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Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

日本原発小説集

2014-11-25 08:26:23 | 読書
井上光晴/清水義範/豊田有恒/野坂昭如/平石貴樹 著,柿谷浩一 編
水声社 (2011/11).

図書館で借用.どれも 1980-90 年代の作品.原発小説といって言えるのは,井上・野坂の二編くらいのもの.2011 年秋の刊行だが,いま編集すればもっと充実したものができるだろう.

井上光晴「西海原子力発電所」が一番長い.原発村のミステリと言いたいが,この作家に良くあるパターンで,理屈っぽくて面白いのだが,期待して読んでいくと読者はわけがわからないところでほうり出される.
野坂昭如「乱離骨灰鬼胎草」は読ませるが,この著者の乱作多作時代の産物らしく,雑である.
平石貴樹「虹のカマクーラ」だけは前に読んだはずだが,ストーリーは全然覚えていなかった.登場人物のひとりが原発労働者だったというだけのことで,テーマは別にある.結末はショッキング.でも,もう僕たちは外人をじろじろ見ることはないし,現アメリカ大統領は黒人だ.1984 執筆時から世の中は進歩したのだろうか.
清水義範「放射能がいっぱい」は講談社文庫「単位物語」所収とある.単位の物語と思って読めばそれなりだが,原発との関係は薄い..
「隣りの風車」の豊田有恒は原発賛成派らしい.筒井康隆調のドタバタでけっこう楽しめたが,所詮エンタメ小説..

編集の柿谷浩一はまえがきで,川村湊の解説「原発文学序説」を「これも一つの視点であることを強調しておきたい」と断っている.解説は原発反対の立場が鮮明だが,豊田の小説は勝手に善意に解釈しているようだ.「虹のカマクーラ」の少女をフィリピン人と間違えているのはお粗末.川村氏はここの小説を全部ちゃんと読んだのだろうか.

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