Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

鏡の国の孫悟空

2014-01-04 08:46:19 | 読書
董 若雨, 荒井 健・大平 桂一 訳「 鏡の国の孫悟空―西遊補」平凡社 東洋文庫 (2002/03).

内容(「BOOK」データベースより)*****『アリス』より2世紀早く中国で書かれたアリス的小説。悟空が夢幻世界で秦の姉皇帝を探して、過去未来を冒険、美人や閻魔大王に変身。綺想めくるめくノンセンス・ファンタジー。*****

東洋文庫はアジア全域の各地域に関する古典作品を日本語によって提供する,平凡社の業書.平凡社は百科事典の出版社だった.「平凡パンチ」の平凡出版 - 現在のマガジンハウス - とは別会社と聞いたことがある.

この本はもちろん図書館で借用した.

西遊補原作の刊行は 1641 年.西遊記の続編ではなくて,パロディというのが近そう.西遊記そのものは空間的な移動があるのみだが,こちらでは時間的な移動もある.未来世界では1年が 12 月に始まって 1 月で終わったりする.

中野 美代子「西遊記―トリック・ワールド探訪 」岩波新書 (2000/4/20) には,西遊記のいろいろな論理的な仕掛けが羅列されているが,この本もそれを踏襲しているらしい.ただし西欧的・現代的な読み方をするとしばしばはぐらかされる.「あとがき」にストーリーが要約してあって,そこでなるほどとなる有様.
中国史に通じていれば何倍も面白いだろう.

やたらに詩が挿入され,文章にもちょっとずつ異なる類似の表現をならべ立てたりするところは,井上ひさし流.

西遊記を読んだのは小学生時代であって,はじめの方で単独で大暴れする悟空はすごく強いのに,三蔵法師の弟子となって旅をする途中では, 妖怪にやっつけられてその度に観音様に助けを仰ぐという情けない存在になってしまうなぁ...という感想を持った.
ここでは,悟空は三蔵一行と離れて単独行動するのだが,やはりかなり情けない.ただし西遊記本編と異なり,どんどん人間を叩き殺す.三蔵法師も最後の方で再登場し首をはねられてしまう.しかし,かわいそうとか,残酷とかいう感情はまったく生じない.
コメント
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