティである.河上家には辻留から料理人が出張したりする.帰りに使ったタクシー会社までいちいち書いてある.子供たちにとっては徹太郎は「てっちゃん」である.長女は途中で結婚し,最後には3人の母となる.
この長女は 3) では,嫁入り前なのに弟を腕相撲で負かしたり,凧揚げが得意で大きな凧をがんばって新居まで運んだりする.とても生き生きとしている.
家族しか出てこないから「私小説」かもしれにないが,日本の私小説に共通のうらぶれ・しょぼくれた感じは皆無.面倒な心理描写もなく,事実だけを書いた日記みたいだが,読んでいて引き込まれた.子供たちの「...したの」という口調がかわいい.
著者は安岡章太郎・吉行淳之介・遠藤周作たちと共に「第三の新人」と位置付けられているというが,2) に名前が登場するのは,井伏鱒二、三好達治、吉田健一など.河上の世代の文人たちである.
庄野英二の弟だということを Wikipedia で初めて知った.