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Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

若竹 七海 「静かな炎天」

2016-12-15 09:11:45 | 読書
文春文庫 (2016/8).

宝島社「このミステリーがすごい! 2017年版」ベスト1が竹本健治「涙香迷宮」だが,次点がこの本.ベスト 20 のうち文庫本は,したがって 1000 円以下はこれだけなので,迷わず購入した.
竹本の本は,いろは歌を数十も作った努力賞としては文句なしだが,ミステリとしてはそこそこ.この若竹の本は上質のエンタメではあるが,問題作とは言いかねる.職業作家の腕の冴えをみせる作品.

Amazon の内容(「BOOK」データベースより)*****
ひき逃げで息子に重傷を負わせた男の素行調査。疎遠になっている従妹の消息。依頼が順調に解決する真夏の日。晶はある疑問を抱く(「静かな炎天」)。イブのイベントの目玉である初版サイン本を入手するため、翻弄される晶の過酷な一日(「聖夜プラス1」)。タフで不運な女探偵・葉村晶の魅力満載の短編集。*****

探偵がネットを漁るだけでずいぶん情報が集まるんだな,と感心した.本当に集まるのかどうかは疑問だが,読者を納得させるのだから大したものだ.探偵はネットは見るが推理はせず,ドタバタしているうちに真相が転がり込んでくる.

デビュー作「ぼくのミステリな日常」以来のファン...というのは嘘で,デビュー作を覚えているという程度.この女探偵は解説 (大矢博子) によれば,第1作「プレゼント」では帯にあるように,「抜群にかっこよくて,最高に共感できて,飛び抜けてクールで,ずば抜けて笑えて」あったらしいが,この作品では,お人好しでどんどん仕事を背負い込んで,あそこが痛いここが痛いと言いながら,小金を貯めている中年というイメージ.でも確かに,共感できて笑える.

ヒロインが勤める書店のフェア...甘いミステリ・フェア,サマーホリデー・ミステリ・フェア,風邪ミステリ・フェア,学者ミステリ・フェア,クリスマス・ミッドナイトパーティー などにひっかけてミステリの蘊蓄が語られるのがマニアには受けそうだ.「富山店長のミステリ紹介ふたたび」と称する本文への注釈付き.

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